2016年6月5日日曜日

日経女性面に自由過ぎるコラムを書く水無田気流氏

4日の日本経済新聞朝刊女性面に詩人・社会学者の水無田気流氏が書いた「女・男 ギャップを斬る『女性活躍』掲げれど 音速の人生設計、まるでF1」というコラムは問題が多かった。女性面は日経の中でも「緩い」面ではある。それにしても自由に書かせすぎではないかと思えた。
警固公園と福岡三越(福岡市中央区) ※写真と本文は無関係です

34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべし」と政府が推奨しているという説明に誤りの可能性が高いことは既に触れた(※「日経女性面『34歳までに2人出産を政府が推奨』は事実?」を参照)。ここでは、それ以外の問題点を列挙していく。

◎男性にも「出産」してほしい?

【日経の記事】

「平成28年版男女共同参画社会白書」では、依然として変わらぬ女性の無償労働負担、低水準の女性管理職者割合、そして今なお第1子出産を機に6割の女性が離職するなどの現状が浮き彫りになった。生産年齢人口の急速な減少を受け、「女性活躍」が喧伝(けんでん)されているが、肝心の女性を活躍させ得る環境は未整備なまま。この状況を打開せず、女性「だけ」に就労も出産も高水準な育児も家事も介護も…という活躍を求めても達成は極めて難しい

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女性『だけ』に就労も出産も高水準な育児も家事も介護も…という活躍を求めても達成は極めて難しい」と水無田気流氏は訴える。ならば男性にも「就労も出産も高水準な育児も家事も介護も」と求めるべきだろうか。少なくとも「出産」は難しいだろう。

出産」を除けば男性も事情はあまり変わらない。男性には「高水準な就労も育児も家事も介護も」求められている。

水無田気流氏は日本では「女性活躍」が実現していないと判断しているようだ。これは主観的な問題でもあるので「違う」とは言わない。ただ、個人的には「日本の女性は十分に活躍している」と感じる。働いている女性はもちろん活躍しているが、出産を機に離職した女性も子育てなどできちんと「活躍」していると評価すべきだろう。水無田気流氏は「子育て中の専業主婦なんて活躍度ゼロ」と考えているのかもしれないが…。


◎本当に「F1レース」?

【日経の記事】

たとえば34歳までに子どもを2人以上産み育てつつ就労継続すべしという、政府推奨の理想的ライフコースを再現すると、次のようになる。

まず、22歳で大学を卒業するまでにファミリーフレンドリーな会社に内定をもらう。そこから3年間血眼で婚活し25歳までに伴侶候補をつかまえる。結婚相手との平均交際年数は4年、結婚準備に半年から1年かかることから逆算した年数である。そして交際3年以内にプロポーズにもちこみ、28歳で婚約、29歳で結婚。直後に妊活し30歳までに妊娠。排卵は1年間12回だが、最短で職場復帰するためにベストな出産時期は自治体が来年度の保育所募集を締め切る前の8~10月であり、排卵3回分しかチャンスがない。このように31歳までに第1子を出産、妊娠中から保活して託児先確保、32歳で職場復帰。さらに第1子は1年以内に卒乳し排卵を回復して33歳で第2子妊娠、34歳で第2子出産。これらをこなしつつ、妊娠予定の30歳までにマタハラにあわず大手を振って産休・育休を取得し得る程度のキャリアを確立せねばならない。

いったいこれは何のF1レースだろうか。いや、F1レーサーならばチームのサポートがあるが、女性は孤軍奮闘だ。弱小チームでも超人的能力で成果を出せるのは、トールマン時代のアイルトン・セナくらいではないか。

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女性には「F1レース」に参加しているような目まぐるしさがあると水無田気流氏は訴えたいのだろう。しかし、この例示でさえかなり余裕がある。「22歳で就職して3年間は伴侶候補をつかまえない」「交際開始から結婚までに4年」というのは、そんなに大忙しだろうか。学生時代に結婚相手を見つけている人も珍しくない。「いったいこれは何のF1レースだろうか」と言うのなら、「学生時代に結婚相手を見つけて、就職後すぐにゴールインした人でもこんなに時間的な余裕がない」といった形で例を作らないと説得力はない。

「(大学卒業後)3年間血眼で婚活」とか「直後に妊活し30歳までに妊娠」といった例示もかなり特殊だ。今の女性は就職直後から「血眼で婚活」するのが当たり前だろうか。29歳で結婚した場合、すぐに「妊活」を始めるものだろうか。いたとしても例外的な存在だろう。「女性は大変」と訴えたい気持ちが強すぎて、例示に説得力がなくなっている。

F1レーサーならばチームのサポートがあるが、女性は孤軍奮闘だ」との説明にも無理がある。働きながら出産・子育てをする女性を助けてくれる親や夫は珍しいのか。国や自治体は子育て支援には全く無関心なのか。社内保育所を整備したりして子育て中の女性社員を支援する企業は皆無なのか。少し考えれば分かるはずだ。

◎「走ってない奴は黙ってろ!」と言い出すと…

【日経の記事】

2013年には女性が35歳を過ぎると妊娠・出産しにくくなるとの啓発目的で検討された「女性手帳」が、当の女性たちからは「余計なお世話」と立ち消えとなった。往年の名レーサー、ナイジェル・マンセルではないが、女性たちの内心は「走ってない奴は黙ってろ!」だったに違いない。

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走ってない奴は黙ってろ」との強い言葉を用いて、「啓発目的」での情報提供も水無田気流氏は否定している。その考えに沿うと、困った事態になるのではないか。例えば厚生労働省は「妊娠中のジカウイルス感染と胎児の小頭症との関連が示唆されていることから、妊婦及び妊娠の可能性がある方は、可能な限り流行地域への渡航を控えてください」と呼びかけている。しかし、水無田気流氏の主張に従うと、こういうのも「余計なお世話」「走ってない奴は黙ってろ!」となるのだろう。

「情報を知らなかったために我が子が小頭症になる女性がいても仕方がない」と水無田気流氏は言い切れるのか。ジカウイルスに関する情報提供が正当化されるとすれば、妊娠・出産と年齢の関係について医学的な見地から得られた情報を提供するのも似たようなものだ。一方だけを「余計なお世話」に分類するのは難しい。


※暫定でD(問題あり)としていた水無田気流氏への評価はDで確定とする。水無田気流氏については「日経女性面なら許される? 水無田気流氏の成立しない説明」も参照してほしい。

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