2016年3月8日火曜日

日経 中山淳史編集委員は「賃加工」を理解してない?(2)

7日の日本経済新聞朝刊企業面に中山淳史編集委員が書いていた「経営の視点~シャープは生まれ変わるか 成熟産業を成長産業に」の問題点をさらに指摘していく。この記事ではセーレンの取り組みを紹介した後に、それをシャープの再建と関連付けて話を進めている。しかし、その「関連付け」に強引さが否めない。
太宰府天満宮(福岡県太宰府市) ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

(セーレンの)川田達男会長はアイデアがあっても認めない上司と取っ組み合いになり、「何年も不遇をかこった」ことがある。だが、適任者が見当たらない中、社長を頼まれてから29年。成熟産業を成長産業に変えて、無名のセーレンを繊維業界の21世紀の勝者に押し上げた。

電機で言えば、セーレンは経営再建中のシャープ買収を近く決める台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業だ。買収を通じ、今後は世界で新しい経営モデルを模索する考えだろう。ではシャープがセーレンになれなかったのはなぜか。

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セーレンは成熟産業に属する老舗企業であり、サラリーマン経営者の川田達男会長が会社を変革させて今日の地位を築いたと言える。一方の鴻海は成長産業に属するオーナー経営の会社だ。創業者が一代で大企業へと急成長させたイメージがある。共通点がないとは言えないが、「確かに鴻海って電機業界のセーレンだな」とは感じない。

以下の説明も苦しさを感じた。

【日経の記事】

奈良県天理市に同社の歩みをたどる「シャープミュージアム」がある。館内を歩いてわかるのはシャープの歴史ある時期から一変することだ。創業から2000年代前半まではシャープペンシル、鉱石ラジオ、電卓と「国産初」や「世界一」がいくつもある。

だが、05年ごろからは展示内容が液晶の「サイズ」「画素数」に変わる。経営モデルの進化は停滞し、世界の速さ、規模についていけない経営体質を引きずりながらも、背伸びをして台湾や中国、韓国と取っ組み合いを続けた。時代を読み、変化を志向する意識が権力争いを演じた経営陣に希薄だったためだろう。

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創業から2000年代前半まではシャープペンシル、鉱石ラジオ、電卓と『国産初』や『世界一』がいくつもある」のに、05年ごろから「一変する」と中山編集委員は書いている。そうなのかもしれない。しかし、「シャープペンシル、鉱石ラジオ、電卓」を例に挙げられても困る。これらは1970年代より前に出ていた商品だ。「05年ごろ」を転換点と考えるのならば、2000年前後に開発した商品をせめて1つは入れてほしい。

ところで、今回の記事には「シャープは生まれ変わるか」という見出しが付いている。こういう見出しを付けた以上、筆者はそれに何らかの答えを出す必要がある。中山編集委員はその期待に応えているだろうか。記事の最終段落では以下のように記事を結んでいる。

【日経の記事】

セーレンに移った旧カネボウの事業(名称は「KBセーレン」)は自動車部品とともに屋台骨だ。社員の幸福感も高いという。ホンハイの傘下でどんな企業に生まれ変わるか。これで幸せになれると感じられる経営者や組織に巡り合えるといい。シャープ社員の奮起に期待したい

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セーレンの話を含めあれこれ書いて最後は「シャープ社員の奮起に期待したい」では残念すぎる。例えば「社員が甘えていたからシャープはダメになった。社員の意識改革が必要だ」といった内容だったのならば、「シャープ社員の奮起に期待したい」で結ぶ選択もあり得る。しかし、記事にそういう話は出てこない(シャープ経営陣に関する話はあるが…)。

ホンハイの傘下でどんな企業に生まれ変わるか。これで幸せになれると感じられる経営者や組織に巡り合えるといい」というのは、鴻海やシャープに詳しくない「素人」でも語れるレベルの話だ。わざわざ編集委員という肩書を付けて経済紙にコラムを書くのならば、「鴻海傘下入りは正しい選択なのか」「シャープ社員にとって歓迎すべき話なのか」について、中山編集委員なりの見方を示すべきだろう。

結局、見出しで打ち出した「シャープは生まれ変わるか」との問いには答えていない。手掛かりすら感じられなかった。これではダメだ。シャープ社員の奮起に期待する前に、中山編集委員自身が奮起してほしい。


※記事の評価はD(問題あり)。中山淳史編集委員への評価もDを据え置く。

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