2023年6月5日月曜日

日経 滝田洋一特任編集委員に引退勧告 「核心~日本株、33年ぶりの檜舞台」

日本経済新聞社はいつまで滝田洋一特任編集委員に記事を書かせるつもりなのだろう。60代後半の滝田氏に特任編集委員の肩書を与える理由がよく分からない。記事のレベルが卓越しているなら文句はないが現実は逆だ。5日の朝刊オピニオン面に載った「核心~日本株、33年ぶりの檜舞台」という記事を読むと引退勧告したくなる。中身を見ながらあれこれツッコミを入れていこう。

宮島連絡船

【日経の記事】

日本の街を歩き回る訪日外国人(インバウンド)。羽振りよく買い物を楽しみ、今年1~3月の1人当たり旅行消費額は21.2万円にのぼった。新型コロナ禍前の2019年1~3月には14.7万円だったのと比べて44%も増えた。

株式市場では外国人投資家が4月以降、日本株を爆買いしている。株式買越額は5月第4週までの9週連続で合計7.4兆円に(財務省調べ)。日経平均株価は3万1000円台に乗せ、33年ぶりにバブル後の高値をつけた。

外国勢の日本株投資とインバウンド消費。両者に共通するのは、円安で日本がとても「お買い得」なことだ。ドルが元手の外国人投資家にとって、日本株の値札は「ドル建ての日経平均株価」である。

ドル建て日経平均が290ドルに迫る過去最高値をつけたのは、21年2月のことだ。円安が進んだ結果、足元ではドル建て日経平均は220ドル台にとどまっている

だから日本の投資家は高値警戒感を抱く3万1000円台という水準も、外国勢には「お値打ち価格」。ニューヨークのビジネスホテル並みの料金で、東京の一流ホテルに泊まれる感覚といえる。


◎なぜ日本株が「お買い得」?

日本株に関して円安で「お買い得」になると見る理由が謎だ。PERやPBRといった指標で割安感を見る場合、円建てでも「ドル建て」でも数値は変わらない。

ドル建て日経平均が290ドルに迫る過去最高値をつけたのは、21年2月」で、これと比較して現状が「220ドル台」だから「お買い得」と滝田氏は見ているのかもしれない。あまり意味のない比較だと思うが、これを受け入れるとしても、だったら円建ての日経平均に関しても「過去最高値」(1989年)と比べるべきだ。そうなると「お買い得」感に大差はない。

さらにツッコミを入れていく。


【日経の記事】

経済全体でみると、30年近く続いたデフレからの出口が近づく。今年1~3月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比年率1.6%増えたが、名目では同7.1%増に。名目GDPは年換算で570兆円と過去最高を更新した。

企業の売り上げも利益も、給与明細も、政府の税収も、そして株価も、経済活動でまず目に入るのは名目値である。デフレから脱却するにつれてそれらの数字は自然に伸びやすくなる。日本がその転換点を迎えたとみれば、日本買いの好機ともなる。


◎「30年近く続いたデフレ」?

30年近く続いたデフレからの出口が近づく」との認識なら経済関連の記事を書くのはやめた方がいい。まず「デフレ」は「30年近く続い」てはいない。過去30年の物価はほぼ横ばい。わずかな下落を含めても物価上昇率がマイナスだった年は半分ほどだ。

デフレからの出口が近づく」と書いているので「現状はまだデフレ」と滝田氏は信じているのだろう。ちなみに岸田文雄首相は、黒田東彦氏が日銀総裁を務めた10年間の評価について「デフレではない状況を作り出したのは大きな成果」だと述べたらしい。滝田氏から見ると「首相は分かっていない。まだまだデフレなのに…」となるのだろうか。

続きを見ていく。


【日経の記事】

思い出すのは、速水優総裁時代に日銀が唱えた「ダム論」である。ダム(企業)の水(収益)が、やがてあふれ出し設備投資や個人消費に向かう――というものだ。

だがモノよりカネが値打ちを持つデフレ下では、ダムの水はたまり続け、企業の内部留保(利益剰余金)は500兆円を超えた。そのデフレが終わるとなると、ためていたカネを動かす出番となる。


◎「内部留保=カネ」?

上記のくだりから判断すると「内部留保=カネ」と滝田氏は思い込んでいるのだろう。よくある誤解だが、内部留保は全て現預金として蓄えられている訳ではない。設備投資などに使って企業の手元には既に「カネ」がない場合もある。

滝田氏は文の作り方もうまくない。1つ例を挙げよう。


【日経の記事】

賃上げのおかげで停滞していた消費も持ち直している。それは企業活動にも追い風だ。ヒト、モノ、カネが回り始めれば、日本経済は長期停滞を脱却する窓が開く。


◎「賃上げのおかげで停滞」?

賃上げのおかげで停滞していた消費も持ち直している」と書くと「『賃上げのおかげで停滞していた消費』も持ち直している」とも取れる。「停滞していた消費も賃上げのおかげで持ち直している」と直せば問題は解消する。

ベテランの書き手でありながら、この辺りの配慮ができないところにも滝田氏の限界が見える。やはり引退勧告をしておくべきだろう。


※今回取り上げた記事「核心~日本株、33年ぶりの檜舞台

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230605&ng=DGKKZO71562470S3A600C2TCS000


※記事の評価はD(問題あり)。滝田洋一特任編集委員への評価もDを維持する。滝田特任編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

融資を「ヘリマネ」と誤解した日経 滝田洋一編集委員の「核心」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post.html

日経 滝田洋一編集委員 「核心」に見える問題点(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_4.html

日経 滝田洋一編集委員 「核心」に見える問題点(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_24.html

日経 滝田洋一編集委員 「核心」に見える問題点(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_5.html

引退考えるべき時期? 日経 滝田洋一編集委員 「核心」(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_32.html

引退考えるべき時期? 日経 滝田洋一編集委員 「核心」(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_40.html

市場をまともに見てない? 日経 滝田洋一編集委員「羅針盤」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_69.html

日経 滝田洋一編集委員「リーマンの教訓 今こそ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_16.html

市場への理解が乏しい日経 滝田洋一編集委員「羅針盤」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_9.html

株式も「空前の低利回り」? 日経 滝田洋一編集委員の怪しい解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_19.html

今回も市場への理解不足が見える日経 滝田洋一編集委員「核心」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_25.html

「TPP11とEUの大連携」を日経 滝田洋一編集委員は「秘策」と言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/tpp11eu.html

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