2023年2月1日水曜日

朝刊1面には苦しすぎる日経「日本交通、タクシー運転手に女性パート採用」

1日の日本経済新聞 朝刊1面に載った「日本交通、タクシー運転手に女性パート採用 人手不足で」という記事は、ビジネス面で大きく扱うのさえ難しいと思える中身だった。見出しからは「女性パートに限った採用に踏み切ったのがニュースなのだろう」と感じたが、実はそうでもない。最初の段落を見てみよう。

宮島

【日経の記事】

タクシー大手の日本交通グループは子育て中の女性などを対象にパート勤務の運転手を採用する。運転手は大半が正社員雇用だが高齢化と新型コロナウイルス禍による需要減で大幅に減っている。時給制で勤務時間を柔軟にして従来雇うのが難しかった層を受け入れる。深刻化する人手不足が雇用形態の多様化を促している。


◎「女性パート採用」と言うものの…

女性パート採用」と見出しでは打ち出しているが、記事には「子育て中の女性などを対象」としか書いていない。男性も「対象」に入っているのだろう。騙しの要素が強い見出しではあるが担当者を責めるのは酷だ。記事の内容が弱すぎて見出しを付けるのに困ったのではないか。しかも1面。騙し要素ゼロでは成立しにくい。

記事の続きを見ていこう。


【日経の記事】

日本交通グループのハロートーキョー(東京・江東)がパート運転手の募集を始めた。週3日、1日5時間からのシフト制で、午前6時から午後10時の間で希望の時間帯を選べる。時給は1500円からになる。

普通自動車免許を取得して3年が経過していることが採用の要件だ。会社負担でタクシー運転に必要な二種免許を取得できる。まず15人の採用を目指しており3月の乗務開始を見込む。


◎何が新しい?

ニュース記事では「何が新しい」のかを読者に知らせる必要がある。しかし、この記事ではそこが明確になっていない。見出しから判断すると「女性パート採用」だろう。だが「タクシー運転手に女性パート採用」は初めてといった説明は見当たらない。「日本交通グループ」として初めてなのかも不明。ついでに言うと「ハロートーキョー」以外の「日本交通グループ」の会社がどう対応するのかも記事では触れていない。

記事を読み進めるとタクシー運転手の「パート採用」自体は珍しくないと分かる。最後まで見ていこう。


【日経の記事】

日本交通グループは全国で約7000台のタクシーを運行している。今回のパート勤務は配車アプリからの予約客に特化し車を走らせながら乗客を探す「流し営業」はしない。

日本のタクシー運転手は大半が正社員雇用だ。パートは2割程度で定年後に再雇用された65歳以上がこのうち8割以上を占める。運転手全体の平均年齢は60歳、女性の割合は4%にとどまる。

コロナによる需要減で人材も流出した。東京ハイヤー・タクシー協会などによると、2021年度末の都内の法人タクシーの運転手数は5万5391人と19年度末と比べて9000人以上減少し、記録が残る1970年度以降で最少となった。

営業収入はコロナ禍前の水準に戻り、今後は訪日客の需要回復も見込める。タクシー大手の幹部は「需要はあるのに人手が足りない。車両の稼働率はコロナ前より10%超下がっている」と語る。


◎悪い意味で度胸が凄い

日本のタクシー運転手」全体で見ると「パートは2割程度」いるらしい。「タクシー運転手」に占める「女性の割合は4%」とすると「タクシー運転手」の1%程度は「女性パート」だと推定できる。ならば「日本交通グループ」がその採用を始めたからと言ってニュース性は乏しい。1面に持っていくなら、まとめ物にしたいところだが、今回は1社モノ。これで1面に出そうとするのは悪い意味で度胸がある。

ついでに記事の書き方で注文を1つ。「配車アプリからの予約客に特化し車を走らせながら乗客を探す『流し営業』」と書くと「流し営業」=「配車アプリからの予約客に特化した上で車を走らせながら乗客を探す営業」と取れる。ここは読点を打つだけでいい。「配車アプリからの予約客に特化し、車を走らせながら乗客を探す『流し営業』は~」とすれば誤解されにくくなる。


※今回取り上げた記事「日本交通、タクシー運転手に女性パート採用 人手不足で」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230201&ng=DGKKZO68075100R00C23A2MM8000


※記事の評価はE(大いに問題あり)

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