何を訴えたいのかよく分からない記事が6日の日本経済新聞朝刊 国際・アジアBiz面に載っていた。 「東南ア『観光公害』回避広がる~インドネシア、島の入園料上げ中止」という見出しからして分かりにくい。「入園料大幅引き上げ」なら見出しの組み合わせとして違和感はない。だが「入園料上げ中止」だ。
宮島連絡船 |
記事の中身を見ていこう。
【日経の記事】
東南アジア諸国で観光客を制限することで「オーバーツーリズム(観光公害)」を回避する動きが広がる。新型コロナウイルス禍から観光需要が回復しつつあるなか、環境に配慮した持続可能な観光産業の育成を目指す。だが、収入減を不安視する地元住民の反対も根強く、各国政府は難しいかじ取りを迫られている。
インドネシア政府は、世界最大のトカゲ「コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)」の生息地として人気のあるコモド島への入園料の大幅値上げを予定していた。だが、値上げを翌月に控えた2022年12月、値上げの中止を発表した。
平日の入園料は外国人の場合は15万ルピア(約1300円)だが、同政府の計画ではこれを375万ルピアに引き上げるはずだった。
観光客数を減らして自然環境を保全する狙いだったが、収入減を懸念する観光業界や地元自治体の関係者からは反対の声が上がっていた。
◎話が違うような…
冒頭で「東南アジア諸国で観光客を制限することで『オーバーツーリズム(観光公害)』を回避する動きが広がる」と打ち出しているが、事例として最初に出てくるのは「コモド島への入園料の大幅値上げ」が中止になった話。これをメインに据えるなら「『オーバーツーリズム』を回避する動きに歯止めがかかってきた」とでも書くべきだ。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
オーバーツーリズム対策には値上げのほか、訪問者数の制限、自然環境の回復のための一時的な閉鎖などがある。
タイ政府は22年、南部のビーチリゾート、ピピ島のマヤ湾を約40カ月ぶりに観光客に開放した。マヤ湾はレオナルド・ディカプリオさん主演の映画「ザ・ビーチ」のロケ地となったことで、観光客が急増して生態系が損なわれてしまった。そのため同国政府が18年、環境保全を理由にマヤ湾の閉鎖に踏み切った経緯がある。
訪問者数は現在、1日4000人と18年時点の繁忙日(5000人)を下回る水準に制限され、遊泳も禁止された。天然資源・環境省の担当者は、閉鎖期間中にサンゴの状態が回復しサメの群れも戻ってきたと話す。
◎これも苦しい…
これも「『観光公害』回避広がる」の事例としては苦しい。「政府が18年、環境保全を理由にマヤ湾の閉鎖に踏み切った」のを受けて「『観光公害』回避広がる」と書くのなら分かるが「22年、南部のビーチリゾート、ピピ島のマヤ湾を約40カ月ぶりに観光客に開放」している。つまり規制緩和だ。「『観光公害』回避」の観点から見れば後退とも言える。
3番目の事例はさらに辛い。
【日経の記事】
持続可能な観光産業の育成は、短期的な収益機会よりも長期的な視点を重視できるかがカギになる。
解決策のひとつとなりそうなのが、アジア開発銀行(ADB)が支援してベトナム中部のフォンニャケバン国立公園の近くで立ち上げたファームステイのプロジェクトだ。地元住民が事業の9割を担い、収益を得る。宿泊施設では生ごみなどを発酵・分解させて堆肥化する「コンポスト」を行い、徹底したリサイクルを実践している。
◎関係ある?
「宿泊施設では生ごみなどを発酵・分解させて堆肥化する『コンポスト』を行い、徹底したリサイクルを実践している」と言うが、これが「観光公害」とどう関連するのか分かりにくい。常識的に考えれば「宿泊施設」から出る「生ごみ」が「観光公害」の元になっている訳ではないだろう。
「宿泊施設」で出る「生ごみ」をいくら「リサイクル」したところで「フォンニャケバン国立公園」を訪れる観光客が公園内などにゴミを落としていく問題は解決しないはず。事例が足りないので、あまり関係ない話を強引にねじ込んだのだろうか。
最後まで読んでも「東南アジア諸国で観光客を制限することで『オーバーツーリズム(観光公害)』を回避する動きが広がる」とは感じられなかった。むしろ、そうした「動き」にブレーキがかかっているのでは?
※今回取り上げた記事「東南ア『観光公害』回避広がる~インドネシア、島の入園料上げ中止」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230106&ng=DGKKZO67358230V00C23A1FFJ000
※記事の評価はD(問題あり)。ジャカルタ支局の柴田奈々記者とバンコク支局の井上航介記者への評価もDとする。
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