アクティブ型投信を前向きに紹介する記事は評価できない。19日の日本経済新聞マネーのまなび面に阿部真也記者が書いた「投信、長期の運用力で選ぶ~効率・規模・投資先から候補」という記事も例外ではない。中身を見ながら問題点を指摘していきたい。
錦帯橋 |
【日経の記事】
初心者が投信で長期運用を考える際に、最初の選択肢となるのが株価指数などに連動するよう運用するインデックス型と呼ばれる商品だ。日経平均株価や米S&P500種株価指数に連動する投信はニュースなどで情報を得やすく、運用中にかかる信託報酬といったコストが低いのが魅力だ。国内外の株式や債券などに分散して投資すれば、着実な運用成果につながるとされる。
一方で、指数を上回る運用成績を目指す投信もある。アクティブ(積極運用)型と呼ばれ、プロのファンドマネジャーが投資先を選ぶ。長期の運用ではより大きな投資リターンを狙って資産の一部を振り向ける位置付けといえる。ただ、アクティブ型は投資先を調べる手間がかかる分、インデックス型に比べコストが大きく、運用成績で不利になりやすい面がある。「良い投信」を選べるかどうかが重要になる。
ではどのように投信を選んだらよいのだろう。楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストは「複数の条件から消去法的にスクリーニングすると選びやすくなる」と助言する。専門家が重視する代表的な条件を見ていこう。
◎なぜアクティブ型に誘導?
「インデックス型に比べコストが大きく、運用成績で不利になりやすい面がある」と言いながら「なぜアクティブ型も選択肢にするのか」を論じないまま「ではどのように投信を選んだらよいのだろう」とアクティブ型も投資対象として検討する前提で話が進んでしまう。
これが解せない。「初心者が投信で長期運用を考える際」に「アクティブ型」は検討する必要がない。阿部記者は違う考えのようだが、そこに根拠はあるのか。今回の記事では「国内株式、シャープレシオ10年1.0以上、純資産10億円以上など」の「条件を設定して抽出した日本株投信の例」を出している。例に挙げた5つの投信の信託報酬(税込み)は0.92~2.00%。インデックス型なら0.1%未満も珍しくないのに0.92~2.00%もの費用を負担してアクティブ型に資金を投じる合理性はあるのか。
阿部記者は今回の記事でそこを正面からは論じていない。おそらく「シャープレシオなど過去の実績を見て優れたものであれば高コストが正当化できる場合もある」と言いたいのだろう。「投信選びや購入後の注意点」として「信託報酬などのコストにこだわりすぎない」と入れている辺りから阿部記者の考えが伝わってくる。
「過去のパフォーマンスが良かった投信に投資しても将来のリターンを高める効果はない」というのが投資の定説だ。それを阿部記者が否定するなら、その根拠は欲しい。定説を肯定するのならば「アクティブ型はコストが高い分インデックス型に劣る」と考えるほかない。なのでアクティブ型は最初から選択肢に入れなくていい。
高コストのアクティブ型を選ぶことを正当化できるとしたら「この投信の高いパフォーマンスはまぐれではなく実力だ。ファンドマネジャーに特別な力がある」と確信できる時だけだ。「そんなアクティブ型投信がある訳ない」とは言わない。しかし、あるとしても極めて少数だろうし、そこを「初心者」が正しく見抜ける可能性はほぼゼロ。だったら「投資初心者はとにかくコストを重視せよ。高コストのアクティブ型は検討しなくていい」と説くべきだ。
「過去の成績を過信しない」などとも入れているので「アクティブ型の高コストを正当化するのは難しい」と阿部記者は理解しているのかもしれない。なのになぜ今回のような記事になってしまうのか。
金融業界の回し者だから?
※今回取り上げた記事「投信、長期の運用力で選ぶ~効率・規模・投資先から候補」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221119&ng=DGKKZO66096420Y2A111C2PPK000
※記事の評価はD(問題あり)。阿部真也記者への評価も暫定でDとする。
身銭を切っていないからと言うのが答えでしょう。日経新聞の読者は日経新聞を読んでいる投資家が多いから読んでいるのであって、その中身を真に信用している人は少ないであろう。身銭を切らない人が、身銭を切っている人に「アドバイス」する記事を書く心の強さに感服。
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