日本経済新聞の中村直文編集委員が問題の多い書き手であることは何度も指摘してきた。24日の朝刊ビジネス面に載った「経営の視点:物価高に迷うコンビニ~量販化、成長か淘汰か」という記事でも、その評価は変わらない。「物価高に迷うコンビニ」と見出しを付けているが、最後まで読んでもコンビニが「迷う」話は出てこない。それ以外にも色々と問題を感じた。中身を見ながら中村編集委員に助言していきたい。
岩国城 |
【日経の記事】
ローソンでは日清食品のカップヌードルが6月に198円から231円に値上がりした。かつてコンビニエンスストアは便利さが持ち味で、価格設定の優先順位は低かった。しかし今は違う。
価格のインパクトが増し、値ごろ感のある商品をそろえる「量販化」を加速しないと、顧客にそっぽを向かれてしまう。値上げをしながらも、柔軟な価格対策も急務。新型コロナに加え、物価高はコンビニに次の経営の方向性を示すように迫ったのだ。
ファミリーマートは昨年秋から物価高の局面を見据え、細見研介社長が号令をかけ、よりきめ細かな店頭価格を設定する取り組みを始めた。
◎店頭価格は本部が決める?
ここまでを読むと「コンビニにおける店頭価格の決定権は本部にある」との前提を感じる。コンビニの主流であるFC店では、少なくとも形式的には価格決定権は加盟店にあるのではないか。
「実質的には本部が決めている」と見るなら、それはそれでいい。ただ、その辺りの説明は欲しい。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
今年3月に価格戦略・販売計画グループを発足。これまではカテゴリー別に価格を決めていたが、「価格でファミマのメッセージを感じ取ってもらいたく、全体のバランスを再考した」(担当者)。
例えばおにぎり。価格帯を上から「松・竹・梅」とした場合、200円を超える「スパムむすび」「豚ロースの生姜焼きおむすび マヨネーズ入り」などの松、150円台以下の梅は充実していた。しかしその中間に当たる竹は乏しい。そこで170~180円前後のおにぎりを増やし、バランスをとった。
いわゆる価格の松竹梅の法則の活用でもある。2つの価格コースでは低い価格を選ぶ傾向が強いが、3つに設定すると竹を選びやすくなる。一番上はぜいたくに感じ、一番下では貧しく感じてしまうからだ。物価高で消費者の価格選好はより複雑になる。そこでファミマは選択肢を広げ、買いやすさを促そうというわけだ。
◎で、結果は?
「170~180円前後のおにぎりを増やし、バランスをとった」時期が記事からは明確に判断できないが仮に「今年3月」ごろだとしよう。であれば結果が出ているはずだ。
なのに中村編集委員はそこには触れない。狙い通りならば「200円を超える『スパムむすび』『豚ロースの生姜焼きおむすび マヨネーズ入り』などの松」と「150円台以下の梅」は販売が落ち込むものの「170~180円前後のおにぎり」が中心となって全体での増収を確保しているはずだ。
「ファミマ」がそこは明らかにしないのならば、この取り組みを前向きに取り上げる意味はない。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
余談だが、数年前の出張時に有名神社に立ち寄ったときのこと。肉親の病気回復のために厄払いを申し込もうとすると、祈祷(きとう)料は5000円、8000円、1万円の3種類だった。さすがに最低価格は除外し、8000円か1万円。肉親への祈りなので2000円をケチるのもどうかと思い、1万円を選択。もしこれが7000円と1万円ならば、7000円を選択した可能性もある。価格心理は実に微妙だ。
◎要らない「余談」
この「余談」は要らない。まず3つの選択肢の中で最高価格の「1万円を選択」しているので「松竹梅の法則」の実例になっていない。
また「2000円をケチるのもどうかと思い、1万円を選択」したのに「7000円と1万円ならば、7000円を選択した可能性もある」となるのが解せない。「2000円」と3000円は中村編集委員にとってそんなに大きな差なのか。
記事に説得力を持たせる効果を狙ったのだろうが逆効果だと思える。
さらに続きを見ていく。
【日経の記事】
本題に戻るが、最大手のセブン―イレブン・ジャパンも松竹梅価格戦略の見直しに動いた。グループのスーパー、イトーヨーカ堂が扱う低価格プライベートブランド(PB)の「ザ・プライス」をリニューアルし、60店で実験的に導入した。物価高でのニーズを見極めようと、あえて価格帯を広げたのだ。
これまでプレミアムを軸に付加価値路線がセブンの持ち味だった。しかしコロナでコンビニの売り上げは低下。大容量品の拡充など日常的な買い物への対応強化を進めてきた。さらに物価高に賃金上昇が追いついていかず、セブンといえども節約志向シフトは欠かせない。
◎どう見直した?
「セブン―イレブン・ジャパンも松竹梅価格戦略の見直しに動いた」と言うが、どう「見直し」たのかよく分からない。
「ザ・プライス」を「60店で実験的に導入した」ことと「松竹梅価格戦略」の関連を中村編集委員は説明していない。「松竹梅」の下に位置する価格帯の商品を置いたのか何なのか、そこは触れるべきだ。
「行数の関係でできない」と言うなら「セブン」の話は省いていい。
結論部分にも問題を感じた。
【日経の記事】
コンビニの量販化はスーパーやドラッグストアなどとの業態間競争の激化も意味する。次の成長への一歩か、淘汰の始まりか。人口減、物価高などの逆風下、それぞれが顧客を持続的に誘導する次の「動線」が求められている。
◎「コンビニの量販化」を論じてた?
「コンビニの量販化はスーパーやドラッグストアなどとの業態間競争の激化も意味する」と中村編集委員は言うが、今回の記事で「コンビニの量販化」を論じているのか。
「セブン」の話は分かるが「170~180円前後のおにぎりを増やし、バランスをとった」という「ファミマ」の話は「量販化」とは言い難い。
「量販化」を論じたいのならば、コンビニが低価格志向を強めている状況を描き、それが業績にどういう影響を与えているのかを分析すればいい。
しかし今回の記事では分析する意欲すら見えない。これが中村編集委員の実力なのだろう。
※今回取り上げた記事「経営の視点:物価高に迷うコンビニ~量販化、成長か淘汰か」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20221024&ng=DGKKZO65380740T21C22A0TB0000
※記事の評価はD(問題あり)。中村直文編集委員への評価はDを維持する。中村編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「『嫌い』が変える消費」の解説が強引な日経 中村直文編集委員https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/05/blog-post_30.html
マックが「体験価値」を上げた話はどこに? 日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/04/blog-post_15.html
無理を重ねすぎ? 日経 中村直文編集委員「経営の視点」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/11/blog-post_93.html
「七顧の礼」と言える? 日経 中村直文編集委員に感じる不安
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html
スタートトゥデイの分析が雑な日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_26.html
「吉野家カフェ」の分析が甘い日経 中村直文編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/07/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」が苦しすぎる
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_3.html
「真央ちゃん企業」の括りが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_33.html
キリンの「破壊」が見えない日経 中村直文編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_31.html
分析力の低さ感じる日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_18.html
「逃げ」が残念な日経 中村直文編集委員「コンビニ、脱24時間の幸運」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/24.html
「ヒットのクスリ」単純ミスへの対応を日経 中村直文編集委員に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_27.html
日経 中村直文編集委員は「絶対破れない靴下」があると信じた?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_18.html
「絶対破れない靴下」と誤解した日経 中村直文編集委員を使うなら…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/05/blog-post_21.html
「KPI」は説明不要?日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」の問題点
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/kpi.html
日経 中村直文編集委員「50代のアイコン」の説明が違うような…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/06/50.html
「セブンの鈴木名誉顧問」への肩入れが残念な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/07/blog-post_15.html
「江別の蔦屋書店」ヨイショが強引な日経 中村直文編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html
渋野選手は全英女子まで「無名」? 日経 中村直文編集委員に異議あり
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_23.html
早くも「東京大氾濫」を持ち出す日経「春秋」の東京目線
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_29.html
日経 中村直文編集委員「業界なんていらない」ならば新聞業界は?
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_5.html
「高島屋は地方店を閉める」と誤解した日経 中村直文編集委員
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野球の例えが上手くない日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ」
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「コンビニ 飽和にあらず」に説得力欠く日経 中村直文編集委員
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平成は「三十数年」続いた? 日経 中村直文編集委員「Deep Insight」
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拙さ目立つ日経 中村直文編集委員「ヒットのクスリ~アネロ、原宿進出のなぜ」
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正確には、取材したけど何を書いていいのか迷う自分。そして、文章のスタイルは、松竹梅しかない。困ったものだ。編集委員だからこれで長年平均以上の収入があるのだから・・・まあいいか。
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