2021年6月5日土曜日

東洋経済で「女性リーダー『3割』は必須」と訴えた浜田敬子氏に異議あり

週刊東洋経済6月12日号にジャーナリストの浜田敬子氏が書いた「女性登用 突破口はトップの決断が開く~女性リーダー『3割』は必須」という記事は問題が多かった。まずは「『3割』は必須」の根拠が苦しい。当該部分を見ていこう。

大阪城

【東洋経済の記事】

集団の中で、存在を無視できないグループとなるには一定の数が必要であり、その分岐点を超えたグループは、クリティカルマスと呼ばれる。米ハーバード大学のロザベス・モス・カンター教授の研究では、特定のグループの比率が「15%以下」だと、その人たちは“お飾り、象徴”になり、目立つが孤立する苦しみを味わうとされている。「25%」でもまだ“マイノリティー”、「35%」を超えて初めて組織の中で公平な機会が得られるようになるという

つまり役員会など意思決定の場で、過度な心理的プレッシャーを感じずに女性が自分の意見を表明するには、少なくとも3割を占める必要がある。女性登用で組織を活性化させたいなら、女性たちが“わきまえて”発言しないのでは意味がない。さまざまな組織でまずは3割とするのにはこうした根拠がある。欧州のグローバル企業では3割すら甘くて、極力、50%に近づけるように目標を設定している企業もある。


◎全てのグループを3割以上にすると…

まず、「役員会」などで男女別に「グループ」を形成すべきなのかが疑問だ。仮に女性だけで「グループ」を作るとして、その「グループ」を尊重すべきなのか。女性だけで「グループ」を作らないように導くのが第一ではないのか。

ある会社の「役員会」では東日本出身者が8割、西日本出身者が2割だとしよう。だからと言って西日本出身者の比率を「少なくとも3割を占める」まで高める必要があるだろうか。「バカバカしい。東日本出身とか西日本出身とか意識したことないよ」と普通はなりそうな気がする。

性別に関しても同じように考えられないのか。別に男性と女性で経営に関する考えがきれいに分かれる訳でもない。なのに性別で「グループ」を形成してしまうのか。そういう意識をなくす方法をまず考えるべきだ。

百歩譲って、必ず「グループ」を形成してしまうものだとしよう。しかし「グループ」は他にもあるはずだ。例えばA社の「役員会」の構成メンバー20人に以下の「グループ」があるとしよう。

(1)性別グループ

男性18人、女性2人

(2)大学別グループ

東大10人、京大3人、一橋3人、慶応2人、早稲田2人

(3)部門別グループ

製造部門10人、開発部門5人、販売部門3人、管理部門2人


過度な心理的プレッシャーを感じずに女性が自分の意見を表明するには、少なくとも3割を占める必要がある」と浜田氏は言うが、上記の「役員会」では東大以外の大学出身者も「3割」未満の「グループ」に属するので「過度な心理的プレッシャー」を感じるはずだ。開発部門、販売部門、管理部門にもそれが言える。

東大出身で管理部門の女性役員、あるいは早稲田出身で販売部門の男性役員などがいた場合、多数派に属してもいるので「過度な心理的プレッシャー」がかかるのかよく分からない面はある。ここでは暫定的に、東大出身で製造部門の男性役員だけが「過度な心理的プレッシャー」から解放されるとしよう。

それではまずいとの判断で「役員会」の構成を改善するにはどうしたらいいだろうか。全ての「グループ」が「少なくとも3割を占める必要がある」ので、大学別グループと部門別グループでは「グループ」の数を3つ以下に絞らなければならない。

そうすると「役員会」のメンバーになれるのは3大学の出身者のみとなる。「組織における多様性の重要性は、さすがに多くの企業で認識されつつある」と浜田氏は記事で書いていたが、「役員会」のメンバーを「過度な心理的プレッシャー」から解放しようとすると、結果として「多様性」は失われてしまう。

なのに「役員会」の「グループ」には「少なくとも3割」を割り当てるべきなのか。あるいは性別グループだけを特別扱いする理由があるのか。

この記事には他にも問題を感じた。長くなったので別の投稿で言及したい。


※今回取り上げた記事「女性登用 突破口はトップの決断が開く~女性リーダー『3割』は必須

https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27128


※記事の評価はD(問題あり)

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