2021年6月16日水曜日

平成初期の時価総額上位は「金融や電力、鉄鋼が独占」? 日経コラム「大機小機」

平成初期」の「時価総額」ランキングでは「金融や電力、鉄鋼が上位を独占していた」だろうか。日本経済新聞のコラム「大機小機」ではそう言い切っている。違うと思えるので以下の内容で問い合わせを送った。

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【日経への問い合わせ】

6月16日の日本経済新聞朝刊マーケット総合面に載った「大機小機~K字が示す経営のヒント」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「個々の株価でもK字現象が鮮明だ。時価総額上位にはトヨタ自動車やソフトバンクグループ、ソニーグループなどが並ぶ。金融や電力、鉄鋼が上位を独占していた平成初期とは様変わりだ」との記述です。

この説明が正しければ「平成初期」の「時価総額上位」を「金融や電力、鉄鋼」が「独占」していたはずです。しかし楽天証券のサイトに出てくる「平成元(1989)年・東証1部時価総額ランキング」を見ると、トップはNTTで2位の2倍を上回る「時価総額」となっています。「平成初期」をどこで見るかでランキングに多少の違いは出るでしょうが、NTTを「時価総額上位」に入らないと見なすのは無理があります。そしてNTTは「金融や電力、鉄鋼」には属しません。

金融や電力、鉄鋼が(時価総額)上位を独占していた平成初期」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので記事の中で引っかかった点を追加で指摘しておきます。以下のくだりについてです。

この2月に約30年ぶりに日経平均株価は3万円の大台をつけたものの、その後は欧米諸国に比べ伸び悩む。背景にはワクチン接種の遅れが指摘されているが、それだけではない。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている企業が圧倒的に多いことが理由の一つといっていい。PBRが1倍を下回る理由は、株主から預かった資本を有効に活用できていないこと、投資家が将来の企業価値の向上に確信を持てないことの2つだろう。生産性が低く将来に期待が持てない、と市場が警告しているわけだ

PBRが1倍を下回っている企業が圧倒的に多い」のは今に始まったことではありません。「この2月に約30年ぶりに日経平均株価」が「3万円の大台をつけ」るまで「欧米諸国に比べ伸び悩む」展開になっていなかったと取れる書き方を筆者の自律氏はしています。「PBRが1倍を下回る」企業が多いという状況は変わらないのに、なぜ「3万円の大台をつけた」後には相場の足を引っ張る要因になるのでしょうか。

そもそも「PBRが1倍を下回っている企業が圧倒的に多い」ことが「欧米諸国に比べ(株価が)伸び悩む」理由になるでしょうか。「投資家が将来の企業価値の向上に確信を持てない」ために、ある銘柄の「PBRが1倍を下回っている」としましょう。この時点で「企業価値の向上に確信を持てない」という要因は株価に織り込まれています。その後に「伸び悩む」かどうかは、その後の状況変化にかかっています。「PBRが1倍を下回っている」から株価が上昇しにくいとは言えません。

PBRが1倍を下回っている」のであれば割高感は乏しいでしょうから、上昇余地の大きい銘柄との評価もできます。「PBRが1倍を下回っている企業が圧倒的に多い」から相場上昇に勢いが出やすいとの解説はあり得ますが「伸び悩む」要因と見るのは苦しいでしょう。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。


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※今回取り上げた記事「大機小機~K字が示す経営のヒント

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210616&ng=DGKKZO72923430V10C21A6EN8000


※記事の評価はE(大いに問題あり)

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