2021年6月15日火曜日

「交流戦『パ優位』異変」自説を述べない日経 常広文太記者はラミレス氏を見習え

15日の日本経済新聞朝刊スポーツ面に常広文太記者が書いた「交流戦『パ優位』異変 セ健闘、4球団勝ち越し~阪神、野手で世代交代進む ソフトバンク、看板打線が沈黙」という記事には心底がっかりした。「交流戦『パ優位』異変」には自分も関心を持っていて、「パ優位」が消えてきたのか、それとも今年はたまたま「セ健闘」となったのか分析記事を待っていた。今回の記事がその疑問に答えを出してくれるかと期待したが、まともな分析はしていない。

夕暮れ時の美津留

記事の中身を見ていこう。

【日経の記事】

2年ぶりに開催されたプロ野球の日本生命セ・パ交流戦は、これまでとは勢力図が変わる様相となった。13日時点で対戦成績はセ・リーグの48勝46敗11分け。リーグ下位だったオリックスが優勝を決めた一方、交流戦得意のソフトバンクが大苦戦するなど明暗が分かれた結果は、ペナントレースの行方にも影響しそうだ

勝ち越しを決めた上位6球団のうち4球団を、阪神、DeNA、中日、ヤクルトのセ勢が占めた。チーム防御率は阪神が3.52で全体2位、中日が3.55で3位。パ・リーグにパワーで押され気味だった打撃でも、DeNAがトップのチーム打率2割9分7厘、24本塁打をマークするなど、例年になくセの勢いが目立った。


◎で、その要因は?

交流戦」の「結果」が「ペナントレースの行方にも影響」するのは必然だ。「交流戦」も含めて勝率を計算するのだから「影響」をゼロにすることは原理的にできない。「影響しそうだ」ではなく必ず「影響」する。わざわざ触れるような話ではない。

例年になくセの勢いが目立った」のはプロ野球に関心がある人なら分かっている話だ。問題は実力面での「パ優位」が消えたと言えるかどうかだ。

記事の続きを最後まで見ていこう。

【日経の記事】

18、19年と交流戦で大きく負け越していた阪神は11勝7敗と貯金を上乗せし、首位固めに成功した。ドラフト1位ルーキーの佐藤輝は打率2割9分6厘、楽天・田中将からの一発を含む6本塁打と気を吐き、遊撃手を任される同6位ルーキーの中野も打率3割4厘としぶとい打撃を見せた。

安定感のある先発投手陣だけでなく、若い野手が初対戦となるパの投手相手に奮闘。高い適応力を示し、世代交代を印象づけた。パ首位の楽天に3連勝するなど交流戦を6連勝で締めくくり、貯金は20に到達。18日から再開されるリーグ戦に向け、主力の近本が「しっかり休んで、またいいスタートを切れるように」と話すように、上昇気流に乗っている。

日本シリーズ4連覇中で交流戦でも8度の勝率1位を誇るソフトバンクは、まさかの大苦戦を強いられた。本拠地でヤクルトに3連敗を喫するなど、5勝9敗4分け。開幕戦で中日に完封負けしてから波に乗れず、勝率3割5分7厘は05年からの交流戦でチーム史上最低となった。

救援の柱である森、モイネロを欠きながらチーム防御率は12球団随一の3.04を残したが、看板の打線が沈黙した。18試合中12試合が3得点以下。2桁安打をマークしたのは3試合にとどまり、チーム打率は11位の2割3分3厘に沈んだ。

規定打席到達者の中でチームトップが43位の栗原で打率2割6分9厘。柳田が2割2分7厘、中村晃が2割2分4厘と、軒並み不振だった主力打者が崩れた打撃を早急に立て直せるか。「勝てなかったのは、最終的には監督が駄目だったから」と責任をしょい込んだ、百戦錬磨の工藤監督の手腕にも注目だ。


◎事実を追うだけでは…

ざっくり言えば「阪神は『首位固めに成功』しましたね。一方、ソフトバンクは『まさかの大苦戦』でした」と振り返っているだけだ。そして「工藤監督の手腕にも注目だ」と成り行き注目型の結論を導いて記事を締めている。

こちらの期待に対してはゼロ回答だ。データを色々と並べるなとは言わない。問題は、そこからどんな結論を導くかだ。

常広記者は球場で試合も見ているはずだ。そこで感じたことも含めて「パ優位」が根本部分から変わりつつあるのかを考えてほしかった。

この記事の隣には「スポートピア~己知ること、成功のカギ」というコラムが載っていて、筆者のA・ラミレス氏(DeNA前監督)は以下のように述べている。

今年のセ・パ交流戦はセの健闘が光った。13日終了時点の成績は48勝46敗11分け。例年優勢のパに対し、互角に渡り合ったといえる。ただ、これで両リーグの差が縮まったとは思わない。明暗を分けた一因は外国人の動向だ。最たる例はソフトバンク。交流戦を8回制してきたが、今年は故障や五輪予選で主力のキューバ勢を欠き、苦戦を強いられた。戦力が整った状態なら、違う結果になったはずだ

ラミレス氏と常広記者。どちらがジャーナリストに向いているだろうか。どちらが魅力的な記事を書く適性があるだろうか。


※今回取り上げた記事

交流戦『パ優位』異変 セ健闘、4球団勝ち越し~阪神、野手で世代交代進む ソフトバンク、看板打線が沈黙

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210615&ng=DGKKZO72886220U1A610C2UU8000


スポートピア~己知ること、成功のカギ

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210615&ng=DGKKZO72886430U1A610C2UU8000


※常広文太記者の記事の評価はD(問題あり)。常広記者への評価も暫定でDとする。「スポートピア」の評価はB(優れている)。

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