2019年5月16日木曜日

再び「ロボアド」を持ち上げた週刊エコノミスト稲留正英記者の罪

週刊エコノミスト5月21日号の特集「まだ間に合う! 50代からの投資」は功罪で言えば「罪」が上回る。中でも「ロボアド 3年間で利回り18%、手数料引き下げも」という記事は問題が多い。筆者の稲留正英記者は以前にも「ロボアド」を強引に持ち上げる記事を書いていた。今回の記事も全文を見た上で問題点を指摘したい。
カトリック長崎大司教館(長崎市)※写真と本文は無関係

【エコノミストの記事】

定年後に向けて資産形成したいが、何に投資をすべきか迷っているし、投資に時間を割くことも難しい50代には、ロボットアドバイザー(ロボアド)が有力な選択肢の一つとなる

ロボアドは、資産運用の王道である「長期・積み立て・分散」投資をコンピューターのアルゴリズムやAI(人工知能)を使い、個人向けに提供する運用サービスだ。パソコンやスマートフォンで年齢、年収、投資経験、リスク許容度などを入力すると、ロボアドがそれぞれの個人に適した推奨ポートフォリオを提示。口座を開設し、投資一任契約を結べば、運用が始まる。運用対象は、国内外の株式、債券、商品や不動産などに投資するETF(上場投資信託)や投資信託だ。リスクを分散しながら、世界経済の成長を、自らの資産形成に取り込むことが可能となる。

預かり資産最大のウェルスナビでは、株式投資比率が約8割の「リスク許容度5」のポートフォリオの場合、設定来(2016年1月~今年3月)利回りは18・6%。お金のデザインのTHEO(テオ)では、231ある運用パターンの設定来(16年2月~今年2月)の平均的な利回りは17・9%だった。年率ではそれぞれ6%程度の利回りを確保できた計算となる。

従来、ロボアドサービスは、20~40代が長期的な資産形成を目指すために利用するケースが多かった。しかし、人生100年時代となり、雇用延長などで労働収入を得られる期間が伸びた結果、50代以降でも利用する人が増えている。ウェルスナビの柴山和久CEOは、「今の50代は現役期間が長いため、昔の40代のようなリスクを取った運用ができる。株式の比率は資産全体の75~80%くらいでもよい」と語る。

お金のデザインの中村仁社長も、「定年まで5年以上ある場合は、リーマン・ショックのような相場急落があっても挽回できるため、50代を意識する必要はあまりない」と説明する。同社の運用アドバイザーである加藤康之・京都大学経営管理大学院客員教授は、「株式などのグロース(成長)資産の比率は6割が基本形。利用者はグロース志向かインカム(利子・配当)志向かでこの比率を変えればよい」と話す。

ロボアドの欠点は、運用手数料が年率1%とETFや投信を単体で購入して保有するよりも高いことだった。しかし、最近では手数料引き下げの動きが出始めている。THEOでは一定以上の預かり資産があり、かつ長期保有の顧客に対し、運用手数料を年率0・65%まで引き下げる新手数料体系を4月から導入した。

さらに、両社のサービスには、リバランス(資産の再配分)を生かした節税機能がある。これは、利子・配当金を受け取った場合や、リバランスで実現益が生じた場合は、含み損が出ている資産を売却し、実現損を出すことで支払う税金を軽減する。両社によると、節税効果は年率0・4%程度あるという。



◎「有力な選択肢」になる?

ロボアドの欠点は、運用手数料が年率1%とETFや投信を単体で購入して保有するよりも高いこと」と認識しているのならば「ロボットアドバイザー(ロボアド)が有力な選択肢の一つとなる」と考えるのは無理がある。「運用手数料を年率0・65%まで引き下げる新手数料体系を4月から導入した」としても割安感はない。

働いている人は「投資に時間を割くこと」が難しいから「ロボアド」に任せた方が楽だ。そのための1%は高くない--。これが「ロボアド」寄りの人間が考えそうな理屈だ。

しかし、「ロボアド」に辿り着くまでには、それなりに投資について考える必要がある。「ロボアド」に決めても、さらにどの会社のどのプランを選ぶかを検討するはずだ。そこまでやる人が「投資に時間を割くこと」が難しいから、後は高いコストを払ってもお任せを選びたいとなるのか。

「『ロボアド』ならリバランスをやってくれる」と「ロボアド」寄りの人間は反論するかもしれない。しかし、リバランス程度の機能に年1%も払う価値があるのか。投資額1000万円ならば手数料は年10万円に達する。

自分の代わりにリバランスをやってくれることに非常に高い価値を見出せる人を除けば、「ロボアド」の高い手数料に合理性はない。

仮に「コストが高い分、期待リターンも高くなりますよ」となるならば「有力な選択肢の一つとなる」が、そうはならないはずだ。

以前から言っていることだが、知り合いに助言を求められた時に「ロボアド」は絶対に勧めない。「自分で適当にETFを組み合わせた方が圧倒的に有利だ。リバランスなんて考える必要はない。ETFの組み合わせを考えるのが面倒ならば1本だけに絞ってもいい。分散の程度や資産クラスの偏りで多少の問題が生じたとしても、高い手数料を支払うデメリットに比べればかわいいものだ」とでも言うだろう。

リバランス」による「節税効果」のくだりも感心しない。「節税効果は年率0・4%程度ある」と言うが、これは平均的な水準なのだろう。しかし「含み損が出ている資産」がない場合もある。説明が十分とは言い難い。

さらに言えば「節税効果」というプラス部分には言及するのに、保有するETFの信託報酬という間接コストには触れていないのも引っかかる。

高コストだと書いてバランスを取った点は評価するが、それでも「稲留記者はロボアド関連企業の回し者」と認識しておくべきだろう。

定年後に向けて資産形成したいが、何に投資をすべきか迷っているし、投資に時間を割くことも難しい50代」には声を大にして伝えたい。

「稲留記者を信用するな。そして、手数料を取るタイプのロボアドには近付くな」


※今回取り上げた記事「ロボアド 3年間で利回り18%、手数料引き下げも
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190521/se1/00m/020/024000c


※記事の評価はD(問題あり)。稲留正英記者への評価は暫定E(大いに問題あり)から暫定Dに引き上げる。稲留記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。


問題山積 週刊エコノミスト稲留正英記者のロボアド記事
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/06/blog-post_20.html

0 件のコメント:

コメントを投稿