2019年5月24日金曜日

「5大都市」から横浜を除外した日経1面「診療所の都市偏在を是正」

24日の日本経済新聞朝刊1面トップの「診療所の都市偏在を是正 増加分の6割集中~厚労省、在宅医療の拠点化も」という記事では、まず「(診療所の)新規開設は5大都市に集中している」とのタイトルが付いた円グラフが気になった。
丸ビルと新丸ビル(東京都千代田区)
      ※写真と本文は無関係です

日経が認定した「5大都市」は「東京23区」「名古屋市」「福岡市」「大阪市」「札幌市」。なぜか「横浜市」が抜けている。東京圏に横浜市を含めて「5大都市圏」とするなら分かるが、そういう分類ではない。「東京23区」に次ぐ人口を抱える「横浜市」を「5大都市」から外すのは無理がある。

横浜市」の「新規開設」が少なかったからだとは思うが、仮にそうならばご都合主義的な括りと言える。

この手の記事でよく見る「都市」と「地方」という分け方も引っかかる。これだとうまく2つに分けられない。今回の記事で言えば「福岡市」や「札幌市」は「都市」であり「地方」には含めないのだろう。だが常識的に考えればどちらも地方都市だ。

都市と地方」という分け方は「都会と田舎」「中央と地方」がごちゃ混ぜになった面倒な感じがあり、できれば使ってほしくない。今回の記事にもその問題はある。記事の一部を見ていこう。

【日経の記事】

厚生労働省は診療所の新設が都市部に集中する状況を是正する。過去5年間で増えた診療所のうち6割強は東京などの5大都市部に集中し、医療を受けられる機会に偏りがある。厚労省は医師が多い地域での開業には在宅医療や休日・夜間の診療などを担うことを求める。条件を厳しくして地方での開業を促すとともに、都市部では高齢化に対応できる医療の拡充をめざす。

◇   ◇   ◇

これを読むと「診療所の新設が都市部に集中する状況を是正」して「地方での開業を促す」のだと理解したくなる。しかし読み進めると話が違ってくる。

【日経の記事】

厚労省は偏在の是正に乗り出す。まず全国の335の医療圏について、医師が多い上位3分の1の医療圏を「多数区域」とする。この地域で診療所を新設する医師には、(1)在宅医療(2)休日・夜間診療といった初期救急(3)学校医など公衆衛生――のうち、都道府県が必要とする機能を担うよう求める。20年度から実施する。


厚労省はこうした機能を担えない診療所が郊外や地方などで開業を選べば、医師の偏在の是正につながるとみる。


◎「多数区域=都市」?

医師が多い上位3分の1の医療圏」が「都市部」で、それ以外の「医療圏」が「地方」ならば辻褄は合う。しかし「医師が多い上位3分の1の医療圏」には福岡県久留米市や茨城県つくば市など多くの「地方」が入ってくる。

医師や医療機関の偏在に関して「都市では足りているが地方は足りない」という理解をしてしまうと実態を見誤る。特に「地方」に関してはそうだ。

記事では「こうした機能を担えない診療所が郊外や地方などで開業を選べば」と書いているが「郊外や地方」の中には「医師が多い上位3分の1の医療圏」がたくさん入ってくるはずだ。「都市と地方」という分け方では状況をうまく説明できない。

「正確さを犠牲にして分かりやすく書いた。医師が多い『地方』には制度変更の恩恵が及ばないことは、よく読めば分かるはずだ」と筆者は言うかもしれない。それを全面的に否定はできないが、個人的には「都市と地方」という対比は避けてほしい。


※今回取り上げた記事「診療所の都市偏在を是正 増加分の6割集中~厚労省、在宅医療の拠点化も
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190524&ng=DGKKZO45200770T20C19A5MM8000


※記事の評価はC(平均的)。

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