2019年5月29日水曜日

週刊ダイヤモンドの特集「コンビニ地獄」は基本的に評価できるが…

週刊ダイヤモンド6月1日号の特集「コンビニ地獄~セブン帝国の危機」は基本的にはよくできている。ただ、最後の「Epilogue~つまずいた小売業界の“優等生” コンビニは変われるのか」という記事はツッコミどころが目立った。
小石川後楽園(東京都文京区)
      ※写真と本文は無関係です

記事を見ながら具体的に指摘してみる。

【ダイヤモンドの記事】

「経営者時代、わたしは社員たちにも、『仮説』を立てて、挑戦することを求めてきました。仮説とは、まさに、跳ぶ発想のなかからうかびあがるものだからです」──。

セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)を事実上創業し、日本のコンビニエンスストアの“生みの親”とも称される鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問は、自身の著書『わがセブン秘録』(プレジデント社)で、こう記している。

米国で見つけたコンビニという業態を日本流に“移植”。総合スーパー(GMS)全盛だった1970年代、「小型店は成り立たない」と批判を浴びながらのスタートだった。

その後、店頭でのおにぎりや弁当の販売、24時間営業、銀行業への参入、「金の食パン」に代表される“割高でも付加価値のある”プライベートブランド商品「セブンプレミアム」の開発……。

社会や消費者の変化に敏感に反応し「仮説」を立て、「過去の延長線上ではなく、未来へとジャンプ」(同著)する。この発想で、あらゆる“便利”を具現化することが、多彩な商品・サービスの開発や店舗網拡大へとつながる、SEJ成長の原動力だった。

やがて、百貨店やGMSを傘下に持つ巨大小売りグループを築き上げるまでに至るサクセスストーリーは、コンビニが小売業界の主役に上り詰めた象徴として、さまざまな場面で語られてきた。



◎コンビニが出発点?

この書き方だと「セブン&アイ・ホールディングス」は鈴木敏文氏が「セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)を事実上創業」したところから始まり、その後に「百貨店やGMSを傘下に」収めたように感じる。

言うまでもなく「セブン&アイ」の始まりはスーパーのイトーヨーカ堂だ。鈴木氏はヨーカ堂の創業者ではない。記事のような説明では読者に誤解を与えかねない。

続きを見ていく。

【ダイヤモンドの記事】

ところが、社会の変化は、鈴木氏が感じていたよりもはるかに急激に進んでいた。

少子化という人口構造の絶対的な制約から、店舗を支える働き手の減少は、大胆な移民政策でもない限り解消する見込みはない。

にもかかわらず、鈴木氏がつくり出した、店舗の人件費の負担を加盟店に押し付け、本部が粗利からロイヤルティーを吸い上げる方式は、ほとんど見直されることがなかった。


◎鈴木氏はFCの生みの親?

鈴木氏がつくり出した、店舗の人件費の負担を加盟店に押し付け、本部が粗利からロイヤルティーを吸い上げる方式」という説明も引っかかる。コンビニがフランチャイズ(FC)の仕組みに基づいているのはその通りだが、鈴木氏はFCの生みの親ではない。

FCでは「店舗の人件費の負担」を「加盟店」が負い、本部が「ロイヤルティーを吸い上げる」のは当然だ。「鈴木氏がつくり出した」仕組みという説明は完全な間違いではないとしても、やはり誤解を生みやすい。

ついでに言うと「少子化という人口構造の絶対的な制約から、店舗を支える働き手の減少は、大胆な移民政策でもない限り解消する見込みはない」との見方には賛成できない。雇用情勢が大幅に悪化すれば「店舗を支える働き手」は「大胆な移民政策」なしで増加に転じる可能性がある。可能性が高いとは言わないが…。

さらに記事を見ていく。

【ダイヤモンドの記事】

「加盟店側の不満は、以前から感じていた。だが、2011年の東日本大震災で食料を供給し、“社会のインフラ”として再評価されたことで、負の側面への対応が遅れてしまった」と、あるSEJ本部の関係者は悔悟する。

16年に鈴木氏がクーデターで実権を失った後も、後継の幹部が「人手不足がわれわれの店にとって問題という認識はない」と記者会見で口走ったように、彼らの現状認識は、加盟店や世間のそれとは明らかに食い違っていた。


◎「鈴木氏がクーデターで実権を失った」?

鈴木氏」は自分の推す人事案が取締役会で否決されたのを受けて、自ら退任を決めている。これを「クーデターで実権を失った」と説明するのも正確さに欠ける。

週刊ダイヤモンドは以前に鈴木氏礼讃記事を何度も書いていた。その中心人物である田島靖久編集委員は今回の取材班に入っていないようだが、鈴木氏の存在を必要以上に大きく捉える癖が編集部に残っているような気がした。


※今回取り上げた記事「Epilogue~つまずいた小売業界の“優等生” コンビニは変われるのか
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/26644


※記事の評価はD(問題あり)。他の記事には高い評価を与えられるので、特集全体への評価はC(平均的)としたい。担当者らの評価は以下の通りとする。岡田記者に関しては、ダイヤモンドがミス放置の方針を転換したと判断し、期待を込めてF(根本的な欠陥あり)評価を見直す。

岡田悟(F→C)
重石岳史(D→C)
鈴木洋子(D→C)
相馬留美(暫定D→暫定C)
大矢博之(D→C)


※岡田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

週刊ダイヤモンドも誤解? ヤフー・ソニーの「おうちダイレクト」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_4.html

こっそり「正しい説明」に転じた週刊ダイヤモンド岡田悟記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_96.html

肝心のJフロントに取材なし? 週刊ダイヤモンド岡田悟記者の怠慢
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post.html

「人件費が粗利を圧迫」? 週刊ダイヤモンド岡田悟記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_25.html


※重石記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「GAFAがデータ独占」と誤解した週刊ダイヤモンド重石岳史記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/gafa.html


※鈴木記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

ソニーの例えが下手な週刊ダイヤモンド鈴木洋子記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/blog-post_19.html

週刊ダイヤモンド鈴木洋子記者のヨイショ記事に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/10/blog-post_11.html

どこが「7年越しの決断」? 週刊ダイヤモンド鈴木洋子記者に問う
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/11/7.html


※相馬記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

基本的な技術が欠けた週刊ダイヤモンド相馬留美記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/blog-post_17.html

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