2019年5月22日水曜日

60歳前後の経営者は「高度成長期に入社」? 日経ビジネスの回答

日経ビジネスの記事で「早稲田大学の池上重輔教授」が「特に高度成長期に入社した60歳前後の経営者は、まねをしても、そこそこ成長できた過去の経験がある」とコメントしている。この通りに発言したのならば「池上重輔教授」は日本の「高度成長期」がいつ終わったのか理解していないと思える。もちろん、記事の内容に関して責任を負うべきは筆者の長江優子記者ではあるが…。
加部島(佐賀県唐津市)※写真と本文は無関係です

日経ビジネス編集部には以下の内容で問い合わせを送った。回答と併せて見てほしい。

【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 長江優子様

5月20日号の「SPECIAL REPORT~気づけば周囲はライバルだらけ 激烈競争に負けないレッドオーシャン回避術」という記事についてお尋ねします。記事には「特に高度成長期に入社した60歳前後の経営者は、まねをしても、そこそこ成長できた過去の経験がある」という「早稲田大学の池上重輔教授」のコメントが出てきます。これを信じれば「60歳前後の経営者」は「高度成長期」に「入社」しているはずです。

日本では「1973年の石油危機で高度成長に終止符を打った」(百科事典マイペディア)と言われています。つまり1973年入社組が「高度成長期に入社した」最後の人たちです。22歳で入社したとすると現在は68歳か69歳で「60歳前後」とは言えません。「高度成長期に入社した70歳前後の経営者」ならば問題はありませんが、そうは書いていません。

高度成長期に入社した60歳前後の経営者」との記述は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので、疑問に感じた点を追加で2つ挙げておきます。

(1)そんなに単純な問題ですか?

記事には「今、手掛けている商品やサービスはレッドオーシャンにあるのか否か。あるのであれば、すぐさま撤退した方がいいはずだ」との記述があります。そして「フィットネスジム」に関して長江様は「まさにレッドオーシャンだ」と言い切っています。だとすると、「フィットネスジム」を手掛ける企業は全て「撤退した方がいいはず」です。そんなに単純な問題なのでしょうか。

仮に「撤退した方がいいはず」と他の皆が考えて撤退してくれれば、残った1社は大きな残存者利益が得られそうです。それでも全ての企業にとって「レッドオーシャン」ならば「撤退」が正解なのでしょうか。複雑な問題を単純に捉え過ぎていませんか。


(2)話が違ってきていませんか?

レッドオーシャン」ならば「撤退」という話の後で長江様は「上の図を見ていただきたい。ここに示したのは、縦軸が社会への影響力、横軸は将来性の見通しやすさを表す」と述べ「社会へのインパクトは小さく、将来性も読みやすいのであれば、事業として継続する意義は薄い。すぐさま撤退を検討した方がいい」と別の判断基準を示しています。

レッドオーシャン」ならば「撤退」だったのではありませんか。しかし、「上の図」の基準に従うと「社会への影響力が大きい」「将来性が読みにくい」の両方に当てはまれば「続行」です。「社会への影響力が大きい」上に「将来性が読みにくい」という面を持つ「レッドオーシャン」もあるでしょう。その場合はどうなるのですか。

上の図」の基準に従えばよいという話ならば、「レッドオーシャン」とか「ブルーオーシャン」を持ち出す必要はありません。しかも「上の図」には「市場におけるプレーヤーの数は重要ではない」との注記まであります。「レッドオーシャン」について長江様は「多数のライバルがひしめき、血で血を洗うような競争の激しい市場を意味する」と書いていました。「市場におけるプレーヤーの数は重要ではない」のならば、やはり「レッドオーシャン」かどうかは考えなくていいはずです。しかし、記事のテーマは「レッドオーシャン回避術」です。

この辺りはもう少し話を整理して記事を作った方が良かったのではと感じました。問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。


【日経BP社の回答】

日経ビジネスをご愛読頂き、ありがとうございます。ご質問に回答させて頂きます。

ご指摘の「高度成長期に入社した60歳前後の経営者」ですが、高度成長期をバブル景気に入る前までと広くとらえ、このような表現をしました。

ただ、正確な表現とは言えなかったかもしれません。以後、より正確な表現を心掛けて参りたいと存じます。

レッドオーシャンの記述についても、より分かりやすく丁寧に記述するべきだったと反省し、ご指摘を今後の記事の参考にさせて頂きたく存じます。

以上です。

引き続き、日経ビジネスをご愛読頂きますよう、お願い申し上げます。

◇   ◇   ◇

長江記者も分かっていると思うが「バブル景気に入る前まで」を「高度成長期」と見なすのは無理がある。上記の問い合わせで指摘したように、長江記者の記事は総じて作りが雑だ。そこは改善してほしい。


※今回取り上げた記事「SPECIAL REPORT~気づけば周囲はライバルだらけ 激烈競争に負けないレッドオーシャン回避術
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00117/00033/


※記事の評価はD(問題あり)。長江優子記者への評価はDを据え置く。長江記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「日本ワインも需要増に追いつかず」が怪しい日経ビジネス
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_26.html

「オリオン買収」に関する日経ビジネス長江優子記者の誤解
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/02/blog-post_7.html

「サントリー 紅茶飲料に参入」に無理あり 日経ビジネス 長江優子記者
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/blog-post_12.html

日経ビジネス白井咲貴・長江優子記者に感じた女性活躍への「偏見」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_14.html

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