2019年5月6日月曜日

日本の人口減は「世界最速」? 日経 発田真人国際部長の誤解

日本経済新聞の発田真人国際部長は「『平成』の30年」に日本が「人口減を世界最速の勢いで経験」したと認識しているようだ。違うと思えたので以下の内容で問い合わせを送ってみた。
鏡山(大分県玖珠町)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 国際部長 発田真人様

6日朝刊総合2面の「新時代の日本へ(5)世界とともに生きる」という記事についてお尋ねします。記事の中で発田様は「『平成』の30年」に関して「この間、日本が得たものもある。高齢化、人口減を世界最速の勢いで経験し、世界に打って出ていかなければ生き残れないという課題を直視したことだ」と記しています。

日本の人口のピークは2008年の1億2808万人で、その後は9年連続の減少となり、ピークに比べて約3%減っています。大した減り方ではありません。例えば人口約700万人のブルガリアは1980年代にピークを迎え、過去30年間で約2割も人口が減っています。東欧には他にも日本を大幅に上回る勢いで人口が減った国があります。国際部長の発田様ならば、すぐに調べられるはずです。

『平成』の30年」に日本が「人口減を世界最速の勢いで経験」したとの説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので、他にもいくつか注文を付けておきます。まず以下のくだりです。

ファーウェイが2018年に日本のメーカーから調達した部品の総額は60億ドル(約6700億円)にのぼる。取引先にはソニー、住友電気工業、TDK、東芝メモリ、ジャパンディスプレイなど有力企業がずらりと並ぶ。驚いたのはその先だ。長いものでは数年先まで契約を結び、代金は前倒しで払う準備もあるという。逆風下にある一部の企業にとっては、魅力的な提案だ。『日本の企業に出資するつもりはないが、こうした形で支援することはできる』と同社幹部が語るのを聞き、中国勢が日本の産業にしたたかに入り込んでいる現実を知る思いがした

発田様は「同社ファーウェイ」のつもりで書いたはずです。誤解する人は少ないでしょうが、「ファーウェイ」と「同社」の間に「ソニー、住友電気工業、TDK、東芝メモリ、ジャパンディスプレイ」と5社の名前が出てきます。この場合は「同社」とせず「ファーウェイ」と表記すべきです。

驚いたのはその先だ。長いものでは数年先まで契約を結び、代金は前倒しで払う準備もあるという」との説明も問題なしとしません。「通信機器」業界での一般的な「契約」がどういうものかほとんどの読者は知りません。「ファーウェイ」のやり方が常識外れならば、「常識」との差は記事中で説明すべきです。

記事の結論部分も引っかかりました。

『自国が望む結果を他国も望むようにする力であり、他国を無理やり従わせるのではなく、味方につける力』。米国際政治学者ジョセフ・ナイ氏が平成の初めに提唱したソフトパワー国家論にもつながる。『令和』の日本に求められるのは世界とともに生きる覚悟だろう

平成」には「世界とともに生きる覚悟」が求められていなかったのならば「『令和』の日本に求められるのは世界とともに生きる覚悟だろう」と結んでもよいでしょう。しかし、これは「平成」にも当てはまる話ではありませんか。

発田様は国際部長という要職に就いています。そして、紙面を使って自らの考えを読者に伝える機会を得たのです。その結論が「『令和』の日本に求められるのは世界とともに生きる覚悟だろう」で良いのですか。こんな当たり障りのない主張を読者に届けるために新聞社に入ったのですか。もう一度よく考えてください。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「新時代の日本へ(5)世界とともに生きる
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190506&ng=DGKKZO44444320V00C19A5EA2000


※記事の評価はD(問題あり)。発田真人国際部長への評価も暫定でDとする。

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