2019年5月25日土曜日

「パナソニックの祖業=自転車」が苦しい日経ビジネス中山玲子記者

無理に無理を重ねた記事と言うべきか。日経ビジネス5月27日号の「時事深層 COMPANY~パナソニックがシェア自転車、にじむ『祖業』復活への執念」という記事は強引な作りが目立った。筆者の中山玲子記者に言わせれば「自転車事業」は「パナソニック」の「祖業」であり、同社はその「復活」を狙っているらしい。だが、色々な意味で間違っている。
別府海浜砂場(大分県別府市)※写真と本文は無関係です

まず「祖業」かどうかを考えていこう。「パナにとって自転車は思い入れの深い事業だ。創業者の松下幸之助氏が10歳で自転車店に奉公し、1923年に自転車用ランプを考案、創業期を支えた」と中山記者は書いている。

まず「自転車用ランプ」の生産・販売が「自転車事業」と言えるのかが疑問だ。百歩譲って「自転車事業」だとしよう。だとしても「パナソニック」の歴史が「自転車用ランプ」から始まっている必要はある。

ところが同社のホームページによると、創業は1918年で「配線器具」から事業が始まったらしい。「1923年に自転車用ランプを考案」する5年も前だ。これで「祖業」というのは苦し過ぎる。

次は「復活」に関して検討しよう。一度撤退して再び参入するのならば「復活」と言える。しかし「子会社で自転車の製造・販売を手掛けるパナソニックサイクルテック(大阪府柏原市)」が既にあるので、この意味での「復活」はあり得ない。

落ち込んでいた業績が上向くといった意味での「復活」はどうか。関連する記述を見ていこう。

【日経ビジネスの記事】

実は電動アシスト付き市場でパナは4割以上のシェアを握るトップメーカーだ。パナソニックサイクルテックの18年度の売上高は314億円。市場拡大を追い風に、15年度から約1割増やした。17年には国内で初めてマウンテンバイクの電動アシストタイプを発売。健康志向の高まりで休日に自転車に乗る40~60代の男性の需要を見込む。スポーツタイプなら価格も高価なモデルで60万円と、同10万~20万円のママチャリタイプより利幅は大きい。パナはその成長性に懸けた。


◎「復活」と言われても…

パナソニックサイクルテック」は「電動アシスト付き市場」では「4割以上のシェアを握るトップメーカー」らしい。そして同社は「18年度の売上高」を「15年度から約1割増やした」という。ならば、そこそこ順調なのではないか。「復活」しなければならない状況とは考えにくい。

ついでに言うと「スポーツタイプなら価格も高価なモデルで60万円と、同10万~20万円のママチャリタイプより利幅は大きい」との説明は引っかかった。中山記者にはどちらの「タイプ」もコストは同じとの前提があるのか。コスト次第では「60万円」の「高価なモデル」の方が「利幅」は小さくなる。実際に「スポーツタイプ」の方が「利幅は大きい」のだとしても、もう少し丁寧に説明してほしい。


※今回取り上げた記事「時事深層 COMPANY~パナソニックがシェア自転車、にじむ『祖業』復活への執念
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00170/


※記事の評価はD(問題あり)。中山玲子記者への評価も暫定でDとする。

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