2018年10月29日月曜日

「マカオ返還」は忘れた? 週刊ダイヤモンド「投資に役立つ!地政学・世界史」

週刊ダイヤモンド11月3日号の特集「投資に役立つ!地政学・世界史」には色々と問題を感じた。まず歴史に関する説明に誤りがある。担当者らには以下の内容で問い合わせを送った。
新地中華街(長崎市)※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドへの問い合わせ】

週刊ダイヤモンド編集部 藤田章夫様 竹田幸平様 竹田孝洋様 中村正毅様

11月3日号の特集「投資に役立つ!地政学・世界史」の中の「地政学&世界史~覇権国vs新興勢力の争い 米中間で“新冷戦”が勃発」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

アヘン戦争の屈辱以降、太平天国の乱や義和団事件などが起き、最終的に共産党革命につながるが、その一連の努力にもかかわらず、中国は香港から英国を追い出せただけ。自らの勢力圏だと思っていた韓国、台湾、沖縄などから西洋を追い出せなかった

中国は香港から英国を追い出せただけ」と断定していますが、ポルトガルによるマカオ返還(1999年)を忘れていませんか。これは中国がアヘン戦争以前の領土から「西洋を追い出せた」例と言えます。

中国にはかつて「租界」と呼ばれる「外国人がその居留地区の警察・行政権を掌握した組織および地域」(デジタル大辞泉)がありました。「1845年、英国が上海に設けて以来、一時は8か国27か所に及んだが、第二次大戦中にすべて返還された」(同)ようです。これも「西洋を追い出せた」例に含めるべきでしょう。

付け加えると「台湾」から「西洋を追い出せなかった」との説明は理解に苦しみます。「韓国」「沖縄」は米軍基地があるので「西洋を追い出せなかった」と書いたのかなと思います。ただ「台湾」には米国を含め外国の軍事基地はないはずです。

中国は香港から英国を追い出せただけ」「台湾から西洋を追い出せなかった」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

次に取り上げるのは以下のくだりです。

とはいえ中国は米国に海上で勝てないことを知っており、また米国も陸上で中国に勝てるとは思っていない。故に、相互抑止が働き現状維持が長らく続いている

記事に付けた地図には南シナ海について「人工島や滑走路を建設し海洋進出」という説明文が付いています。「現状維持が長らく続いている」との説明と整合しません。ちなみに防衛白書(平成30年版)には以下の記述があります。

南シナ海においては、南沙(スプラトリー)諸島や西沙(パラセル)諸島の領有権などをめぐってASEAN関係国と中国の間で主張が対立している。中国は一方的に大規模かつ急速な埋立て及び施設建設を行っており、このような一方的な現状変更及びその既成事実化に対する国際社会による深刻な懸念が示されている

相互抑止が働き現状維持が長らく続いている」との説明は誤りではありませんか。防衛白書でも「一方的な現状変更」と断定しています。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

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※今回取り上げた特集「投資に役立つ!地政学・世界史
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/24888


※特集全体の評価はD(問題あり)。担当者らの評価は以下の通りとする(敬称略)。

藤田章夫(暫定D→D)
竹田幸平(Dを維持)
竹田孝洋(Dを維持)
中村正毅(暫定C→暫定D)

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