2018年10月28日日曜日

労働分配率の分母は「利益」? 日経 木村恭子編集委員に問う

日本経済新聞の木村恭子編集委員によると「労働分配率」とは「企業の利益のうち労働者の取り分を示す」ものらしい。違うと思えたので以下の内容で問い合わせを送ってみた。
グラバー園(長崎市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 編集委員 木村恭子様

28日の朝刊総合3面に載った「風見鶏~長期政権『期待先行』の限界」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。

首相は『国・地方を合わせて税収が24兆円増えた』、『正規雇用の有効求人倍率は1倍を超え過去最高』などとアベノミクスの成果を列挙した一方で、石破氏は企業の利益のうち労働者の取り分を示す『労働分配率』が『43年ぶりの低水準』だったことを指摘し『企業が収益を上げることと所得が増えることは別の問題』などと批判した

労働分配率」とは「企業が生み出した付加価値のうち、人件費として労働者に支払われた割合」(デジタル大辞泉)のことです。しかし木村様は「企業の利益のうち労働者の取り分を示す」と説明しています。売上高から人件費などの費用を差し引いたものが「企業の利益」となります。営業利益でも純利益でも、その中に「労働者の取り分」はありません。

2017年9月5日付の「世界企業 日本の立ち位置(3)労働分配率、日米欧で低調」という日経の記事でも「企業の生む付加価値のうち従業員の取り分を示す労働分配率」と説明しています。

今回の記事にも「(首相から)問い合わせを受けた議員は『景気回復局面では、付加価値の上昇が先行し人件費が遅れて上がるため労働分配率は下がる傾向があるとした首相の説明は正しい』と太鼓判を押した」との記述が出てきます。これも分母は「付加価値」だと示唆しています。

過去の日経の記事には「労働分配率」を「企業の利益のうち労働者の取り分を示す」としている例もあります。木村様はこうした記事を参考にしたのかもしれません。しかし、この説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

今回の記事では「政治家はなぜ質問に答えないか」という本の内容を基に、「質問に明確に答えない政治家」の問題を論じています。しかし、読者からの間違い指摘を無視するのが当たり前の新聞社に「質問に明確に答えない政治家」をあれこれ言う資格があるでしょうか。

木村様は記事の終盤で「『質問に答えない』政治家取材では、質問者にも技が必要だ」と記しています。しかし、日経には「」以前の問題が横たわっています。その点を肝に銘じてください。

◇   ◇   ◇

今年9月3日付の「労働分配率の下落続く、17年度 43年ぶり低水準、企業統計」という共同通信の記事では「企業が稼ぎを人件費に回す割合を示す『労働分配率』」と書いている。「稼ぎ」が何を指すのか曖昧ではあるが、これならばまだ分かる。

だが「企業の利益のうち労働者の取り分を示す『労働分配率』」は苦しい。木村編集委員は過去の記事の説明を踏襲しただけかもしれないが、その場合は「労働分配率」を正しく理解しないまま記事を書いたことになる。


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「風見鶏~長期政権『期待先行』の限界
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181028&ng=DGKKZO37007930W8A021C1EA3000


※記事の評価はD(問題あり)。木村恭子編集委員への評価も暫定でDとする。

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