2018年9月9日日曜日

「訴えたいことがない」のが辛い日経 大場俊介政治部次長

日本経済新聞の大場俊介政治部次長に関しては「訴えたいことがない書き手」と断定してよさそうだ。9日の朝刊総合3面に載った「風見鶏~災害対応・政策論争両立を」という記事も、行数を埋めただけの中身になっている。
芥屋の大門(福岡県糸島市)※写真と本文は無関係です

見出しでは「災害対応・政策論争両立を」と「両立」を訴えたように見せているが、記事では「一刻を争う災害対応に政府が全力を挙げるのはもっともだ。だが政策論争もおろそかにできない」と書いているだけだ。「これじゃ見出しが立たないよ」とボヤキながら見出しを考える整理部担当者の姿が目に浮かぶようだ。

記事の中身を順に見ていこう。

【日経の記事】

6日未明、北海道を震度7の大地震が襲った。関西を中心に大きな被害をもたらした台風21号が過ぎ去ったばかり。相次ぐ大災害に、7日に告示された自民党総裁選は9日までに予定していた安倍晋三首相、石破茂元幹事長の両候補による立会演説会や討論会の自粛を決めた。

一刻を争う災害対応に政府が全力を挙げるのはもっともだ。だが政策論争もおろそかにできない

2008年の米大統領選。共和党候補のマケイン氏は金融危機への対応のため予定していたテレビ討論会の延期を呼びかけた。対する民主党のオバマ氏は「1度に1つ以上の物事に対処することが大統領職には求められている」と予定通り討論会を開くべきだと主張した。マケイン氏は世論の支持を得られず、オバマ氏に敗北した。


◎だったら、どうすべき?

政策論争もおろそかにできない」のは分かった。「テレビ討論会の延期を呼びかけた」マケイン氏が「2008年の米大統領選」で負けたのも分かった。それらを踏まえて、今回はどう対応すべきなのかを論じるのかと思ったら、この件は上記のくだりで終わる。

そして話は「自民党」の歴史に移ってしまう。

【日経の記事】

自民党の総裁選も首相を決める選挙だ。政策論争は国の方向性を決めてきた

岸信介氏が日米安全保障条約改定を訴え国論が割れると、後を継いだ池田勇人氏は「所得倍増論」を掲げ、進路を安保から経済へと大転換した。田中角栄氏は日中国交正常化を主張し、中曽根康弘氏は「戦後政治の総決算」をうたって3公社の民営化を進めた。

55年体制で自民党は保守とリベラルなど政策を異にする派閥が論争を通じて幅を広げ、首相の座を争う疑似政権交代を繰り返した。



◎「政策論争」どこに?

災害対応・政策論争両立」の話が中途半端に終わってしまったのは仕方なく受け入れて話の続きを読んでみると「(総裁選での)政策論争は国の方向性を決めてきた」という話になっている。
福岡タワーから見た福岡市街 ※写真と本文は無関係

しかし「自民党の総裁選」でどんな「政策論争」があったのかは説明していない。歴代の政権が何をやったかを書いているだけだ。

続きを見ていこう。

【日経の記事】

総裁選の政策論争が低調でつまらない、と言われるようになったのは小選挙区制を導入し、二大政党による政権交代が現実味を帯びてからだ。中選挙区制では各派の候補が異なる政策を掲げて複数の議席を奪い合ったが、小選挙区制は選挙区で野党と1議席を争うため派閥間で政策の違いはあまり目立たなくなった。



◎「各派の候補が異なる政策を掲げた」?

中選挙区制では各派の候補が異なる政策を掲げて複数の議席を奪い合った」という記憶が個人的にはない。「中選挙区制」の下でも、同じ自民党候補が「異なる政策」を掲げて戦うケースはほぼなかった気がする。断定できる根拠はないが…。

さらに続きを見ていく。

【日経の記事】

政策論争を前面に出した権力闘争は、03年の総裁選以降すっかり影を潜めた。郵政民営化を叫ぶ小泉純一郎首相と野中広務元幹事長をはじめ「抵抗勢力」の戦いは、小泉氏が勝利し、派閥崩壊に拍車がかかった。自民党と連立を組む公明党の神崎武法元代表は「昔の総裁選の方がしっかり論戦し、国民も関心を持って聞いていた」と語る。

現職に挑む対抗馬もそれ以降、出てこなかった。小泉氏の後の安倍氏、福田康夫氏、麻生太郎氏はいずれも1年で退陣。いまは弱小野党の乱立で政権交代の芽はしぼみ、首相に返り咲いた安倍氏の「1強体制」は今年で6年目に入った。

日本は長期安定政権のもとアベノミクス景気を謳歌する。外交でも主要7カ国(G7)首脳会議で安倍首相はドイツのメルケル首相に次ぐ古株だ。だが海外に目をむけると米国は世界を相手に貿易戦争を仕掛け、名目国内総生産(GDP)で日本を抜き去った中国は陸、海で覇権を広げている。そろそろ国民に選択肢を示してもいい時だろう。

論争の軸は何か。安倍首相は憲法改正や社会保障制度改革を打ち出す。石破氏は改憲論議のプロセスやモリカケ問題への対処など「政治手法」を争点にしたいようだ。かみ合うのかどうか、はっきりしない。

党内の関心はもはや「7割ライン」と言われる首相の得票数と選挙後のポストだとの声が聞こえてくる。各派内では早くも党役員や閣僚候補の名前まで取り沙汰される。票、カネ、ポストを一手に握ったかつての派閥の機能は低下したのに、ポスト配分だけが先祖返りしたかのようだ。

自民党が発表した総裁選ポスターには「日本を守る責任。時代を拓く覚悟。」とある。世界が激動するなかでの今回の総裁選は20年後、50年後にどう総括されるだろうか


◎最後が「どう総括されるだろうか」では…

あれこれ書いて最後は「世界が激動するなかでの今回の総裁選は20年後、50年後にどう総括されるだろうか」と問いかけて締めている。

署名入りでコラムを書くのならば、大場次長だからこその訴えが欲しい。それが無理ならば、ありがちな訴えでもいい。今回のような「成り行きが注目される」型の締め方しかできないのは残念だ。

大場次長は日本の政治を長く取材してきたはずだ。なのに、自民党の総裁選を前に記事を通じて訴えたいことはないのか。今回のような結論しか導けないのならば、政治関連のコラムはもう書かない方がいい。


※今回取り上げた記事「風見鶏~災害対応・政策論争両立を
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180909&ng=DGKKZO35104670X00C18A9EA3000


※記事の評価はD(問題あり)。大場俊介政治部次長への評価はDで確定とする。大場次長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

行数埋めただけの 日経 大場俊介次長「風見鶏~清和会がつなぐ人口問題」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/blog-post_13.html

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