2018年9月17日月曜日

北朝鮮のネット規制は中国より緩い? 日経 小柳建彦編集委員に問う

通信回線に明確な国境を設け、情報・データの往来を厳しく管理することでネット上の国家主権を確立していたのは、これまで(2018年5月まで)中国だけだった」と日本経済新聞の小柳建彦は記事に書いている。本当にそうだろうか。少なくとも北朝鮮は中国以上に規制が厳しそうなイメージがある。
三角西港(熊本県宇城市)※写真と本文は無関係です

日経には以下の内容で問い合わせを送った。

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 編集委員 小柳建彦様

17日の朝刊企業面に載った「経営の視点~37億人のネットに『国境』 大手失策、国家の反撃招く」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは冒頭に出てくる以下の記述です。

国境も中央政府も存在しないという、インターネット最大の特徴が揺れている。通信回線に明確な国境を設け、情報・データの往来を厳しく管理することでネット上の国家主権を確立していたのは、これまで中国だけだった。ところが今年5月に欧州連合(EU)が一般データ保護規則(GDPR)を施行し、域外への個人データの持ち出しを原則禁止にした

今年5月」まで「通信回線に明確な国境を設け、情報・データの往来を厳しく管理することでネット上の国家主権を確立していた」のは「中国だけだった」というのは本当ですか。ネットに対する規制が厳しい国としてまず思い浮かぶのが北朝鮮です。

2017年10月19日付のブルムバーグの記事によると「孤立する北朝鮮には、アップルやサムスン電子といった世界的な大手ハイテク企業は存在せず、市民はスマートフォンのアプリやインターネットなどの基本的な技術へのアクセスが制限されている」そうです。

記事では「北朝鮮は長年、情報の自由な流入を防止するためにグローバルなインターネットへのアクセスが制限してきた。ほとんどの市民は、政府のメディアなど国内のウェブサイトのみを閲覧できる。選ばれた少数の人々は国際的なアクセス権を持つが、その活動は厳重に監視されている」とも書いています。他のメディアの報道などからも、北朝鮮ではネットを通じた「情報・データの往来を厳しく管理」していると判断できます。

通信回線に明確な国境を設け、情報・データの往来を厳しく管理することでネット上の国家主権を確立していたのは、これまで中国だけだった」との説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

追加で記事の問題点を指摘しておきます。

国境も中央政府も存在しないという、インターネット最大の特徴が揺れている」と小柳様は述べています。しかし、世界最大の人口を抱える中国で「国境も中央政府も存在」するのならば、「国境も中央政府も存在しないという」「特徴」はそもそも成立していないと思えます。

以下の記述にも問題を感じました。

アジアでも、インド政府が個人データの国内保存を義務づける法案を検討中で、年内にも成立する可能性が出てきた。インドネシアやベトナムでもデータの所在地規制を課しており、これにインドが加わると中国、EUと合わせ、世界の人口の半分にあたる約37億人が、ネット上のデータの往来に国境が存在する世界の住民になる


記事の最初の方を読むと「ネット上のデータの往来に国境が存在する」のは中国だけだったのに、「今年5月」にEUが加わったと理解したくなります。しかし上記のくだりでは「インドネシアやベトナムでもデータの所在地規制を課しており」と記しており、整合性の問題があります。「データの所在地規制を課して」いるからと言って、中国のように「通信回線に明確な国境を設け、情報・データの往来を厳しく管理」しているとは限らないといった事情があるのならば、それを説明すべきです。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「経営の視点~37億人のネットに『国境』 大手失策、国家の反撃招く
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180917&ng=DGKKZO35370950U8A910C1TJC000


※記事の評価はD(問題あり)。小柳建彦編集委員への評価もDを維持する。小柳編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「インドの日本人増やすべき」に根拠乏しい日経 小柳建彦編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_32.html

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