2018年9月23日日曜日

空飛ぶクルマ開発「法人化」済みでは? 東洋経済 冨岡耕記者に問う

最初は「有志で空飛ぶクルマを造ろう」という発想だったものの、話が大きくなるにつれてビジネス色が強まってきた。「空飛ぶクルマ開発活動”CARTIVATOR”(カーティベーター)」を取り巻く状況は、そんなところではないか。なのに、「企業人有志が手弁当で挑む」という当初のストーリーをカーティベーター側は捨て切れないし、記者もそれに合わせて記事を書いてしまった--。
横浜赤レンガ倉庫(横浜市)※写真と本文は無関係です

推測ではあるが、週刊東洋経済9月29日号に載った「産業リポート~“空飛ぶクルマ”の夢実現へ 企業人有志が手弁当で挑む」という記事には、そんな事情が透けて見えた。でなければ「空飛ぶクルマ実用化に向け『株式会社 SkyDrive』を設立する」とまで発表しているのに、カーティベーターの福澤知浩氏が「非営利団体にこだわっている」と発言する理由が理解できない。

東洋経済編集部には以下の内容で問い合わせを送った。


【週刊東洋経済への問い合わせ】

週刊東洋経済 編集部 冨岡耕様

9月29日号の「産業リポート~“空飛ぶクルマ”の夢実現へ 企業人有志が手弁当で挑む」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは有志団体カーティベーターの福澤知浩氏の発言を紹介した以下のくだりです。

『法人化しないのかとよく言われるが、カーティベーターに来るのは勤務先でも第一線で活躍している人ばかりで辞められない。だからこそ誰もが参加しやすい非営利団体にこだわっている。日本中の知恵や支援を集めたオープンネットワークの形で進めていきたい』と言い切る

ここからは「カーティベーターは法人化していないし、その意思もない」と読み取れます。しかし、カーティベーターのサイトで2018年3月22日付の「CARTIVATOR、パナソニックからの支援が決定 −2020年の世界披露を目指し、空飛ぶクルマの開発を加速−」というタイトルのニュースリリースを見ると、「日本発の空飛ぶクルマ開発活動”CARTIVATOR”を運営する一般社団法人CARTIVATOR Resource Managementは、今回新たにパナソニック株式会社(以下、パナソニック)からの支援を受けることが決定したことをお知らせします」と出てきます。

これが事実ならば「日本発の空飛ぶクルマ開発活動”CARTIVATOR”」は「一般社団法人CARTIVATOR Resource Management」という「法人」が運営しています。パナソニックから支援を受けるのもこの「一般社団法人」です。

さらに8月30日付の「株式会社SkyDrive設立のお知らせ」というニュースリリースもあります。そこには「CARTIVATORは、有志団体による活動と平行して、2020 年以降の空飛ぶクルマ実用化に向け『株式会社 SkyDrive』を設立する運びとなりました」と書いてあります。

空飛ぶクルマ開発活動”CARTIVATOR”」は「法人化」されているのではありませんか。「法人化」されていないのならば、なぜ「一般社団法人CARTIVATOR Resource Management」がパナソニックから支援を受けるのでしょうか。

しかも「空飛ぶクルマ実用化に向け」株式会社の設立を決め、採用活動もしているようです。これで「非営利団体にこだわっている」と言えるでしょうか。

記事では福澤氏のコメントを忠実に再現しているのかもしれませんが、その内容は実態と大きく乖離している可能性が高そうです。

記事中で冨岡様は「カーティベーター」に関して「23年に市販化し、27年に先進国、30年に新興国での量産を開始することも視野に入れている」と書いています。法人化の意思がなく「非営利団体にこだわっている」のに「市販化」や「量産」を「視野に入れている」ことを疑問に思わなかったのですか。

有志団体」が消えてしまったとは言いません。ただ、「カーティベーター」のプロジェクトは「法人化」され「法人」主導で進んでいると理解すべきではありませんか。

付け加えると、福澤氏の肩書にも問題があります。記事では「一般社団法人CARTIVATOR Resource Management」には全く触れていません。「有志団体「カーティベーター」(CART!VATOR)」の説明の中で「代表理事を務める31歳の福澤知浩」と紹介しています。

しかし、ニュースリリースなどでは福澤氏は「一般社団法人CARTIVATOR Resource Management」の「代表理事」となっています。一方、「CARTIVATOR」の代表としては中村翼氏の名前がニュースリリースに出ています。福澤氏を「有志団体「カーティベーター」(CART!VATOR)」の「代表理事」とした記事の説明は誤りではありませんか。

問い合わせは以上です。御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「産業リポート~“空飛ぶクルマ”の夢実現へ 企業人有志が手弁当で挑む
https://dcl.toyokeizai.net/ap/registinfo/init/toyo/2018092900


※記事の評価はD(問題あり)。冨岡耕記者への評価は暫定C(平均的)から暫定Dに引き下げる。冨岡記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東洋経済「GMS撤退戦が始まる」に足りない分析
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/10/blog-post_22.html

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