2018年9月17日月曜日

日経 脇祐三特任編集委員「核心~中東、自由なき情報化」の残念な結び

日本経済新聞の脇祐三特任編集委員も「訴えたいことがない書き手」の1人のようだ。17日の朝刊オピニオン面に載った「核心~中東、自由なき情報化」という記事を読むと、そう実感できる。「アラブ諸国」でのインターネットの普及と規制に関してあれこれと書いた上で、脇特任編集委員は以下のように結論を導いている。
道の駅 大和のオートキャンプ場(佐賀市)
          ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

情報化の進展は、中東の政治状況とどういう関係にあるのか――。日本の産官学の有力者や中東専門家が毎年集まる「中東協力現地会議」でも、近年このテーマは焦点の一つになっている。

18年8月下旬にウィーンで開いた会合では、「サウジは世界でも屈指のモバイル情報社会になってきた」「ただし国民はみんな、どこまで許容されるか自分で判断しながら、ものを言っている」といった報告が続いた。

会場での立ち話では、「サウジのムハンマド皇太子について言及した現地駐在日本人のメールが、当局から警告を受けたらしい」という話もささやかれていた。日本語のやり取りも、今は翻訳ソフトですぐ英語に変換できる。事実上の最高権力者である皇太子への批判とみなされ、チェックが入ったのかもしれない。

サウジの検察当局は9月4日、公共の秩序の妨害や、宗教的価値への皮肉とみなされるコンテンツを、SNSに投稿したりシェアしたりすると、最長5年の禁錮刑や巨額の罰金を科すと、ツイッターで国民に知らせた。ネットでの発信に、これまで以上に厳格に対応するという宣言だ。

今のサウジで皇太子批判は影を潜め、忖度(そんたく)する発言ばかりが目立つ。足元の政治情勢は安定したように見えるが、ネットの言論と政治の状況は、中長期ではどうなっていくのだろうか



◎結局「成り行きに注目」では…

サウジアラビアでネット関連の規制が強まっていると記した上で、「ネットの言論と政治の状況は、中長期ではどうなっていくのだろうか」と記事を締めている。いわゆる「成り行きが注目される」型の結びだ。かなり長い記事を読んできて、最後に「筆者には特に訴えたいことがない」と明かされると徒労感が残る。

今回の記事を簡単にまとめると「アラブ諸国ではインターネットの普及は進んでいるが、規制は厳しい。これからどうなっていくんだろう」という話だ。脇特任編集委員がそういう疑問を持つのは勝手だが、記事にするのならば「なぜこの問題を取り上げるのか」をしっかり検討してほしい。

例えば「アラブ諸国でのネット規制の強化がいずれ紛争の危機を招く危険性が高い。そうなれば日本の安全保障にも脅威になる。そのことに日本人の多くは気付いていないので、記事で取り上げよう」といった具合だ。

中東が脇特任編集委員の関心領域なのだろうが、それは読者には関係ない。「この問題をなぜ読者に届けるべきなのか」を考えずに、あれこれアラブ諸国のネット事情を書いて、行数が埋まったところで適当な結論を付けて記事を締められても困る。

「記事を通じて何を訴えたいのか。それは『特任編集委員』の自分だからこそ可能な訴えなのか」を考える習慣を脇特任編集委員には身に付けてほしい。それが無理ならば、「特任編集委員」という大仰な肩書を付けて記事を書く意味はない。


※今回取り上げた記事「核心~中東、自由なき情報化
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180917&ng=DGKKZO35384210U8A910C1TCR000


※記事の評価はD(問題あり)。脇祐三特任編集委員への評価はDを維持する。脇特任編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 脇祐三特任編集委員「核心~イスラエル 急成長の70年」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/70.html

「本社コラムニスト」の肩書に値しない日経 脇祐三氏の「核心」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2015/10/blog-post_7.html

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