2018年9月27日木曜日

日経 竹内康雄記者はトランプ氏の主張を「ご都合主義」と言うが…

27日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った「トランプ氏『米国第一』に猛進 国連演説 選挙・醜聞で強硬色/中国に譲れぬ覇権」というトップ記事に、竹内康雄記者が解説記事を付けている。
九重"夢"大吊橋(大分県九重町)
      ※写真と本文は無関係です

ご都合主義では流れ止められず トランプ氏『グローバリズムを拒絶』」との見出しを付けたその記事では、トランプ氏に関して「グローバル化を拒絶するご都合主義はだれも受け入れないだろう」と結んでいるものの、メインの記事と話が食い違っている。

メインの記事(筆者は永沢毅記者)では以下のように説明している。

【日経の記事】

トランプ氏は演説で「海外援助は米国に敬意を払う者にしかやらない」と指摘したが、裏を返せば米国に余裕がなくなった証左でもある。こうした考えを米国民の多くも受け入れ始めている。

「16年の大統領選で米国民は腐敗したグローバリズムを拒絶する選択をした。私は米国の大統領であって地球の大統領ではない」。国連総会に先立つ20日、ネバダ州での政治集会での演説で、トランプ氏がこう訴えると会場からは大きな拍手がわいた



◎それなりの「支持者」はいるのでは?

少なくとも「グローバル化を拒絶する」姿勢には、それなりの支持がありそうだ。永沢記者もそう書いている。メインの記事と解説で整合性の問題が生じないように作ってほしかった。今回の場合、竹内記者の解説記事に問題がありそうだ。

付け加えると、この解説記事では何を以って「ご都合主義」と言っているのか分かりにくい。問題のくだりを見てみよう。

【日経の記事】

トランプ氏は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、鉄鋼・アルミの輸入制限に続き自動車関税の引き上げを打ち上げた。急激にビジネスの舞台が世界に広がった今、世界で最も権力のある米大統領でもこの動きを止められない。

象徴するのが企業行動だ。トランプ氏は国際的な温暖化対策の枠組み「パリ協定」からの離脱を決めたが、米自治体や企業が独自にパリ協定を順守すると相次ぎ表明。最近ではエクソンモービルなど米国の石油大手も欧州企業などと気候変動リスクへの対策に動き始めた。トランプ氏が規制を訴える移民問題でもグーグルなどIT巨人は世界中で人材を集める。

中国の知的財産権侵害への対応など、トランプ氏の不満に理はある部分もある。しかしトランプ氏が批判する国連や世界貿易機関(WTO)は、地球規模の課題を解決する国際社会の知恵だ。米国も恩恵を受ける立場であり、米国の企業や自治体が政府の方針に反して行動するのはもっともだ。グローバル化を拒絶するご都合主義はだれも受け入れないだろう



◎そこそこ一貫しているような…

ご都合主義」とは「定見を持たず、その時、その場の都合や成り行きで、どのようにでも態度を変えること」(デジタル大辞泉)だ。トランプ氏が一貫して「グローバル化を拒絶」している場合、「ご都合主義」とは言い難い。

国連や世界貿易機関(WTO)」から「恩恵を受け」ている立場なのに、それらを「批判する」のは「ご都合主義」だと竹内記者は訴えたいのかもしれない。しかし、恩恵を与えてくれる相手を一貫して批判しているのならば、「恩知らず」かもしれないが「ご都合主義」ではない。

そもそも「グローバル化を拒絶するご都合主義」という書き方がおかしい。本当に「ご都合主義」ならば「グローバル化を拒絶したり受け入れたりするご都合主義」「選挙前になると急にグローバル化を拒絶するご都合主義」などとなるはずだ。

トランプ氏に「ご都合主義」の面がないとは言わない。ただ、今回の記事では「ご都合主義」だと納得できる材料を提示できていない。


※今回取り上げた記事「ご都合主義では流れ止められず トランプ氏『グローバリズムを拒絶』

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180927&ng=DGKKZO35797900W8A920C1EA2000


※記事の評価はD(問題あり)。竹内康雄記者への評価はDで確定とする。竹内記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「崩れ始めた中央集権」に無理がある日経「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/04/blog-post_82.html

0 件のコメント:

コメントを投稿