2017年6月23日金曜日

事実誤認がある林美子氏の「声」を紹介するFACTAの謎

FACTA7月号の「From Readers」では、ジャーナリストの林美子氏から届いた意見を紹介していた。なぜこの選択になったのか謎だ。FACTAに関する事実誤認もあるのに、反論もせずそのまま載せるようでは、編集部の良識が問われる。
小倉駅(北九州市)※写真と本文は無関係です

まずは、その全文を見ていこう。

【FACTAの記事】

本誌の想定する読者層は、政財界や官界の中堅・トップリーダー層だろう。内容も、様々な組織に深く食い込んだ、貴重な情報が少なくない。

そこに私は、逆説的だが、日本のリーダー層の一枚岩的な息苦しさを感じてしまう。ここには女性の登場人物も、女性が関心を持つようなテーマもほとんど出てこない。マイノリティーの人々、性的少数者や障害者、他民族の人々などの姿もない。

つまり、女性やマイノリティーは、相変わらず権力構造の埒外に置かれ、意思決定の現場に現れることもなく、たまに登場しても何かの「対象」としかみなされないということだ

だから、いくら現状を批判していても、閉ざされた空間の中での闘争のように私には見えてしまう。本当にいまの社会を変えようとするなら、女性やマイノリティーがもっと声を上げ、意思決定過程に進出して影響を及ぼすこと、そこで既存の権力構造の一部と化すことなく、構造を内から食い破り、外から壊すしかないのだということを、本誌を読みながら改めてかみしめている。

ジャーナリスト 林美子


◎女性の登場人物ほぼいない?

FACTAには「女性の登場人物」が「ほとんど出てこない」と林氏は言う。これは事実誤認だ。林氏も目を通しているはずの6月号を例に取ろう。
大分マリーンパレス水族館「うみたまご」(大分市)
            ※写真と本文は無関係です

『民共壊滅』都議選後は公明の天下」という記事には当然ながら「小池百合子都知事」が出てくる。「横浜市長選は『林一強』、不甲斐ない江田憲司」という記事では横浜市の「林文子市長」、「高市ずっこけ 『マイナンバーカード』 普及率8・4%」では「高市早苗総務相」が主要な「登場人物」だ。「英総選挙『楽勝』でも対EU難関」という記事でも「テリーザ・メイ英首相」が姿を見せる。しかも小池都知事、高市総務相、メイ首相は写真付きだ。

これで「女性の登場人物がほとんど出てこない」と言えるだろうか。林氏はまともな事実確認もせず誤った認識に基づいて主張を組み立てるタイプだと思える。それは、今回届いた意見を一読すればFACTA編集部の担当者もすぐに分かるはずだ。なのに、こんな意見を注記も付けずにそのまま載せる気が知れない。

FACTAに「女性の登場人物がほとんど出てこない」という前提が間違っているのだから、そこから導いた「(女性は)相変わらず権力構造の埒外に置かれ、意思決定の現場に現れることもなく、たまに登場しても何かの『対象』としかみなされないということだ」との主張にも意味はない。実際、小池都知事や高市総務相が「権力構造の埒外に置かれ」ているとは考えにくい。

ついでに言うと「(FACTAに)女性が関心を持つようなテーマもほとんど出てこない」とのくだりも引っかかった。仮に「FACTAが主に扱う政治経済の問題に女性は関心を持たない」としよう。だとしたら「意思決定過程に進出して影響を及ぼすこと」は控えてほしい。政治経済に関心を持てない人たちが政治経済に関する「意思決定過程」に大きく関与されても困る。

「政治経済に女性は関心を持っている」と言えるのならば、「(FACTAには)女性が関心を持つようなテーマもほとんど出てこない」との林氏の認識は誤りとなる。

そもそも「(FACTAに)女性が関心を持つようなテーマもほとんど出てこない」ことを、女性が「権力構造の埒外に置かれ」ているかどうかと結び付けるのに無理がある。例えばFACTAが美容やファッションの記事を載せるようになると、林氏は「女性も権力構造に入り込んできたなぁ」と感じるのだろうか。個人的には「FACTAがおかしな方向に行ってしまった」としか思えないが…。


※「読者の声」という点を考慮して、今回は記事の評価を見送る。

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