小倉井筒屋(北九州市)※写真と本文は無関係です |
特集はPART1~4に分かれているが、まともに「空飛ぶクルマ」を論じているのはPART1「グーグル創業者、エアバス、トヨタも~始まった『空中戦』ヒト、モノ、カネが殺到」ぐらいだ。PART2の「規格外のEVベンチャー、日本を猛追する部品メーカー~産業ピラミッドが崩壊、震源地は中国」では、早くも「空飛ぶクルマ」から離れてしまう。
PART3とPART4は「空飛ぶクルマ」に触れた部分が少しあるが、「空飛ぶクルマ」の話は実質的にPART1で終わっている。しかもPART1の最後の方には「水陸両用車」の事例まで出てくる。これでは辛い。
では、PART1の途中まではどうだったのか。実は結局、「空飛ぶクルマ」は一例しか出てこない。まず「空飛ぶクルマ=自動車として使える上に空も飛べる乗り物」と定義しよう。そんなに無理のある定義ではないはずだ。
記事にはまず「米ボストン郊外に本社を置くベンチャー企業のトップ・フライト・テクノロジーズ」が出てくる。
【日経ビジネスの記事】
同社は今年4月、空飛ぶクルマを想定した小型の試作機「エアボーグH810K」の飛行実験を成功させた。機体の大きさは、全長195cm、全幅160cm、全高150cm。現時点で既に15kgの物資を1時間運べる能力を持つが、ファン氏は「4~5年後には最大8人を乗せ、3時間飛ばせるようにする」と自信を見せる。
◇ ◇ ◇
記事に付いた写真を見る限り、これは「空飛ぶクルマ」の「試作機」ではない。見た目はドローンで、自動車として使えそうな感じはない。「4~5年後には最大8人を乗せ、3時間飛ばせるように」なったとしても、「空飛ぶクルマ」とは別物だ。
次は「米グーグル創業者のラリー・ペイジ氏」が出資する「キティホーク」だ。これに関しては記事でも「空飛ぶクルマというより『水面から少し浮く水中バイク』といった様相」と書いており、問題外だ。
3番目の事例は最もまともだ。
【日経ビジネスの記事】
スロバキアのベンチャー、エアロモービルは4月、20年にも市販する予定の2人乗り空飛ぶクルマの先行予約を始めた。小型飛行機のような見た目で、地上走行時は翼を折り畳む。
全長5.9m、全幅2.2m、全高1.5m。自動運転ではなく乗員が操縦するタイプで、飛び立つ際は滑走が要る。価格は120万~150万ユーロ(約1億4000万~約1億7500万円)を予定している。
◇ ◇ ◇
これは「地上走行」するのだから「空飛ぶクルマ」と言える。ただ「滑走が要る」のが難点だ。その場合、少なくとも着陸には空港を利用するのだろう。だとすると「プライベートジェット+自動車」とあまり差はない。「空飛ぶクルマ」と聞くと、駐車場からそのまま飛び立っていくようなイメージがあるが、そういうものではなさそうだ。だとすると「金持ちの道楽」以上の「衝撃」はない気がする。
高崎山自然動物園(大分市)※写真と本文は無関係です |
4番目は「ドイツの西部カールスルーエを拠点にするイーボロ」だ。この会社が開発しているのは「大型ドローン『ボロコプター2X』」。「ドローン」と言い切っている時点で「空飛ぶクルマ」ではない。
5番目は「ドイツで15年に創業した」という「リリウム・アビエーション」。これも「5人乗り電動小型飛行機」なので「空飛ぶクルマ」ではなさそう。6番目の「エアバスが開発中の空飛ぶタクシー」も、記事に付けた写真を見る限り小型飛行機に過ぎない。7番目の「米ウーバーテクノロジーズが4月下旬に発表した空飛ぶタクシー『電動VTOL(ヴィートール)』の開発計画」もやはり小型飛行機だ。
トヨタが支援する「若手有志が中心となり12年に立ち上げた空飛ぶ自動車開発プロジェクト」に至っては、「目標は20年の東京オリンピックの開会式で飛ばすこと」なのに「あと何回か奇跡が起きないと、オリンピックには間に合わない」らしい。写真を見る限りでは「クルマ」としての機能もなさそうだ。
結局、本物の「空飛ぶクルマ」は滑走が必要な「エアロモービル」のみ。駐車場から飛び立った「空飛ぶクルマ」が都会のビルの間を行き交うといった光景が現実になるのは、かなり先のことになりそうだ。この内容では「空飛ぶクルマの衝撃」など感じられない。
※特集全体の評価はC(平均的)。担当者への評価は以下の通りとする。
池松由香記者(暫定C→C)
寺岡篤志(暫定D→暫定C)
山崎良兵(暫定C)
蛯谷敏(D→C)
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