久留米成田山(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です |
今回は見出しで「『アパレルの常識』の逆を突く」と持ち上げ、本文でも「成長力と事業モデルの独自性は日本の同業他社を引き離す」「高収益の事業モデルは、『アパレルの常識』と逆方向に進むことで成立している」などと手放しで評価している。だが、記事を読んでみても、そんな大した企業には見えなかった。
まずは日経BP社に送った問い合わせから見てほしい。
【日経BP社への問い合わせ】
日経ビジネス編集部 杉原淳一様
6月26日号の「株価高騰企業~TOKYO BASE(トウキョウベース)『アパレルの常識』の逆を突く」という記事についてお尋ねします。記事では同社の「SPA(製造小売り)ブランド『ユナイテッドトウキョウ』について以下のように記しています。
「高収益の事業モデルは、『アパレルの常識』と逆方向に進むことで成立している。その代表例がユナイテッドトウキョウの原価率だ。一般的なアパレルの場合、20%程度が多いとされ、ユニクロですら30~40%程度とみられる中、同ブランドの原価率は50%もある」
これを読むと「原価率50%」は常識外れの数字だと思えますが、本当にそうでしょうか。TOKYO BASEの2017年2月期の原価率は会社全体で46%なので、「ユナイテッドトウキョウの原価率は50%」という記事中の説明と整合的です。ただ、ユニクロ事業を手掛けるファーストリテイリングの16年8月期の原価率(ユニクロ以外も含みます)は51%で、ユナイテッドトウキョウとほぼ同水準です。記事で「セレクトショップの代表格」として取り上げたユナイテッドアローズの原価率も49%です(17年3月期)。記事には出てきませんが、しまむらに至っては原価率が66%に達します(17年2月期)。
原価に何を含めるかに各社で多少のバラツキはあるとしても、原価率の高さを根拠にTOKYO BASEについて「『アパレルの常識』の逆を突く」「『アパレルの常識』と逆方向に進むことで成立している」などと説明するのは誤りではありませんか。
原価率について「ユニクロですら30~40%程度」という記述も怪しいと思えます。ユニクロ事業がファーストリテイリングの連結売上高の8割以上を占めているので、ユニクロの原価率が30~40%なのにファーストリテイリング全体で51%になる可能性はかなり低そうです。仮にジーユー事業などユニクロ以外の原価率が50%を大きく上回るのであれば、そちらの方が「アパレルの常識」を超えているのではありませんか。
質問は以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。
◇ ◇ ◇
この指摘については、杉原記者にも色々と弁明の余地がありそうだ。ただ、TOKYO BASEがこれまでの業界の常識を打ち破るような革新的な企業かと言えば、たぶん違う。あくまで推測だが、記事に出てくる同社の「谷正人CEO(最高経営責任者)」に杉原記者がうまく丸め込まれたのではないか。
「そんな谷氏がアパレルの常識の逆を突き、人材や原材料に手厚く資金を投じる姿は、不振が続く業界にひとつの活路を提示している」とまで書く杉原記者の惚れ込み方を見ると、丸め込まれていないとは信じがたい。
※問い合わせに対する回答は以下の投稿を参照してほしい。
「原価率50%」は常識の逆か? 日経ビジネスの回答
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/07/50.html
※杉原記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「個人向け国債」を誤解? 日経ビジネス杉原淳一記者(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_82.html
「個人向け国債」を誤解? 日経ビジネス杉原淳一記者(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_90.html
投資の「カモ」育てる日経ビジネス杉原淳一記者の記事(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_20.html
投資の「カモ」育てる日経ビジネス杉原淳一記者の記事(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_21.html
投資の「カモ」育てる日経ビジネス杉原淳一記者の記事(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/03/blog-post_22.html
「手数料開示」地銀に甘すぎる日経ビジネス杉原淳一記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/09/blog-post_3.html
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