2017年6月15日木曜日

「来春」を誤解? 日経「天皇退位で元号変更 焦るカレンダー業界」

15日の日本経済新聞朝刊企業2面に載った「天皇退位で元号変更 焦るカレンダー業界『年末までには公表を』」という記事に誤りだと思える記述があった。記事によると「カレンダー業界」は「2019年用カレンダー」に関して「来春の納入に間に合わなくなる」と焦っているらしい。この説明は正しいのだろうか。日経に問い合わせを送ったので、記事の当該部分も併せて見てほしい。

小倉駅(北九州市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

全国カレンダー出版協同組合連合会は14日、東京都内での記者会見で天皇陛下の退位に伴う元号変更のスケジュールを「遅くとも年末までに公表してほしい」と訴えた。2019年用のカレンダーは既にデザイン設計に着手している。遅くとも17年末に印刷を始めなければ、来春の納入が間に合わなくなるという。



【日経への問い合わせ】

朝刊企業2面の「天皇退位で元号変更 焦るカレンダー業界」という記事についてお尋ねします。記事では「2019年用のカレンダー」について「遅くとも17年末に印刷を始めなければ、来春の納入が間に合わなくなるという」と説明しています。「来春」とは「来年の春。また、来年の正月」という意味です。ここでは「来年の正月」を指すと思われます。しかし、「2019年用のカレンダー」を「来年の正月(2018年1月)」に納入するとは考えられません。

「来春=2018年春」とした場合でも、やはり納入時期が早すぎます。全国カレンダー出版協同組合連合会は記者会見で「2019年用のカレンダー」の納入時期を2018年9~12月と説明しているようです。記事中の「来春(2018年の正月または春)の納入が間に合わなくなるという」との説明は誤りではありませんか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。

御紙では読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。クオリティージャーナリズムを標榜する新聞社として、掲げた旗に恥じない行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

記者会見で「2019年カレンダーの納入は早いところだと来年春には済ませなければならない」といった話が出た可能性はある。だが、常識的には2019年用のカレンダーを前年の春に納入するとは考えにくい。

大分マリーンパレス水族館「うみたまご」(大分市)
           ※写真と本文は無関係です
可能性として高いのは、「来春2019年の正月」という勘違いだ。これだと2019年用のカレンダーを2019年になってから納入してしまう問題が残るが、「納入期限=2018年の春(3~5月頃)」と記者が判断するとは考えにくい。

ついでに言うと、「『遅くとも年末までに公表してほしい』と訴えた」とする日経の報道内容は他社と食い違っている。

他社では、「新しい元号や天皇誕生日の取り扱いは『遅くとも、来年1月までに決めて発表してほしい』と訴えています」(テレビ朝日)、「カレンダーの業界団体が会見を行い、『遅くとも来年1月までには発表してほしい』と訴えた」(日本テレビ)、「新元号などを政府が2018年1月までに決定しなければ19年のカレンダー印刷に間に合わないと訴えた」(共同通信)などと「年末」ではなく「来年1月」とする報道が目立つ。

ただ、時事通信は「『最低でも1年前には教えていただかないと、(新元号を反映したカレンダーを)作れない』と述べ、年内の新元号公表を要望した」と報じているので、日経の間違いとも言い切れないが…。


※今回取り上げた日経の記事「天皇退位で元号変更 焦るカレンダー業界 『年末までには公表を』
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170615&ng=DGKKASDZ14HTP_U7A610C1TJ2000

※記事の評価はD(問題あり)。

追記)結局、回答はなかった。

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