小倉城(北九州市)※写真と本文は無関係です |
まず、大西氏の基本的な見立てを確認しておこう。
【FACTAの記事】
そんな銀行が「死に体」の東芝に今もって融資を継続している唯一の根拠が「今年度中に半導体メモリ事業が2兆円以上で売れる」という希望的観測である。2兆円以上で売れれば債務超過は解消され、株式上場も維持される。それを当てにして「融資を継続している」というわけだ。
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つまり、「今年度中に半導体メモリ事業が2兆円以上で売れる」という事態にならなければ、債務超過は解消されず上場廃止となり東芝は経営破綻すると見ているわけだ。
これを頭に入れた上で大西氏の分析を見ていこう。
【FACTAの記事】
2100人の雇用と1兆3千億円の投資実績を無下にはできまい。サンディスク(WDが買収)時代から、東芝と二人三脚でNAND型フラッシュメモリ事業を行ってきたWDは、「東芝がWDの同意なしでメモリ事業を分社化し第三者に売却するのは違法」として国際裁判所に仲裁を申し立てた。
WDのミリガンは6月9日、東芝社長の綱川智と東京で会談した。ミリガンは産業革新機構を核とする日米連合に合流して1兆9千億円としていた買収金額を2兆円に引き上げるとともに、各国の独禁法審査で払い込みが間に合わなくなる事態を避けるため、株式取得ではなく転換社債の購入による資金支援に切り替える案を提示した。
しかし、金額では2兆2千億円を上回るとされるブロードコムやホンハイに及ばない。入札に参加せず後出しジャンケンでしかも提示額の低いWDを選ぶことの正当性を東芝が株主に説明するのは難しい情勢だ。東芝がWD以外の買い手を選べば、ミリガンは法廷で徹底抗戦するだろう。東芝が目指す18年3月までの決着は難しくなる。
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「WD(ウエスタンデジタル)を選ぶことの正当性を東芝が株主に説明するのは難しい」ので買い手はWD以外になる→「東芝がWD以外の買い手を選べば、(WDの)ミリガンは法廷で徹底抗戦する」→「東芝が目指す18年3月までの決着は難しくなる」→「今年度中に半導体メモリ事業が2兆円以上で売れる」見込みがなくなる→「経営破綻」--と大西氏は見ているのだろう。
高崎山自然動物園(大分市)※写真と本文は無関係です |
だが、「WDを選ぶことの正当性を東芝が株主に説明するのは難しい情勢だ」という説明はおかしい。大西氏の見立てでは、WD以外を選ぶとWDが法廷で徹底抗戦に出るので、今年度中の債務超過解消が難しくなり、東芝は経営破綻に至るはずだ。だったら株主への説明は簡単だ。
「買収金額がいくら高くてもブロードコムやホンハイは選べません。その場合はWDが法廷での徹底抗戦に出てくるので今年度中の債務超過解消が難しくなります。そうなれば経営破綻です。株式の価値もほぼゼロになります。それを避けるためには金額が多少低くてもWDに売るしかないんです」と説明すれば済む。
「WD以外に売ればWDは法廷での徹底抗戦に出てくる」「そうなれば今年度中の売却は難しくなる」「今年度中に2兆円以上で売れなければ経営破綻」といった前提が正しいのかどうかは分からない。だが、大西氏はそう見ているはずだ。なのになぜ「WDを選ぶことの正当性を東芝が株主に説明するのは難しい」と判断したのか。同氏にまともな分析力がないからだと言うほかない。
※記事の評価はD(問題あり)。大西康之氏への評価はF(根本的な欠陥あり)を維持する。同氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html
大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html
東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html
日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html
FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html
文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html
文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html
文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html
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