2018年1月12日金曜日

必須情報が抜け過ぎの日経「三井造船、港湾クレーン増産」

12日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「三井造船、港湾クレーン増産 生産能力1.5倍に」という記事は、必須情報が抜け過ぎている。見出しだけ見ると 「三井造船の港湾クレーン生産能力は1.5倍になる」と思ってしまう。しかし実際はもっと増えるはずだ。そして、それがどの程度かを記事は教えてくれない。
大刀洗平和記念館(福岡県筑前町)のMH2000ヘリコプター
               ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

三井造船はコンテナ貨物の積み下ろしに使う港湾クレーンの増産に乗り出す。国内工場に新設備を導入し、生産能力を1.5倍に拡大。インドネシアでは新工場を立ち上げる。東南アジアやアフリカ、南米を中心に今後、港湾クレーン需要が高まる見通し。三井造船は増産とともに短納期、付加サービスにも力を入れ、世界シェア7割の中国メーカーを切り崩す。

主力の大分事業所(大分市)では約2億円を投じ、クレーンの最終組み立て設備を導入。船から陸上にコンテナ貨物を移す際に使われる大型クレーンの生産能力を、年23台から年36台体制へと引き上げる。


◎全体でどの程度の増産?

記事を最後まで読むと「生産能力を1.5倍に拡大」するのは、あくまで「主力の大分事業所」だと分かる。「主力の」と書いているので、他にも既に生産拠点があるように感じる。仮に「大分事業所」が唯一の拠点だとしても、「インドネシアでは新工場を立ち上げる」のだから、それも含めると三井造船の生産能力はもっと増えるはずだ。しかし、インドネシアでの生産規模が不明のまま記事は終わってしまう。

「三井造船、港湾クレーン増産」という内容の記事であれば、三井造船全体でどの程度の増産になるのかは必須だ。それが欠けているのだから、明らかな欠陥と言える。

この記事の欠陥はそれだけではない。日経の“伝統芸”である「When抜き」もダブルでやっている。「大分事業所」で生産能力を増やす時期も、インドネシアで「新工場を立ち上げる」時期も謎のままだ。

さらに言うと「三井造船は増産とともに短納期、付加サービスにも力を入れ、世界シェア7割の中国メーカーを切り崩す」とのくだりも引っかかった。こういう書き方をするのならば、三井造船の現状のシェアを読者に見せてあげるべきだ。

「短納期、付加サービスにも力を入れ」と書いているのに、その具体的な内容に触れないのも感心しない。最初は「短納期、付加サービス」の詳しい中身に言及していたものの、紙面化する段階で削ったのかもしれない。その場合は「短納期、付加サービス」を記事から完全に落とした方がいい。残しておくと、読者に余計な期待を持たせかねない。

ニュース記事を書くときには「盛り込むべき必須情報は何か」をしっかり意識してほしい。今回の記事では、記者もデスクも初歩的なところで躓いてしまっている。


※今回取り上げた記事「三井造船、港湾クレーン増産 生産能力1.5倍に」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180112&ng=DGKKZO25587340R10C18A1TJ1000


※記事の評価はD(問題あり)。

2018年1月11日木曜日

雑な作りが目立つ日経「伊藤忠、アジアで病院運営拡大」

作りが雑な記事の典型と言うべきか。11日の日本経済新聞朝刊企業2面に載った「伊藤忠、アジアで病院運営拡大 インドネシア系に出資」という記事は、作り手のレベルの低さが感じられる内容だった。記事の全文は以下の通り。
古賀病院21(福岡県久留米市)
       ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

伊藤忠商事はアジアで病院運営事業を本格的に始める。インドネシア大手財閥のリッポー・グループ傘下の病院運営会社に出資する。アジアでも生活水準の向上で生活習慣病が増えている。こうした生活習慣病への対策など日本で培った経営ノウハウをリッポーに提供し、アジアでの病院展開を加速する。

リッポー傘下でシンガポールにある病院運営会社「OUEリッポーヘルスケア」の株式約25%を66億円で取得する。伊藤忠は神戸市の市民病院の経営参画で得たノウハウなどを使い、人材育成や医療機器の販売などで支援する。

グループの経営資源を生かして、給食や院内コンビニエンスストアの運営ノウハウなども提供する。

伊藤忠は2014年に中国国有企業の中国中信集団(CITIC)グループと提携している。CITICとは病院事業でも今後協業を拡大していく計画で、OUEリッポーヘルスケアとの協業で得たノウハウを生かして中国での病院展開にも弾みをつける。

◇   ◇   ◇

問題点を列挙してみる。

◎いつ「始める」?

「アジアで病院運営事業を本格的に始める」「株式約25%を66億円で取得する」と書いているが、時期に触れていない。日経の企業ニュース記事で頻繁に見られる「When抜き」だ。


◎何を以って「本格的」?

「伊藤忠商事はアジアで病院運営事業を本格的に始める」と言う場合、これまでは本格的に「病院運営事業」をやっていなくて、これから「本格的」に手掛けるはずだ。だが、「これまで」の状況が不明だ。ちなみに2016年9月20日付の「伊藤忠、中国で病院運営 CITICと合弁」という記事で日経は以下のように報じている。

【日経の記事】

伊藤忠商事は中国で病院経営に参入する。資本提携している中国最大の国有複合企業、中国中信集団(CITIC)グループと合弁会社を設立する。伊藤忠側の投資額は総額で数百億円規模とみられる。

◇   ◇   ◇

投資額で言えば中国が「数百億円規模」で、今回のインドネシアが「66億円」。ここから判断すると、中国での事業の方が「本格的」だ。

中国では合弁会社は作ったものの「病院運営事業」自体はほとんどやっていないという可能性もある。ただ、記事でその辺りに触れていないので、これまでは本格的にはやっていないかどうか判断する材料がない。

また、インドネシア企業への出資を以って「本格的に始める」とも言い難い。出資比率は「25%」で、出資後も「インドネシア大手財閥のリッポー・グループ傘下」のままだとすると、経営の主導権を握る訳でもない。伊藤忠のやることが「人材育成や医療機器の販売などで支援する」程度ならば「病院運営事業」そのものとは違う気がする。

結局、現状でどの程度の数の病院を運営しているのかも、今後それがどうなるのかも不明で、インドネシアでやろうとしているのが「病院運営事業」なのかも怪しい。やはり、日経の記事に「本格」の文字を見つけたら要注意だ。


◎見出しに整理の苦労が…

「伊藤忠、アジアで病院運営拡大」との見出しには、「本格的に始める」ではニュース記事として苦しいと判断した整理部の担当者の苦労が透けて見える。完成度の低い記事に見出しを付けなければならないのは整理として辛いだろう。

記事の粗製乱造に慣れた企業報道部のデスクは、今回のような完成度でも問題視せずに紙面化してくれるかもしれない。だが、そこに甘んじていてはプロと呼ぶにふさわしい記事は永遠に欠けない。この記事の筆者は、そのことを肝に銘じてほしい。


※今回取り上げた記事「伊藤忠、アジアで病院運営拡大 インドネシア系に出資」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180111&ng=DGKKZO25516070Q8A110C1TJ2000


※記事の評価はD(問題あり)。

日経「日本電産・永守氏、後任人事に言及」の踏み込み不足

9日の日本経済新聞朝刊企業1面に載った「日本電産・永守氏、『長男の世代に若返り』 後任人事に言及」という記事は踏み込みが足りない。記事の全文を見た上で、具体的に指摘したい。
甘木鉄道 甘木駅(福岡県朝倉市)
       ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

日本電産の永守重信会長兼社長は9日の記者会見で、後任人事について「60代の人に渡す時代じゃない。相当若返りを図る」と話した。43カ国でグループ会社を展開していることから、会長兼最高経営責任者(CEO)として関わり「リタイアするわけでなく、内部昇格させた社長兼最高執行責任者(COO)に(業務の)3~4割を分担したい」と表明した。

永守氏は「長男は46歳で、仮に(社長の座を)渡すならこれくらいの人でないとおかしい。また社長に戻ることは避けたい」と説明した。永守氏は2018年に京都学園大学の経営に乗り出すなど人材育成に取り組む。

日本電産の19年3月期の設備投資は「1500億円と過去最大の水準になる」と述べた。今後3年間は同水準の投資を続ける。日本やベトナムでロボット部品、中国では家電用の省エネモーターと車の駆動用モーターの生産能力を増強する。

25年までに総額2千億円を投資し、京都府向日市でグループ会社の本社機能や研究所を集約する方針も正式に表明した。


◎長男後継の可能性は?

まず、「後任人事」の時期に全く触れていない。これは苦しい。仮に「時期は全く分からない」と永守氏が述べているのならば、そう書くべきだ。記者会見であれば「時期についてはどうか」と質問する機会もあったのではないか。

最も気になるのは、長男への世襲を考えているかどうかだ。ここは会見で斬り込んでほしいところだが、記事からはその様子が窺えない。「長男は46歳で、仮に(社長の座を)渡すならこれくらいの人でないとおかしい」との発言からは「長男への世襲を断言しないまま、何となく世襲に向けた雰囲気作りをしていきた」との永守氏の意図を感じる。

会見に参加していたならば「COOの最有力候補は長男だと考えていいのか」といった質問をぶつけたい。日経の記者はそうした質問をしなかったのか。あるいは、質問をしたのに、その回答を記事にしなかったのか。いずれにしても記事の内容は踏み込み不足だ。

終盤の設備投資の話を削ってでも「永守氏が世襲についてどう考えているのか」に触れるべきだ。会見で永守氏が世襲に関して曖昧な物言いをした場合は、それを紹介した上で、長男のCOO就任の可能性はどの程度か、記者自身の見方でも関係者の見方でもいいので入れてほしかった。そうすれば、もっと読み応えのある記事になったはずだ。


※今回取り上げた記事「日本電産・永守氏、『長男の世代に若返り』 後任人事に言及」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180110&ng=DGKKZO25464540Z00C18A1TJ1000

※記事の評価はC(平均的)。

2018年1月10日水曜日

参入済みでも「滴滴、シェア自転車参入」と打ち出す日経の悪癖

10日の日本経済新聞朝刊アジアBiz面に載った「滴滴、シェア自転車参入 領域拡大、競争力に磨き」という記事は、日経の悪い癖が色々と出ている。まず見出しだ。「滴滴、シェア自転車参入」と打ち出した場合、ほとんどの読者は「滴滴が新たにシェア自転車事業へ参入する」と受け取るはずだ。実際は既に参入済みのようだ。記事の一部を見ていこう。
原鶴温泉(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

【北京=多部田俊輔】中国ライドシェア最大手の滴滴出行は9日、シェア自転車に本格参入すると発表した。2017年11月に経営破綻した中国シェア自転車「小藍単車(ブルーゴーゴー)」の運営を実質的に継承することでブルーゴーゴーの運営会社と合意した。自動車から自転車に事業領域を拡大し、交通のシェアエコノミー分野での競争力向上をめざす。

滴滴とブルーゴーゴーを運営する天津鹿鼎科技の合意によると、ブルーゴーゴーの利用者はシェア自転車を利用する時に支払った保証金や入金残高を滴滴が提供するライドシェアやシェア自転車のサービスのクーポン券に転換できる。

滴滴は「ofo」ブランドでシェア自転車サービスを展開している北京拝克洛克科技に出資しており、スマートフォン(スマホ)向けアプリでタクシーなどの配車やライドシェアに加え、ofoのサービスも提供している。ブルーゴーゴーの運営を実質的に継承することで、ofoとブルーゴーゴーを統合した新サービスを立ち上げる。


◎立派に「参入」しているような…

「滴滴、シェア自転車参入」という見出しに釣られて記事を読み始めると、すぐに「シェア自転車に本格参入する」と出てくる。これまでも繰り返し指摘しているように、日経の記事で「本格」の文字を見つけたら要注意だ。話を大げさにしている可能性が高い。

「滴滴は『ofo』ブランドでシェア自転車サービスを展開している北京拝克洛克科技に出資しており」「ofoのサービスも提供している」という。だったら、立派に「シェア自転車サービスを展開している」。現状では「サービスを展開している」地域がごく一部に限られるといった事情があれば「本格参入」と書くのも分かるが、そうした説明は見当たらない。

「参入」済みの事業での新たな展開を「本格参入」と表現し、見出しでは「本格」も省いて「参入」にしている。これでは「記事に騙しあり」と言われても仕方がない。

ついでに、いくつか指摘しておきたい。まずは「滴滴とブルーゴーゴーを運営する天津鹿鼎科技の合意によると」との記述について。この書き方だと「滴滴とブルーゴーゴー」を「天津鹿鼎科技」が運営しているように見える。簡単に直すならば「滴滴と、ブルーゴーゴーを運営する天津鹿鼎科技」と読点を打てばいい。

記事には「滴滴はブルーゴーゴーの資産や負債などは引き継がないとしている」との説明があるが、一方で「ブルーゴーゴーの利用者はシェア自転車を利用する時に支払った保証金や入金残高を滴滴が提供するライドシェアやシェア自転車のサービスのクーポン券に転換できる」とも書いている。

「保証金」も「負債」なので、「保証金」を「クーポン券に転換できる」のならば、実質的に「負債」を引き継いでいるように思える。また、ブルーゴーゴーの「運営を実質的に継承する」のに、ブルーゴーゴーの「資産」に当たる自転車は全く「引き継がない」のかとの疑問も残る。「資産や負債などは引き継がない」との説明が正しければ、事業に必要な自転車は滴滴が全て新たに用意するのだろうが…。


※今回取り上げた記事「滴滴、シェア自転車参入 領域拡大、競争力に磨き」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180110&ng=DGKKZO25464820Z00C18A1FFE000


※記事の評価はD(問題あり)。多部田俊輔記者への評価も暫定でDとする。

2018年1月9日火曜日

「瀬戸際に立つアパレル店舗」を描けていない東洋経済の記事

週刊東洋経済1月13日号に載った「ZOZO・アマゾンが攻勢 瀬戸際に立つアパレル店舗」という記事は、それなりによく書けている。ただ、タイトルと中身が合っていない。「ZOZO・アマゾンが攻勢 瀬戸際に立つアパレル店舗」との見出しからは「瀬戸際に立つアパレル店舗」の話が柱だと思ってしまうが、基本的に「ファッションEC市場」の分析記事になっている。
平塚川添遺跡(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

「アパレル店舗」に触れた記事の終盤を見てみよう。

【東洋経済の記事】

一昔前まで、はやりの服は駅ビルや百貨店、SCで買うのが定番だった。が、ファッションEC旋風が巻き起こる中、実店舗中心の既存勢力への逆風は強まっている。

「ネットのほうが安いし、自分に合った小さいサイズは店頭にないことが多い。店舗で購入するのは、親と買い物するときくらい」と、都内で働く30代の女性は話す。小誌が実施した衣服の購買に関するアンケート調査でも、「ネットは商品が豊富で安い」「自分が欲しい服は店頭にないことが多い」との声が多数上がった。

モノは買わない。それでも滞在は楽しむ。消費者の目的は変われども、既存勢力が創り上げてきた商業空間は、人が集う場として存在価値を残している。その強みをネット時代にどう発揮するか。生き残りを懸けた正念場に差しかかっている。


◎これで「瀬戸際」?

「実店舗中心の既存勢力への逆風は強まっている」のは確かだろう。だが、それだけでは「瀬戸際」とは言い難い。そもそも「アパレル店舗」に関して売り上げなどのデータを示していないので、「瀬戸際に立つ」と言えるのか判断できない。「既存勢力が創り上げてきた商業空間は、人が集う場として存在価値を残している」のであれば、「瀬戸際」までは追い詰められていないとも感じる。

記事に大きな問題があるわけではないので、見出しを変えた方がいいだろう。


※今回取り上げた記事「ZOZO・アマゾンが攻勢 瀬戸際に立つアパレル店舗」

※記事の評価はC(平均的)。真城愛弓記者への評価も暫定でCとする。

2018年1月8日月曜日

根拠なしに結論を導く日経「パンゲアの扉」のキーワード解説

8日の日本経済新聞朝刊国際面に載った「パンゲアの扉~キーワード ジニ係数 IT革命、格差広げる?」という記事は、話の流れが結論と合っていない。記事の全文は以下の通り。
新鳥栖駅(佐賀県鳥栖市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

グローバリゼーションは富を生む一方で、再配分がうまく機能しなければ、格差も引き起こす。

政府の2017年の通商白書によると、税金や社会保障制度で低所得層などに所得を再分配した後の世帯所得の格差を示す「ジニ係数」は、日本を除く先進国で上昇傾向にある。係数は0から1の間で1に近づくほど格差が大きいことを示す。

経済協力開発機構(OECD)の加盟国の平均は10年の0.315から14年に0.318に上がった。15年に米国は0.39、英国は0.36で日本より高い水準にある。

通商白書では格差の主な要因としてIT(情報技術)の革新を指摘する。ITがカバーする仕事の分野が広がり、知識に乏しい人が創造的な仕事をできなくなったり、雇用自体が失われたりする事例が増えた。格差の解消には国民のスキルを底上げする必要がある。

白書は貿易は格差を生む要因ではなく縮小させていると主張する。貿易額の対国内総生産(GDP)比が高い国ほどジニ係数が低い傾向がある。

日本は格差や反グローバル化の動きは米欧ほど目立たない。京大の柴山桂太准教授は「日本でも社会的弱者の不満が糾合され、反グローバル化の機運が高まるのは時間の問題だ」と語る。


◎「時間の問題」と言える根拠は?

記事の結びは「京大の柴山桂太准教授は『日本でも社会的弱者の不満が糾合され、反グローバル化の機運が高まるのは時間の問題だ』と語る」となっている。だったら「日本でも反グローバル化の機運が高まるのは時間の問題だ」と思える材料が欲しい。記事で提示しているのは、むしろ逆の材料だ。

「税金や社会保障制度で低所得層などに所得を再分配した後の世帯所得の格差を示す『ジニ係数』は、日本を除く先進国で上昇傾向にある」のであれば、日本では低下か横ばいのはずだ。「15年に米国は0.39、英国は0.36で日本より高い水準にある」とも書いているので、水準自体もそれほど高くない。

さらに「日本は格差や反グローバル化の動きは米欧ほど目立たない」のであれば、なぜ「反グローバル化の機運が高まるのは時間の問題」なのか理解できない。「日本では社会的弱者の不満が糾合されて反グローバル化の機運が高まる可能性は低い」とのコメントで記事を締めた方がしっくり来る。

結論に説得力を持たせる記事作りを心掛けてほしい。


※今回取り上げた記事「パンゲアの扉~キーワード ジニ係数 IT革命、格差広げる?」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180108&ng=DGKKZO25430110Y8A100C1FF8000


※記事の評価はD(問題あり)。今回の連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。

冒頭から不安を感じた日経 正月1面企画「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_2.html

アルガンオイルも1次産品では? 日経「パンゲアの扉」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_4.html

スリランカは東南アジア? 日経「パンゲアの扉」の誤り
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/01/blog-post_28.html

2018年1月7日日曜日

週刊ダイヤモンドが無視した13の問い合わせ(2017年)

「確率」とすべきところを「確立」と書いてしまった--。非常に瑣末な話だ。読者から間違い指摘を受けたら、間違いを認めて訂正すれば済む。なのに今の週刊ダイヤモンドにはそれが難しい。今回は筆者からの要請を受けて、嫌々ながら訂正を出したのだろう。だが、回答は今回もない。そこで新年の挨拶も兼ねて深澤献編集長にメールを送ってみた。ついでに、2017年に同誌が無視した問い合わせも再送している。
九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県鳥栖市)
         ※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドへのメール】

週刊ダイヤモンド編集長 深澤献様

明けましておめでとうございます。御誌を定期購読している鹿毛と申します。

1月13日号に「訂正とお詫び」が出ていました。その内容は以下の通りです。

本誌2017年12月23日号134ページの、「常識的な答えは、『選択を変えても変えなくても勝てる確立は同じ』」について、「常識的な答えは、『選択を変えても変えなくても勝てる確率は同じ』」に訂正します。


私は昨年12月18日にこの件で間違いを指摘し、訂正記事の掲載を求めました。しかし、御誌からの回答はなく、次号に訂正も出ませんでした。そこで筆者の野口悠紀雄氏に問い合わせをして「編集部に訂正掲載を依頼します」との回答を得ました。

今回、「訂正とお詫び」を掲載したのは、野口氏からの依頼があったからでしょう。それを無視しなかったのは評価できます。しかし、私の問い合わせには依然として何の回答もしていません。

訂正に踏み切ったのですから、誤りがあったことには深澤様も異論がないはずです。なのになぜ、読者からの間違い指摘は無視したのですか。そして、訂正記事を載せた段階でも回答をしない理由は何ですか。

御誌では読者からの間違い指摘を無視する対応が当たり前になっています。今回は「読者からの指摘は無視しておけばいいけど、筆者に言われたら仕方がないか…」といった判断が働いたのでしょう。しかし、間違いは誰に指摘されようが間違いです。気付いた段階で訂正に動き、指摘してくれた人には誤りがあった旨を伝えるのが当然です。

新年ということもあり、御誌が2017年に無視した間違い指摘を再度送っておきます。丁寧な言葉遣いで、きちんと根拠を示して間違いを指摘しているつもりです。それを無視することに、どんな正しさがあるのでしょうか。

2018年こそ御誌が良い方向に変わっていくように祈念しています。そして、進むべき道を決めるのは、おそらく深澤様です。「どちらに進むのがメディアとして正しい選択なのか」を年の初めにもう一度考えてみてください。


◆問い合わせ~その1

2月11日号の特集「子会社『族』のリアル」に出てくる66ページの図についてお尋ねします。図の中では「ジェイフォン」から「ソフトバンク」にオレンジ色の矢印が出ており、その矢印の意味は「合併・売却」となっています。

ここから判断すると、ジェイフォンはソフトバンクに売却されたか、ソフトバンクと合併したかのどちらかです。しかし、いずれも実現していないのではありませんか。ジェイフォンは英ボーダフォンの傘下に入って、日本でもボーダフォンとなりました。ソフトバンクは2006年にボーダフォンの日本法人を買収していますが、ジェイフォンを買ったわけではありません。

図の表記は誤りだと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その2

3月25日号の特集「国鉄 vs JR 民営化30年の功罪」の中の「トップを直撃~ 島田 修(JR北海道社長)」という記事についてお尋ねします。この記事で島田社長は以下のように語っています。「当社は約200億円の経常赤字で、加えて、減価償却費を上回る100億円の設備投資をしています。何も手を打たなければ、毎年300億円ずつのキャッシュアウトを伴う」。この発言には2つの疑問が浮かびます。

まず、JR北海道にとって「100億円の設備投資」は「減価償却費を上回る」ものでしょうか。「約200億円の経常赤字」との発言から判断して、2017年3月期の単独決算(経常損益で235億円の赤字予想)をベースにしているのでしょう。同社の発表資料によると、17年3月期の減価償却費は247億円の見込みで、設備投資額の100億円を大きく上回っています。

次に気になったのが「毎年300億円ずつのキャッシュアウトを伴う」との発言です。島田社長の言い分に合わせて、ここでは減価償却費が90億円で設備投資額を下回ると仮定しましょう。経常赤字は200億円ですが、キャッシュアウトを伴わない90億円の減価償却費を考慮するとキャッシュアウトは110億円程度になります(特別損益は考慮しません)。これに設備投資額の100億円を加えてもキャッシュアウトは210億円にとどまります。減価償却費が本当は「247億円」だとすれば、キャッシュアウトは100億円を大きく下回ります。

「減価償却費を上回る100億円の設備投資をしています」「何も手を打たなければ、毎年300億円ずつのキャッシュアウトを伴う」という発言に関しては誤りと考えてよいのでしょうか。記事に問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。誤りであれば訂正記事の掲載もお願いします。


◆問い合わせ~その3

3月25日号の特集「国鉄 vs JR 民営化30年の功罪」の中の「トップを直撃~ 島田 修(JR北海道社長)」という記事について、3月20日に間違い指摘をさせていただきました。

記事中で「当社は約200億円の経常赤字で、加えて、減価償却費を上回る100億円の設備投資をしています。何も手を打たなければ、毎年300億円ずつのキャッシュアウトを伴う」と島田社長は発言しています。しかし、2017年3月期の同社の減価償却費見込みは「247億円」なので、「減価償却費を上回る100億円の設備投資をしています」という記事中の説明と矛盾が生じます。

この件に関してJR北海道から回答を得ました。それによると「減価償却費を上回る100億円の設備投資をしています」という部分は、「減価償却費を100億円上回る設備投資をしています」とするのが正しいそうです。JR北海道の見解に問題がなければ、記事の記述は誤りとなります。御誌としてはどのようにお考えでしょうか。

「読者からの間違い指摘など無視しておけばよい」という方針を御誌が貫いていることは十分に理解しています。しかし、今回のような件で放置を続けてよいのでしょうか。島田社長が言い間違えたのか、御誌の記者が聞き間違えたのかは分かりません。しかし、JR北海道の発表資料に当たれば減価償却費は容易に確認できます。間違いの責任は基本的に御誌にあるはずです。

間違い自体は私も含めて誰にもあるものなので、厳しく責めるつもりはありません。しかし、説明責任はきちんと果たすべきです。購読料を払ってくれている読者が間違いを指摘してくれて、実際に記事の説明が誤りだった。その時に、読者に対して無視で済ませるメディアにどんな正しさがあるのでしょうか。

雑誌編集局・局長の鎌塚様、編集長の田中様の責任は特に重大です。メディアとしての説明責任を果たさない悪しき伝統をダイヤモンド編集部に根付かせ、後に続く世代の手まで汚してしまうのです。その罪深さに改めて思いを巡らせてください。


◆問い合わせ~その4

5月20日号の特集「関西流企業の逆襲」についてお尋ねします。記事では「京阪神の3都人」に共通する気質として「行列に並ばない」ことを挙げ、以下のように記しています。

「イラチの大阪人が並んで待つなんてことは考えられないし、京都人は人まねが嫌いなので、行列のある場所には意地でも行かない。神戸人は選択肢をたくさん持っているので、わざわざ行列のある店を選ばない」

一方、別の記事では京都の現状について「四条河原町という京都一の繁華街に、大行列ができる抹茶専門店がある。東京の企業が『京都』を売りにして海外展開し成功した業態を京都に逆輸入した。インバウンド客だけでなく、今や京都人も列を成す繁盛ぶりだ」と説明しています。

京都人は「行列のある場所には意地でも行かない」はずなのに、四条河原町の抹茶専門店が「今や京都人も列を成す繁盛ぶり」なのは解せません。「京阪神の3都人」が「行列に並ばない」というのは間違いではありませんか。個人的な経験で恐縮ですが、過去には大阪市内でも食べ物屋に並ぶ光景が当たり前に見られました。その全てが大阪外の人とは考えにくい気がします。

仮に「京阪神の3都人」が「行列に並ばない」との説明が正しいとすれば、京都の抹茶専門店に「京都人も列を成す」のは、どう理解すればよいのでしょうか。納得できる回答をお願いします。


◆問い合わせ~その5

櫻井よしこ様 週刊ダイヤモンド編集部担当者様

櫻井様が9月2日号に寄稿された「オピニオン縦横無尽~反安倍政権の偏向報道続く大手メディア 注目される沖縄ローカル紙の本島進出」という記事についてお尋ねします。

記事では「知事を三期一二年務めた加戸氏は国家戦略特区制度の下で獣医学部新設を申請した加計学園の問題の、当事者である。氏は国会閉会中審査で三度、参考人として証言し、同問題に安倍晋三首相が介入していなかったこと、介入の余地は全くなかったことを、申請経過を辿りながら明快にした」と述べた上で、「地上波テレビ局のニュース番組やワイドショー番組、『産経』『読売』を除く大手新聞、とりわけ『朝日』『毎日』『東京』などは、氏を徹底的に無視した」と断定しています。

これを信じれば、前愛媛県知事の加戸守行氏が国会閉会中審査の場で加計学園の問題に関して「安倍晋三首相が介入していなかった」と訴えたことを毎日新聞は一度も報じていないはずです。

しかし「岡山・加計学園~獣医学部新設問題 閉会中審査 『記憶にない』20回 政府側、説得力欠く」(7月25日 大阪朝刊)という記事では「『首相にぬれぎぬ』 前愛媛知事、正当性訴え」という中見出しを立てて以下のように記しています。

<毎日の記事>

24日の衆院予算委には、愛媛県の加戸守行前知事も出席し、手続きの正当性を訴えた。加戸氏は「首相にあらぬぬれぎぬがかけられている」と切り出し、同県が長年、学園都市構想実現のために誘致に取り組み、手を挙げてくれたのが加計学園だったと力説した。

東京から乗り込んで来た獣医師会の方々が学園の悪口をぼろくそ言うから、『あなたのところで(学部を)作っていただけるならいつでも喜んでお受けします』と言ったが、なしのつぶて」と皮肉った。

◇  ◇  ◇

これでも毎日に関して「加戸氏を徹底的に無視した」と言えるでしょうか。上記の記事を見る限り、「きちんと加戸氏の言い分を伝えている」と評価してもいい内容です。

報道量は読売や産経より少ないのかもしれません。しかし「徹底的に無視」しているとは思えません。少なくとも毎日に関して「氏を徹底的に無視した」との説明は誤りではありませんか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その6

9月9日号の「Inside~産ガス国に反旗を翻した日韓『LNG取引』主導権争いが勃発」という記事についてお尋ねします。

記事には「2008年以降、天然ガスの価格は米国・欧州で下がる一方なのに、原油価格と連動する日本では高止まりしている」との記述があります。08年と言えば、WTI相場が1バレル当たり147ドルの最高値を付けた年です。最近はこの高値を100ドルほど下回る水準で推移しています。日本の天然ガス価格が「原油価格と連動する」のならば、「2008年以降」に「高止まりしている」のは不可解です。

新電力ネットによると、08年以降に日本の天然ガス価格は大きく下げているようです。08年は100万BTU当たり11.59ドルでしたが、17年6月には5.52ドルと半値以下になっています。年次の推移を見ると、09年に大きく下げた後、12年に18.15ドルまで上げ、その後は下げ基調が続く展開になっています。「高止まり」とは「高水準で横ばい」という意味ですが、実際にはかなり激しく上下しています。

「米国・欧州で下がる一方」との説明にも問題がありそうです。例えば欧州の場合、10年の8.22ドルが12年には11.98ドルまで上昇しており「下がる一方」とは言えません。17年6月の価格を前年同月比で見ても、米国は14%、欧州は23%のプラスです。

08年以降の天然ガス価格について「米国・欧州で下がる一方」なのに「日本では高止まりしている」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題ないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その7

9月16日号の特集「1982~2017 35年の偏差値と就職実績で迫る大学序列」についてお尋ねします。Part 5の「『東大』よりも医学部! エリート街道の変貌」という記事に「全国の大学の中で最も高い偏差値をたたき出しているのは今も30年前も、東京大学の理科三類である」との記述があります。

しかし「特別付録~大学35年間の歴史を凝縮 181大学1122学部『全』偏差値」という表を見ると、30年前(1987年)の偏差値(ベネッセコーポレーション)は東京大学で言えば文1が81、文2が80で理3の79を上回っています。2017年でも文1は80で理3の79より上です。

17年の私立大学を見ると、慶応義塾大学に法(83)、経済(81)、早稲田大学に法(80)、政治経済(82)、商(80)、国際教養(80)と東大理3の79を上回る偏差値がかなりあります。

文系と理系、私立と国立などを単純に比較できないのは分かりますし、東大理3が難易度では「今も30年前も」最も高いのかもしれません。しかし「特別付録」を見る限り「全国の大学の中で最も高い偏差値をたたき出しているのは今も30年前も、東京大学の理科三類である」とは言えません。

記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題ないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その8

9月23日号の特集「株&投信 超理解」に出てくる「つみたてNISA~信託報酬『最安値』&新商品が続々登場 “お墨付き”投信を徹底分析」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下の記述です。

「三井住友アセットマネジメントは、TOPIXと海外株のインデックスファンドに連動した商品として、確定拠出年金(DC)用のファンドをつみたてNISA用にシフト。しかも前者は、信託報酬を0.205%から0.173%に引き下げることで、TOPIX連動型としては最安の信託報酬となる」

これを信じれば「つみたてNISAの対象となる投資信託120本」の中の「TOPIX連動型」で「最安の信託報酬となる」のは、三井住友アセットマネジメントの商品のはずです(全ての投信の中で最安という意味かもしれません)。しかし、特集の中の「仮認定されたつみたてNISA対象の投信&ETF120銘柄」という表を見ると、「TOPIX連動型」で「最安の信託報酬」となる投信は「One ETFトピックス」(アセマネOne)の0.084%です。ちなみに「TOPIX連動型上場投資信託」(野村アセマネ)も0.118%で、記事中で「最安」とした「0.173%」を下回っています。

これら2本はETFですが、今回の記事ではETFを含む「つみたてNISAの対象となる投資信託120本」について論じているはずです。記事中にETFを除外して「最安」を判断したとの説明も見当たりません。

「信託報酬を0.205%から0.173%に引き下げることで、TOPIX連動型としては最安の信託報酬となる」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その9

「つみたてNISA~信託報酬『最安値』&新商品が続々登場」という記事についてお尋ねします。

記事には「つみたてNISAの対象となる投資信託120本」について、「さらに分類してみると、日経平均株価に連動する投信が11本、TOPIX(東証株価指数)連動が17本という具合だ」との記述があります。記事中の「つみたてNISA“仮”対象ファンドの傾向」という表でも、対象指数「TOPIX」は「17本」となっています。この「17本」という数字は合っているのでしょうか。

特集の中の「仮認定されたつみたてNISA対象の投信&ETF120銘柄」という表を見ると、連動対象が「TOPIX」となっているのは「インデックス型投信」に12本、「ETF」に2本あるだけで、合計でも「14本」にしかなりません。

「つみたてNISA“仮”対象ファンドの傾向」という表では「TOPIX」の数字が違っているようなのに、表の8項目を合計すると120本で帳尻が合っています。なので、他にも間違った数値があるのではと感じて調べてみました。その結果、さらに3項目で違う数字が出ました。

まず「その他日本(10本)」です。インデックス型投信の「JPX400など」、アクティブ型投信の「国内」、ETFの「JPX日経インデックス400」を合計すると12本になります。

次に「その他外国(6本)」です。インデックス型投信の「外国株」、アクティブ型投信の「国際」を合計すると9本になります。

最後に投資対象「バランス」の「資産複合(50本)」です。これは「バランス型」(アクティブ型の中の「バランス型」含む)、「資産均等割」「ターゲットデート」を合計すると48本です。

「つみたてNISA“仮”対象ファンドの傾向」という表では、「TOPIX」と「資産複合」が実際よりも5本多く、「その他日本」と「その他外国」が実際より5本少なくなっているというのが、数えてみた結果です。少なくとも「TOPIX」は17本に届かないはずです。

「TOPIX(東証株価指数)連動が17本」との説明や、「つみたてNISA“仮”対象ファンドの傾向」という表の数値は誤りと考えてよいのでしょうか(「仮認定されたつみたてNISA対象の投信&ETF120銘柄」という表が誤りの可能性もあります)。全て正しいとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その10

9月23日号の特集「株&投信 超理解」に出てくる「初級者向け~資産形成の具体的なプロセスを知る 長期運用の実践の基本とは」という記事についてお尋ねします。記事には以下の記述があります。

「利回りの目標が決まれば、次はリスクに見合ったポートフォリオ(資産構成)を考える番だ。国内債券から新興国株式までの基本6資産のリスク・リターンの関係と、投資のポートフォリオの例を左ページ上図に示した。モーニングスターの朝倉智也社長は『運用の成否の8~9割はポートフォリオで決まる』との考えを示す。ついつい先に個々の商品選びに目が行きがちだが、資産ごとの比率を決めた上で『日本株なら投信A、外国株は投信B』といった具合に資金を振り分けるのが王道ということだ」

気になったのは「ポートフォリオ」という言葉の使い方です。記事では「資産ごとの比率」「資産構成」を「ポートフォリオ」と称しています。しかし、この場合は「アセットアロケーション」とすべきではありませんか。「ポートフォリオ」は「個々の商品選び」に当てはまる言葉だと思えます。

SMBC日興証券の「初めてでもわかりやすい用語集」によると、「アセットアロケーションとは、運用する資金を国内外の株や債券などにどのような割合で投資するのかを決めることをいいます」。

「ポートフォリオ」については「金融商品の組み合わせのことで、特に具体的な運用商品の詳細な組み合わせを指します。『ポートフォリオを組む』ということは、どのような投資信託を購入しようか、株はどの銘柄で何株ほど持つか、などの検討をするという意味です」と解説しています。

さらに、朝倉智也氏が社長を務めるモーニングスターの2012年6月27日付の記事には「資産運用において、アセットアロケーション(資産配分)の重要性は高く、『運用成果の8割以上はアセットアロケーションで決まる』とよく言われている」との記述も見られます。

こうした点を考慮すると、記事中の「ポートフォリオ」は「アセットアロケーション」の誤りだと思えますが、いかがでしょうか。「ポートフォリオ」で問題ないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その11

9月23日号の特集「株&投信 超理解」に出てくる「不透明相場にも負けない 長期のコツコツ積み立て」という記事についてお尋ねします。記事には「各国の家計金融資産の推移」というグラフが付いていて、日米英の「運用リターンによる家計金融資産の推移」「家計金融資産の推移」を表しています。日本で見ると1995年との比較で前者が1.47倍で後者が1.15倍です。米英でも前者の数値が後者を上回っています。これは実際と逆ではありませんか。

「出所:金融庁」となっているので同庁の「説明資料(平成29年2月3日)」を見ると、やはり御誌の表記とは逆になっています。日本は「運用リターンによる家計金融資産の推移」が1.15倍で「家計金融資産の推移」が1.47倍です。

この資料には「我が国の家計金融資産の推移」というグラフも付いています。それによると、95年に1200兆円前後だった「家計金融資産全体」が15年に1740兆円へ膨らんでいます。伸びは「1.47倍」で問題ありません。しかし、御誌のグラフでは「1.15倍」になっています。

記事に付けたグラフの注記は誤りと考えてよいのでしょうか。問題ないとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その12

10月14日号の「World Scope『from 米国』北朝鮮問題の深刻化で浮上する開戦シナリオ 1937年不況の再来?」という記事についてお尋ねします。記事中に「37年不況で世界経済が縮小すると、『自国が第一』とばかりに世界経済はブロック化した」との記述があります。しかし「37年不況で世界経済が縮小」する以前に「世界経済はブロック化」していたのではありませんか。

例えば大辞林では、スターリングブロックの始まりとされる「オタワ協定」について「1932年、世界恐慌に対処するため、イギリス連邦がオタワで開いた経済会議で結んだ協定。連邦内の特恵関税と域外への保護関税を強め、市場の安定化をはかったが、伝統的自由貿易主義が放棄され、世界経済のブロック化を促進した」と説明しています。

米国のブロック経済化の端緒となった「スムート・ホーリー法」については毎日新聞に以下の解説があります。「1929年からの大恐慌を受けて、共和党のフーバー米大統領が翌年、国内産業を保護する目的で、輸入品への高関税政策を打ち出した根拠法。提案した2人の議員の名からそう呼ばれている。結果的には、世界恐慌は深刻化し、ブロック経済化が進み、第二次世界大戦の要因になったとされる」

こうした資料の内容が正しければ、米国や英国では1930年代前半にはブロック経済化していたことになります。「37年不況」をきっかけに「世界経済はブロック化した」という記事の説明は誤りではありませんか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。


◆問い合わせ~その13

12月23日号「『超』整理日記 Number 886~神の問い掛けにこそ答える価値がある」という記事の中の「常識的な答えは、『選択を変えても変えなくても勝てる確立は同じ』ということだ」とのくだりに出てくる「確立」は「確率」の誤りではありませんか。誤りの場合は次号に訂正を出してください。回答をお願いします。

--御誌が無視した問い合わせは以上です。改めて回答を求めます。


※深澤献編集長への評価はE(大いに問題あり)とする。F(根本的な欠陥あり)とすることも検討したが、訂正記事を載せた点を評価してEに留めた。