2019年1月5日土曜日

説明が成立してない日経1面「新幸福論 Tech2050(4)」

5日の日本経済新聞朝刊1面に載った「新幸福論 Tech2050(4)資源制約からの解放」という記事の内容は苦しかった。4回目ともなるとネタも尽きてきたのか強引な説明が目立つ。記事の終盤を見ながら問題点を指摘したい。
田島神社(佐賀県唐津市)
      ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

現代に入っても穀物メジャーや産油国と手を結ぶ石油メジャーといった勢力が富を蓄積。今も関税や地域紛争など様々な形で資源を巡る攻防が続く。世界経済の勝者は資源を持つ者だ


◎日本は敗者?

世界経済の勝者は資源を持つ者だ」とすれば、日本が「勝者」になれる可能性はほぼない。原油生産はわずかで食料自給率も低い。しかしGDPでは世界2位の座を長く維持し、今でも3位だ。「世界経済の勝者は資源を持つ者だ」とは言い切れないことを日本は証明しているのではないか。

シンガポールも同じだ。シンガポールは「世界経済の勝者」ではないのか。それとも「資源を持つ者」なのか。個人的には、「資源」は乏しいのに「世界経済の勝者」になった国だと思えるが…。

ついでに言うと「穀物メジャーや産油国と手を結ぶ石油メジャーといった勢力が富を蓄積」という書き方は上手くない。「『穀物メジャーや産油国』と手を結ぶ石油メジャー」と理解しそうになる。「穀物メジャーや」の後に読点を打つべきだ。

記事の続きを見ていこう。

【日経の記事】

食やエネルギーを誰もが作れる時代が到来すればどうなるか。京都大学の広井良典教授は「勢力図が変わるゲームチェンジが起こりうる」とみる。

その兆しはある。地中海の小国、マルタ共和国は仮想通貨の取引量で世界トップ級に躍り出た。規制緩和で先駆ける同国に世界中の事業者が注目する。

人口は約40万人で天然資源に乏しく、穀物自給率も1割ほど。だが「小国」であることは不利にならない。むしろ大国より既存産業の利害を気にせず動ける身軽さが武器になる。


◎説明になってる?

マルタ」の話は説明として成立していない。「食やエネルギーを誰もが作れる」ようになることとの関連が見えないからだ。

伐株山園地(大分県玖珠町)※写真と本文は無関係です
むしろ「食やエネルギーを誰もが作れる時代が到来」しなくても「小国」による「ゲームチェンジが起こりうる」事例になっている。

最後の段落も見ておこう。

【日経の記事】

技術の進化は「持つ国」と「持たざる国」の境界線を崩し、持たざる国に逆襲の機会をもたらす。食とエネルギーの充足が平等になったとき、豊かさを生む力は社会や生活の可能性を広げる知のあり方に移る。



◎「幸福論」になってる?

初回から気になっていたのだが、4回目まで読んで懸念は確信に変わった。「新幸福論」というタイトルなのに連載の担当者らは「幸福論」をしっかり展開する気はなさそうだ。

今回も「食とエネルギーの充足が平等になったとき、豊かさを生む力は社会や生活の可能性を広げる知のあり方に移る」と記事を締めているが、「幸福とは何か」を論じているわけではない。今回の連載は「新未来論」とでもした方が内容と合っている。

なぜ企画段階で「新幸福論」としたのか謎だ。このタイトルを選んだ以上は、毎回しっかりと「幸福」を論じてほしい。


※今回取り上げた記事「新幸福論 Tech2050(4)資源制約からの解放
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190105&ng=DGKKZO39583170Q8A231C1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

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