2019年1月24日木曜日

データの裏付け乏しい日経1面トップ「中国ハイテク生産急減」

24日の日本経済新聞朝刊1面トップを飾った「中国ハイテク生産急減~部品・装置、対中輸出ブレーキ」という記事を最後まで読んでも 「中国ハイテク生産」がどの程度の「急減」となっているのか不明だ。「ハイテク生産」が全体として減少していると判断できるデータも見当たらない。これでは困る。
山地獄(大分県別府市)※写真と本文は無関係


最初の段落では以下のように説明してる。

【日経の記事】

中国でハイテク製品の生産が急減している。日本からの半導体製造装置の輸出は2018年12月に前年同月比34%減と大幅に落ち込んだ。韓国からの半導体輸出も減少が鮮明だ。ハイテク製品の「世界の工場」である中国での生産減は、世界の半導体市場(総合2面きょうのことば)やハイテク景気の冷え込みを示す。関連する企業の業績は悪化しており、グローバル経済の重荷となる恐れがある。



◎状況証拠にはなっても…

日本からの半導体製造装置の輸出は2018年12月に前年同月比34%減と大幅に落ち込んだ。韓国からの半導体輸出も減少が鮮明だ」としても「中国でハイテク製品の生産が急減している」とは限らない。「半導体製造装置」を日本以外から買っているのかもしれない。「半導体製造装置」なしで製造できる「ハイテク製品」の比率が高まっている可能性も残る。

中国でハイテク製品の生産が急減している」と冒頭で打ち出したのだから、「中国」の「ハイテク製品の生産」に関する直接的なデータが欲しい。記事の続きを見ていこう。

【日経の記事】

中国のハイテク景気の変調は日本を含む各国の統計に表れている。日本から中国への半導体製造装置の輸出額は18年12月に692億円と直近ピークの8月(1274億円)の半分程度の水準となった。12月は韓国の半導体輸出(香港含む)も前年同月比で19%減り、台湾から中国への輸出総額(同)も9.9%減少した。ハイテクが主力の台湾は輸出の4割が中国向けだ。

スマートフォン(スマホ)製造などに使う工作機械も中国向けの落ち込みが大きい。日本工作機械工業会は23日、中国向け工作機械の受注額が18年12月に56.4%減少したと発表した。マイナスは10カ月連続。「底だとは思っていない」と飯村幸生会長(東芝機械会長)は述べた。

スマホは世界的な市場の飽和が指摘されているうえ、中国では景気減速で需要が低迷している面もある。実際、中国でのスマホの生産量は18年9月からマイナスが続き、12月には10%近く減少。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業はスマホ製造の最大拠点である中国河南省鄭州の工場で従業員を5万人規模で減らした。



◎ようやく出てきたが…

ようやく「中国」での「ハイテク製品の生産」に関する具体的な数字が出てきた。「中国でのスマホの生産量は18年9月からマイナスが続き、12月には10%近く減少」と書いている。しかし「ハイテク製品の生産」が全体としてどうなっているかは依然として謎だ。

続きを一気に見ていく。

【日経の記事】

米IT(情報技術)大手などによるデータセンターの建設ラッシュが一巡した影響もある。データセンターに必要なメモリーは中国にも生産拠点が多い。米グーグル、アップル、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、フェイスブックの5社による設備投資は18年4~6月期、7~9月期と連続で減少した。

中国を震源地とするハイテク景気の悪化は、世界の企業に打撃を与え始めている。村田製作所、TDK、京セラ、日本電産、アルプスアルパイン、日東電工の6社の電子部品の受注額(一部は受注額に近い売上高)を日本経済新聞が独自集計したところ、10~12月期は約1兆5300億円と前年同期比で3%減り、9四半期ぶりのマイナスとなったことが明らかになった。自動車向けは堅調だが、スマホ向けなどの落ち込みが大きく、16年10~12月期から続く成長トレンドが途切れた。

韓国サムスン電子は18年10~12月期決算が2年ぶりの営業減益になると発表。台湾積体電路製造(TSMC)も19年1~3月期は営業減益だとの見通しを示す。日本でも半導体製造装置の東京エレクトロンなどが業績予想を下方修正した。中国でもハイテク企業が打撃を受け、雇用情勢の悪化などを通じて個人消費が鈍り、さらにハイテク製品の需要が落ち込むといった悪循環が生じる可能性もある。

半導体需要はデータエコノミーの拡大などを支えに長期的には拡大が続くとみられる。ただ、米中摩擦などの不確実な要因も絡むため、「今回のダウンサイクルは通常より長引く可能性がある」(SMBC日興証券の花屋武アナリスト)との慎重な見方が出ている。



◎周辺情報ばかり並べても…

上記のくだりにも「中国でハイテク製品の生産が急減している」ことを示すデータは見当たらない。「村田製作所、TDK、京セラ、日本電産、アルプスアルパイン、日東電工の6社の電子部品の受注額」といった周辺情報ばかりだ。

中国でハイテク製品の生産が急減している」と打ち出した以上は「ハイテク製品」の定義を明確にした上で、全体としてどのくらい「生産が急減している」か読者に示すべきだ。それができないのならば「中国ハイテク生産急減」で見出しを取るのは諦めてほしい。

見出しに釣られて記事を読んだ者としては「騙された」との印象を拭えない。


※今回取り上げた記事「中国ハイテク生産急減~部品・装置、対中輸出ブレーキ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190124&ng=DGKKZO40390720U9A120C1MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

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