2019年1月10日木曜日

「人生100年時代」が苦しい日経「70歳雇用の条件(上)」

キリも響きもいいので「人生100年時代」を記事で使いたくなる気持ちは理解できる。ただ、その多くは使い方が強引だ。10日の日本経済新聞朝刊1面に載った「70歳雇用の条件(上)働き方の『再設計』号砲 シニアを『負担』にしない」という記事も例外ではない。
名護屋城跡(佐賀県唐津市)
      ※写真と本文は無関係です

記事では以下のように説明している。

【日経の記事】

厚生労働省によると、17年の日本の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳で、高度成長期の60年よりそれぞれ15.77歳、17.07歳延びた。男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳以上まで生きる「人生100年時代」になった

◎既に「人生100年時代」?

取材班では、日本は既に「人生100年時代」に入ったと認識しているようだ。「男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳以上まで生きる」からと言って「人生100年時代」だと思えるのが不思議だ。「100年」に関しては何のデータもない。

男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳以上まで生きる」程度では「人生90年時代」かどうかも微妙だ。

今回の場合「男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳以上まで生きる時代になった」でいいのではないか。強引に「人生100年時代」にしてしまうと、記事への信頼感が失われてしまう。

ついでに、記事で示した「」にも注文を付けたい。

【日経の記事】

社会に持続可能なシニア雇用を定着させ、働く意欲も高める解はなにか。清家篤・前慶応義塾長は「年功型の賃金カーブの見直しは欠かせない」と指摘する。

定年制がないライフネット生命保険は昨年4月に人事制度を見直し、1年間の技術や意識の成長評価を賃金に反映するようにした。65歳定年のSCSKは、シニアの活躍次第で500万円近くも年収が変わる。

成長を目指して成果を上げれば、年齢を問わずに報いる。体力などに応じ、緩やかな働き方も用意する。シニア雇用の実現に求められているのは、従来型の人事・賃金制度や働き方の「再設計」にほかならない。



◎そもそも「年功型の賃金カーブ」がある?

シニア雇用を定着させ、働く意欲も高める解」として、記事では「年功型の賃金カーブの見直し」を挙げる。しかし、そもそも「シニア雇用」に関して「年功型の賃金カーブ」があるのが普通なのか。

記事では「ホンダは17年、定年を60歳から65歳にした。基本は以前と同じ仕事にし、海外駐在もある。賃金水準は59歳時点の8割と厚くし、対象者の大半が定年延長を選んだ」とも書いている。

60歳」以降の「賃金水準は59歳時点の8割」なので「年功型の賃金カーブ」にはなっていない。「8割」でも「厚く」と言えるのならば、一般的にはもっと落ち込むはずだ。

清家篤・前慶応義塾長」のコメントは「全世代で年功型の賃金カーブを見直さないとシニア雇用を定着させるのは難しい」との趣旨かもしれない。ただ、20代や30代での「年功型の賃金カーブ」がなぜ「シニア雇用」の「定着」と関連するのか説明がない。


※今回取り上げた記事「70歳雇用の条件(上)働き方の『再設計』号砲 シニアを『負担』にしない
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190110&ng=DGKKZO39821670Z00C19A1MM8000


※記事の評価はC(平均的)。

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