2019年1月2日水曜日

「産業革命」の説明に矛盾あり 日経正月企画「新幸福論Tech2050」

日本経済新聞朝刊の正月1面企画「新幸福論 Tech2050」の関連記事として1日の特集面に載せた「第5の革新 飛躍に点火 『頭脳資本主義』が価値を生む」は問題が多かった。まず、記事の説明と図に矛盾が目立つ。

今回の連載に関しては「渡辺康仁、前村聡、西岡貴司、上阪欣史、鈴木輝良、堀田隆文、新井重徳、生川暁、加藤宏志、川上尚志、栗本優、小園雅之、佐藤亜美、佐藤初姫、佐藤浩実、高尾泰朗、舘野真治、深尾幸生、丸山大介、宮住達朗、村越康二、八木悠介、兼松雄一郎、細川倫太郎、強矢さつきが担当します」と出ていた。記事に問題がないか全員でじっくり考えてほしい。
浜離宮恩賜庭園(東京都中央区)※写真と本文は無関係

日経には以下の内容で問い合わせを送った。

【日経への問い合わせ】

1日の日本経済新聞朝刊特集面に載った「新幸福論 Tech2050第5の革新 飛躍に点火 『頭脳資本主義』が価値を生む」という記事についてお尋ねします。質問は以下の4つです。

<質問1> 第1次産業革命について

記事では「18世紀後半には蒸気機関の発明で力強い動力を獲得して第1次産業革命が起き、19世紀には石油と電気などのエネルギーが第2次産業革命をもたらした」と説明しています。しかし、記事に付けた図を見ると「2 第1次~第2次産業革命」は「800年 火薬」から始まっています。こちらを信じれば「第1次産業革命が起き」たのは「18世紀後半」ではなく「800年」頃です。

どちらかの説明が間違っているのではありませんか。いずれも正しいとすれば、どう解釈すればよいのでしょうか。

<質問2> 第3次産業革命について

記事では「20世紀中ごろからのコンピューターの導入で人の限界を超えた演算が可能となり、最新の技術が数年単位で入れ替わる第3次産業革命を迎える」と説明しています。これを信じれば「第3次産業革命」が起きたのは「20世紀」に入ってからです。

しかし図では「3 第3次産業革命」が「1450年 活版印刷」で始まっています。「第1次産業革命」と同じパターンの矛盾です。これも、どちらかの説明が誤りではありませんか。いずれも正しいとすれば、どう解釈すればよいのでしょうか。

<質問3> 「技術革新の速度」について

記事には「文字が生まれて情報が広がるようになると、技術革新の速度は数十年単位となった」との記述があります。文字の歴史は5000年以上あるようなので、5000年前には「技術革新の速度は数十年単位」となっていたはずです。本当に「技術革新」が何千年も前から「数十年単位」で起きていたのですか。少なくとも図では「1万年前 農耕牧畜文化」から「800年 火薬」まで「技術革新」が見当たりません。

<質問4> 「装置で限界を超える」について

図には「2030年ごろ 装置を使い人の能力の限界を超える」との説明文があります。「生身の人間では不可能なことも装置を使えば可能になるのが2030年頃」と言いたいのでしょう。

しかし、ずっと前から実現しているのではありませんか。例えばマラソンに関して「人の能力の限界」が約2時間だとしましょう。バイクや車を使えば、多くの人が42キロメートルを1時間もかけずに走れます。これは「装置を使い人の能力の限界を超える」例ではないのですか。

コンピューターで膨大な量の計算をしたり、酸素ボンベを用いて長く海に潜ったりするのも同様です。「2030年ごろ」まではどんな「装置」を使っても「人の能力の限界を超え」られないと考えるべき理由があるでしょうか。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「新幸福論 Tech2050第5の革新 飛躍に点火 『頭脳資本主義』が価値を生む
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190101&ng=DGKKZO39594270R31C18A2M10700


※記事の評価はD(問題あり)。連載全体の評価もDとする。「渡辺康仁」氏を連載の責任者だと推定し、同氏への評価を暫定C(平均的)から暫定Dへ引き下げる。連載に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「空飛ぶクルマ」で「痛勤一変」? 日経「新幸福論 Tech2050」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/tech2050_4.html

説明が成立してない日経1面「新幸福論 Tech2050(4)」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/tech20504.html

「ブロックチェーンで銀行口座」の説明が苦しい日経「新幸福論 Tech2050」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/tech2050_6.html

失敗作と評価するしかない日経正月企画「新幸福論 Tech2050」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/tech2050_8.html


※渡辺氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経1面連載「砂上の安心網」取材班へのメッセージ
https://kagehidehiko.blogspot.com/2017/02/blog-post_22.html

0 件のコメント:

コメントを投稿