2018年12月15日土曜日

読者を欺いて「高コスト投信」へ誘導する北沢千秋QUICK資産運用研究所長

北沢千秋QUICK資産運用研究所長は以前から色々と問題のある記事を書いてきた。その中でも、15日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に載った「投信選びは『消去法』で 5つの条件でふるい分け」という記事は悪質だ。「販売手数料が高い投信は避けよう」と投資家側に立っているような書き方をしながら、結果的には高コストな投信を「長期保有の有力候補」として紹介している。
日本橋高島屋S.C.(東京都中央区)
       ※写真と本文は無関係です

この記事を「投信選び」の参考にする読者もいるはずだ。そう考えると北沢所長の罪は重い。北沢所長には以下の内容で問い合わせを送った。

【日経への問い合わせ】

QUICK資産運用研究所長 北沢千秋様

15日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に載った「投信選びは『消去法』で 5つの条件でふるい分け」という記事についてお尋ねします。記事では「長期運用には向かない投信の条件」の1つとして「販売手数料が高い」ことを挙げ、「購入時に大きなコストがかかるのは、ハンディを負って運用を始めるようなもの。販売手数料(上限)が全投信の平均(約2.8%)を上回る投信は、とりあえず候補から外したい」と解説しています。

しかし記事に付けた「A 長期保有に向く国内大型株を検索する手順(日経電子版、投資信託サーチの『詳細版』を利用」という表を見ると「購入時手数料」の条件が「3.24%以下」となっています。これでは北沢様が「候補から外したい」と説明した「販売手数料(上限)が全投信の平均(約2.8%)を上回る投信」が入ってきます。

投資信託サーチ」では「購入時手数料」に関して「すべて」「3.24%より大」「3.24%以下」「1.62%以下」「0.54%以下」「ノーロード」で検索できます。「販売手数料(上限)が全投信の平均(約2.8%)を上回る投信は、とりあえず候補から外したい」と考えるのならば、検索条件は「1.62%以下」「0.54%以下」「ノーロード」のどれかになるはずです。

3.24%以下」に「チェックを入れる」とした「長期保有に向く国内大型株を検索する手順」の説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

さらに問題が大きいのが「B 検索で残った国内大型株ファンド」という表です。ここでは7つの投信を挙げています。電子版で検索すると「新成長株ファンド」「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」など5つ投信の「購入時手数料」が「3.24%」となっています。つまり「候補から外したい」はずの「販売手数料(上限)が全投信の平均(約2.8%)を上回る投信」がしっかり生き残っており、しかも過半を占めます。

表B」について北沢様は「上位には実績のあるファンドが並んだ。どれも長期保有の有力候補」と言い切っています。「販売手数料(上限)が全投信の平均(約2.8%)を上回る投信は、とりあえず候補から外したい」との説明と矛盾していませんか。

今回の記事には他にも問題があります。これらは上記の矛盾とも関連がありそうです。まず最初は「なぜ信託報酬を無視するのか」です。

販売手数料が高い」投信を避けるべきだとの主張には賛成です。しかし、投信のコストは他にもあります。中でも信託報酬は重要です。電子版の「投資信託サーチ」でも「実質信託報酬」で検索できます。「長期運用」に向く投信を探したいのならば、6つの選択肢の中で最も数値が低い「0.54%以下」を条件とすべきでしょう。

表B」で取り上げた7つの投信はいずれも信託報酬が1.5%を超える高コスト投信で、個人的には論外だと思えます。信託報酬の高さを気にせず「販売手数料が高い」投信だけを避けることに合理性はあるでしょうか。

次に問題としたいのが「長期保有に向く国内大型株を検索」する時に「ETF」を除外している点です。ETFは信託報酬が低いものが多く、売買手数料なしで購入できる場合もあるので、コストに着目して投信を選ぶ上では有力な選択肢です。

九重"夢"大吊橋(大分県九重町)
       ※写真と本文は無関係です
しかし、北沢様は理由を説明せずに「ETF」を除外して「検索」を進め、結果として「購入時手数料」も信託報酬も高い投信(「マネックス・日本成長株ファンド」はノーロードのようですが…)を「長期保有の有力候補」としています。

ここからは推測です。以前から北沢様は高コストのアクティブ投信に好意的です。そこで、そうした投信が残るように条件を考えたのではありませんか。信託報酬を考慮せず、ETFを除外したのは、そのためでしょう。

投信選び」でコストに触れない訳にもいかないので「販売手数料」だけを条件として、当初は「販売手数料(上限)が全投信の平均(約2.8%)を上回る投信は、とりあえず候補から外したい」と考えたのかもしれません。

しかし、これだと条件が厳し過ぎて、北沢様好みのアクティブ投信がほとんど選外になってしまいます。そこで「検索」では条件を「3.24%以下」に緩めた--。そんなところではありませんか。だとしたら、読者を欺く背信行為です。

「信託報酬のことは忘れていた。ETFを除外したのも特に理由はない」といった話ならば、投資関連の記事の書き手として能力に疑問符が付きます。いずれにせよ問題ありです。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。

◇   ◇   ◇

追記)結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「投信選びは『消去法』で 5つの条件でふるい分け

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181215&ng=DGKKZO38939060U8A211C1PPE000


※記事の評価はE(大いに問題あり)。北沢千秋QUICK資産運用研究所長への評価はD(問題あり)からEへ引き下げる。北沢所長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 北沢千秋編集委員への助言(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_30.html

日経 北沢千秋編集委員への助言(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_11.html

日経 北沢千秋編集委員への助言(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_38.html

説明下手が過ぎる 日経 北沢千秋編集委員の記事(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_62.html

説明下手が過ぎる 日経 北沢千秋編集委員の記事(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_15.html

説明下手が過ぎる 日経 北沢千秋編集委員の記事(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_1.html

日経 北沢千秋編集委員「一目均衡」での奇妙な解説(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_81.html

日経 北沢千秋編集委員「一目均衡」での奇妙な解説(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_17.html

日経 北沢千秋編集委員「一目均衡」での奇妙な解説(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_18.html

生存者バイアス無視の日経「定説覆す?アクティブ投信」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_23.html

参考にするな! 北沢千秋QUICK資産運用研究所長の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_46.html

北沢千秋QUICK資産運用研究所長を疑え(1)積み立て投資
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/03/quick.html

北沢千秋QUICK資産運用研究所長を疑え(2)資産の分散
http://kagehidehiko.blogspot.com/2018/03/quick_10.html

バランス型投信を薦める北沢千秋QUICK資産運用研究所長の罪
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/06/quick.html

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