2018年12月17日月曜日

詰め込み過ぎが惜しい日経ビジネス東昌樹編集長の「傍白」

日経ビジネス12月17日号の「編集長インタビュー~松竹梅の『竹』で生き残る 市江正彦氏[スカイマーク社長]」という記事は興味深く読めたが、最後の「傍白」が引っかかった。一言で言えば詰め込み過ぎだ。
成田空港で待機するジェットスターの機体
          ※写真と本文は無関係です

東昌樹編集長による「傍白」の全文は以下の通り。

【日経ビジネスの記事】

「お願いだから、待ってください!」。隣に座った後輩の携帯からスカイマーク幹部の叫びが漏れてきました。その悲痛な声に「スカイマーク、法的整理」という特ダネを作る手を止めました。破綻を決めた日の昼。次の日ならオーナーだった西久保さんの心身が壊れると思ったと関係者が言うほど追い詰められていました。よく復活を果たせました。

ANAの協力が大きかったのは間違いありません。注目は再上場後の両社の関係。破綻直後から支援した佐山さんはお嫌でしょうが、ANAもスカイマーク支援がただのボランティアで終わるというわけにはいかないでしょう。どのような関係が可能なのか……。ANA、JALと第三極の並存を許容するぐらい余裕のある業界であってほしいと思います。


◎色々と疑問点が…

疑問点を列挙してみる。

(1)東編集長の立場は?

スカイマーク幹部の叫びが漏れて」来た時の東編集長の立場がよく分からない。「後輩」と一緒に「スカイマーク」の取材をしていたのか。それともデスクだったのか。その辺りの説明は欲しい。


(2)「特ダネ」は結局どうなった?

記事の書き方だと「特ダネ」をボツにしたとも、一時的に「作る手を止め」ただけとも取れる。ここも明確に書いてほしい。


(3)なぜ「待ってください!」?

破綻を決めた日の昼。次の日ならオーナーだった西久保さんの心身が壊れると思ったと関係者が言うほど追い詰められていました」との説明からは「スカイマークの関係者は法的整理の申請を急いでいた」とも取れる。しかし、なぜか「お願いだから、待ってください!」という「スカイマーク幹部の叫びが漏れて」きたらしい。

この「叫び」からは「破綻を決めた日の昼」になっても「法的整理」を避けようと動いていた印象を受ける。この辺りもよく分からない。


(4)「第三極」を望むのなら…

ANA、JALと第三極の並存を許容するぐらい余裕のある業界であってほしいと思います」と最後に書いているので「スカイマークには第三極でいてほしい」と東編集長は望んでいるはずだ。一方で「佐山さんはお嫌でしょうが、ANAもスカイマーク支援がただのボランティアで終わるというわけにはいかないでしょう」とも書いている。

ANAもスカイマーク支援がただのボランティアで終わるというわけにはいかない」と東編集長は思っているのに、それでも「ボランティア」として終わってくれることを望むとの趣旨なのか。ここも解釈に迷った。

色々と分かりにくくなっているのは、短い原稿に多くの要素を詰め込み過ぎているからだ。思い出話をメインにするか、「第三極」を柱に据えるか絞った方がいい。今回はあれもこれもと欲張り過ぎだ。

ついでに言うと、スカイマークに「第三極」の役割を期待するならば「どのような関係が可能なのか……」と悩む必要はない。「現在16.5%を出資するANAHD」にスカイマーク株を売却してもらうよう訴えるべきだ。そこそこの売却益が出れば「スカイマーク支援がただのボランティアで終わる」こともない。

さらに言うと「ANA、JALと第三極の並存を許容するぐらい余裕のある業界」には既になっていると思える。例えばフジドリームエアラインズには鈴与が全額を出資している。資本関係で見れば「ANA、JAL」のどちらの陣営にも属していないはずだ。


※今回取り上げた記事「編集長インタビュー~松竹梅の『竹』で生き残る 市江正彦氏[スカイマーク社長]
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/257971/121100172/?ST=pc


※記事全体の評価はC(平均的)。東昌樹編集長への評価はB(優れている)を据え置く。東編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

コメントの主は誰? 日経ビジネス 東昌樹編集長に注文
http://kagehidehiko.blogspot.com/2017/12/blog-post_16.html

「中間価格帯は捨てる」で日経ビジネス東昌樹編集長に注文
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/08/blog-post_87.html

「怪物ゴーン生んだ」メディアの責任に触れた日経ビジネス東昌樹編集長に期待
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_3.html

0 件のコメント:

コメントを投稿