2018年12月22日土曜日

FACTA「JIC騒動 嶋田・糟谷は切腹せよ」で朝日 大鹿靖明記者が無理筋

FACTA1月号の「『JIC騒動』嶋田・糟谷は切腹せよ」という記事は無理のある内容だった。筆者は朝日新聞の大鹿靖明記者。「嶋田・糟谷は切腹せよ」と強く経産省を批判しているが「嶋田次官が『ちゃぶ台返し』」との説明には矛盾を感じた。
伐株山園地(大分県玖珠町)
      ※写真と本文は無関係です

この件でFACTAに送った問い合わせの内容は以下の通り。

【FACTAへの問い合わせ】

FACTA編集部 担当者様 朝日新聞社 大鹿靖明様

2019年1月号の「『JIC騒動』嶋田・糟谷は切腹せよ」という記事についてお尋ねします。記事では「報酬問題に端を発した経済産業省とその傘下の官製ファンド産業革新投資機構(JIC)との対立劇」に関して「(経産省の)嶋田次官が『ちゃぶ台返し』」と説明していますが、辻褄が合いません。

記事によると「(JIC社長の)田中氏はこの(11月)12日の会談で、嶋田氏の要請を受け入れ、『役員報酬を下げるのは構わない』と了承」しているはずです。しかし、この後に大鹿様は以下のように説明します。

嶋田氏は(11月)24日、それまで糟谷氏との間で進められた報酬の議論をすべてひっくり返し、3150万円という糟谷案の四分の一という金額を提示した。これでは田中氏が怒るのも無理はない。いったいなぜ嶋田氏ともあろうものが、こんなちゃぶ台返しをしたのか

12日の会談」で「役員報酬を下げる」ことに関する合意はできています。「24日」に「嶋田氏」が「3150万円という糟谷案の四分の一という金額を提示した」としても「ちゃぶ台返し」には当たりません。事実関係に関する記事の説明が正しいとの前提で言えば「ちゃぶ台返し」との説明は誤りではありませんか。「ちゃぶ台返し」に問題がないのならば、事実関係の説明が間違っているのではありませんか。いずれにも問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

せっかくの機会なので、記事で他に気になった点を列挙しておきます。

(1)「辛勝」してますか?

経産省が、言うことを聞かない田中正明社長を辞任に追い込もうと『人身攻撃』のようなネガティブキャンペーンを繰り広げてきたのに対し、田中氏はJICの取締役9人の総退陣という『自爆テロ』で経産省を奇襲攻撃。この騒動、その辣腕ぶりから『ケンカ正』と呼ばれてきた田中氏が、追い詰められた土俵際からうっちゃりを仕掛けて辛勝したと言えよう」との記述が引っかかりました。

経産省」にとって「田中正明社長を辞任に追い込」むのが目的ならば、それは実現しています。傷を負いながらも「辞任」を勝ち取った「経産省」の「辛勝」ならば分かりますが、なぜか「田中氏」の「辛勝」で、決まり手は「うっちゃり」です。この例えがハマるとしたら、「田中氏」は最低でも社長職にとどまる必要があります。

JICの取締役9人の総退陣」を「自爆テロ」に例えているのも違う気がします。「テロ」であれば「反社会的な行為」でないと苦しいでしょう。「総退陣」はそういう行為ではありません。「自爆作戦」などならば違和感はありません。


(2)「切腹」は何を指しますか?

上記のくだりに続いて大鹿様は「思わず土がついた嶋田隆事務次官と糟谷(かすたに)敏秀官房長には数々の反則疑惑が浮かび上がっている。サムライなら切腹ものである」と訴えています。「嶋田・糟谷は切腹せよ」と見出しでも打ち出しています。しかし、現代の官僚としての「切腹」が何を指すのか記事を最後まで読んでも分かりません。ここは明確にすべきでしょう。

取りあえず「嶋田・糟谷は退職せよ」との趣旨だと仮定して話を進めます。記事からは「退職」しなければならないほどの「反則疑惑」が「浮かび上がって」きません。特に「嶋田氏」はそう思えます。


(3)「嶋田氏」に「反則疑惑」はないような…

ちゃぶ台返し」が「反則」かどうか微妙ですが、仮に「反則」だとしても「24日」の「嶋田氏」に「ちゃぶ台返し」が成り立たないのは既に見てきた通りです。

記事には「こうした田中氏の『穏当』な言動は経産省の記者会見では捨象され、傲慢で非礼な人物とされた。佐々木課長のこの印象操作は嶋田氏も了承してのことだろう」との記述もあります。「傲慢で非礼な人物」だと記者会見で訴えるのは「反則」だとは思えません。百歩譲って「反則」であり「嶋田氏も了承」していたとしても「退職せよ」と求めるほどの話ではないでしょう。

大鹿様は今回の記事で基本的に「経産省=悪玉」「田中氏=善玉」として描いています。ダメだとは言いませんが、ストーリーに説得力を持たせる事実はしっかり提示すべきです。今回はそれができていないと感じました。

推測ですが、「田中氏」が取材に非常に協力的だったために、同氏の言い分に引っ張られ過ぎたのではありませんか。今回の記事と同様の問題は週刊ダイヤモンドにも感じました。自分の味方をしてくれるように「田中氏」が上手く記者らを誘導している--。そう考えると腑に落ちます。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。FACTAでは読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。読者から購読料を得ているメディアとしては「切腹」に値する行為です。責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇

追記)朝日新聞を通じても問い合わせを送ったが、結局、回答はなかった。

※今回取り上げた記事「『JIC騒動』嶋田・糟谷は切腹せよ
https://facta.co.jp/article/201901042.html


※記事の評価はD(問題あり)。大鹿靖明記者への評価も暫定でDとする。

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