2018年12月30日日曜日

日経1面「米中横目に巨大貿易圏~世界経済の4割弱」の無理筋

話を盛り上げたい気持ちは分かるが、30日の日本経済新聞朝刊1面に載った「米中横目に巨大貿易圏 TPP11・日欧EPA発効へ~世界経済の4割弱 企業、商機見越し着々」という記事は「巨大貿易圏」に無理がある。飛田臨太郎記者と大平祐嗣記者はまず、以下のように説明している。
藩校の門(大分県杵築市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

米国を除く11カ国の環太平洋経済連携協定「TPP11」が30日、発効した。来年2月1日には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効する。貿易戦争を繰り広げる米中を横目に、世界の国内総生産(GDP)の4割弱を占める巨大貿易圏が動き出す。保護主義の連鎖を防ぐ試金石となる。

TPP11は日本を除く10カ国が最終的にほぼ全ての関税をなくす。日本も工業製品の100%、農林水産品の82.3%の関税を最終的に撤廃する。日欧EPAでも日本側が94%の品目で、EU側が99%の品目で、それぞれ関税を撤廃する。



◎足していいなら…

TPP11」と「日欧EPA」を合計して「世界の国内総生産(GDP)の4割弱を占める巨大貿易圏」と表現している。別々の「協定」なのに同一の「貿易圏」と見なしているのが引っかかる。

「日本が両方をつないでいるから合計しても問題ない」と筆者らは言うかもしれない。その場合、「米中を横目に」が苦しくなる。米国は「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定、NAFTAの改訂版)」のメンバーであり、ここでカナダ、メキシコとつながっている。だとしたら「巨大貿易圏」に米国も加わるはずだ。なのに枠外になっている。辻褄が合っていない。

記事に付けたグラフでは「TPP11」と「EU」に色を付けて「世界のGDPの4割弱が自由貿易圏に」と説明している。ここでも米国は「自由貿易圏」の外にいる。記事では「仮に米国がTPP11などの自由貿易圏に入れば、世界のGDPの6割を占める」とも書いている。

自由貿易協定の類に参加していれば「自由貿易圏」に入るとの前提であれば、米国も「自由貿易圏」に入るはずだ。関税などの貿易障壁を完全に撤廃した場合に「自由貿易圏」になると筆者らが考えているのならば、「農林水産品の82.3%の関税を最終的に撤廃する」日本が「自由貿易圏」に入らなくなる。

かなり恣意的に「自由貿易圏」を定義しない限り「日本は入るが米国は圏外」とはならない気がする。

付け加えると「農林水産品」の17.7%で「関税」が残るのであれば、「最終的にほぼ全ての関税をなくす」と言うのは苦しい。「ほぼ全て」ならば「農林水産品」でも撤廃率99%は欲しい。

さらについでに言うと「TPP11」と「EU」を足しても34.9%にしかならない。これを「4割弱」と言われてもとは思う。


※今回取り上げた記事「米中横目に巨大貿易圏 TPP11・日欧EPA発効へ~世界経済の4割弱 企業、商機見越し着々
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181230&ng=DGKKZO39578500Z21C18A2MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。飛田臨太郎記者と大平祐嗣記者への評価はDで確定とする。大平記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

未熟さ感じる日経「ポスト平成の未来学~ ゴミはなくせる」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post_21.html

「海にゴミを捨てるのは合法」と解説する日経 未来学面の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/04/blog-post_13.html

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