2018年3月10日土曜日

北沢千秋QUICK資産運用研究所長を疑え(2)資産の分散

10日の日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面に載った「相場変調、守りの運用探る 為替ヘッジ米国債に分散」という記事について、筆者の北沢千秋QUICK資産運用研究所長の言うことを信じるべきでない理由をさらに述べていく。
小長井駅(長崎県諫早市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

すでに特定の資産を十分に保有している人は、資産を分散するのが王道だ。値動きの傾向が異なる資産を組み合わせると、資産全体では価格変動率を小さくできる。

日本株と相性がいいのは債券だ。00年からのITバブル崩壊や、08年以降のリーマン危機時の日本株と債券の値動きは逆方向(マイナスの相関)で、債券価格の上昇が株価下落のクッションになった。

ところが国内債券は日銀のマイナス金利導入以後、リターンがほとんど期待できない状態。日銀は国債の大量購入により力ずくで金利を低位に張り付けており、何らかのショックでタガが外れたときの価格下落(金利上昇)リスクも怖い。

代替候補は米国債をはじめとする先進国債券で運用し、為替変動リスクをヘッジ(回避)した投信だ。値動きはITバブル崩壊やリーマン危機時にも日本株とはマイナスの相関だった。為替ヘッジ付きだから円高抵抗力もある。

ただ、米長期金利は足元で約3%で、為替ヘッジには内外金利差を反映して約2%のコストがかかる。米長期金利が今後大きく上昇(価格が下落)すれば、利益は吹き飛んでしまう

これに対して竹中氏は「米国の賃金上昇率などはリーマン危機前に比べて低く、米長期金利の上限はせいぜい4%。海外債券は金利のピーク(価格の底)に向けて少しずつ買い、持ち高を増やしていけばよい」とアドバイスする。

図Bは日本株とヘッジ付き外債を併せて保有した場合の07年初からの値動きだ。日経平均は09年2月まで56%下落したが、ヘッジ付き外債を3割組み入れたケースでは下落率が38%にとどまった。


◎個人向け国債で十分では?

これは「金融業界の回し者」の臭いが強く漂う解説だ。「分散」の重要性は否定しない。「日本株と相性がいいのは債券」との解説もいいだろう。だが国内債券は「リターンがほとんど期待できない」から「米国債をはじめとする先進国債券で運用し、為替変動リスクをヘッジ(回避)した投信」で代替すべきとの主張は無視した方がいい。

記事で論じているのは「守りの運用」だ。債券と株式の組み合わせで「守り」に比重を置くならば「債券」の比率を高めれば済む。「為替変動リスクをヘッジ」するぐらいならば、個人向け国債で十分だ。

北沢所長にそう問えば「個人向け国債では利回りがゼロに近い」と反論されそうだ。だが、それは北沢所長が勧める投信も似たようなものだ。「米長期金利は足元で約3%で、為替ヘッジには内外金利差を反映して約2%のコストがかかる」と記事でも書いている。

さらに投信の信託報酬もかかる。北沢所長がお薦めする投信の場合、実質信託報酬が0.22%となっている。しかも「米長期金利が今後大きく上昇(価格が下落)すれば、利益は吹き飛んでしまう」という。だったら、利回りが低くても個人向け国債の方が安心だ。どうしても利回りが欲しいならば、株式などリスク資産を増やして対応するのが筋だ。「守り」を担う債券投資で、余計な信託報酬を支払ってまでリスクを取る必要はない。

付け加えると、バランス型投信を選択肢の1つとして紹介しているところにも北沢所長の業界寄りの姿勢を感じる。

【日経の記事】

想定する運用期間が10年に満たない人などは、資産分散や為替ヘッジをお任せできる低リスクのバランス型投信も選択肢になる。その場合には、個々のファンドの資産配分や為替ヘッジの比率はチェックしておきたい。最後に、資産防衛の手段となりそうな投信の候補を表Cに挙げたので参考にしてほしい。


◎なぜ高コストの投信を薦める?

想定する運用期間が10年に満たない人などは、資産分散や為替ヘッジをお任せできる低リスクのバランス型投信も選択肢になる」と北沢所長は言うが、なぜ「10年」なのか謎だ。記事には説明がない。運用期間5年を想定する人にとって「バランス型投信」が好ましい選択肢ならば、運用期間15年の人にも好ましいような気がするが…。
福島八幡宮(福岡県八女市)※写真と本文は無関係です

さらに問題なのが北沢所長が「参考にしてほしい」として挙げた2つの「バランス型投信」だ。いずれも実質信託報酬は1.2%程度。投資対象は6~7割が債券のようだ。先進国債券では高い利回りが期待できないのに、信託報酬で1.2%も使ってしまうのは無駄だ。「お任せ」のコストとしては高すぎる。

繰り返しになるが「米長期金利は足元で約3%で、為替ヘッジには内外金利差を反映して約2%のコストがかかる」と北沢所長自身が書いている。そこに1%を超える信託報酬を払ったらどうなるのか。

カネを捨てるのが好きだという人以外は、北沢所長が「参考にしてほしい」として挙げた「バランス型投信」に近付くべきではない。

資産分散については「自分の金融資産のどの程度をリスク資産に振り向けるか」を自分で考えるべきだ。「リスク資産7割」と決めたら、残り3割は個人向け国債か預貯金でいい。


※今回取り上げた記事「相場変調、守りの運用探る 為替ヘッジ米国債に分散
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180310&ng=DGKKZO27913280Z00C18A3PPE000


※記事の評価はD(問題あり)。北沢千秋QUICK資産運用研究所長への評価もDを据え置く。今回の記事に関しては、以下の投稿も参照してほしい。

北沢千秋QUICK資産運用研究所長を疑え(1)積み立て投資
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2018/03/quick.html


※北沢所長に関しては以下の投稿も参照してほしい。

日経 北沢千秋編集委員への助言(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_30.html

日経 北沢千秋編集委員への助言(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_11.html

日経 北沢千秋編集委員への助言(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_38.html

説明下手が過ぎる 日経 北沢千秋編集委員の記事(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_62.html

説明下手が過ぎる 日経 北沢千秋編集委員の記事(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_15.html

説明下手が過ぎる 日経 北沢千秋編集委員の記事(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_1.html

日経 北沢千秋編集委員「一目均衡」での奇妙な解説(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_81.html

日経 北沢千秋編集委員「一目均衡」での奇妙な解説(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_17.html

日経 北沢千秋編集委員「一目均衡」での奇妙な解説(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_18.html

生存者バイアス無視の日経「定説覆す?アクティブ投信」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_23.html

参考にするな! 北沢千秋QUICK資産運用研究所長の記事
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_46.html

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