2018年3月14日水曜日

「M字解消で景気底上げ」に根拠がない日経「消費変貌」

日本経済新聞朝刊1面で連載している「消費変貌」は初回から苦しい中身ではあった。14日の「(3)働く女性、支出惜しまず 『M字』解消で景気底上げ」という記事は、苦しさに拍車が掛かっている。今回の連載が辛いのは「消費変貌」というタイトルなのに、それほど大きな変化が感じられないところにある。それは3回目で顕著になっている。その上に「『M字』解消で景気底上げ」にも根拠が見当たらない。
佐世保港(長崎県佐世保市)※写真と本文は無関係です

記事を見ながら説明したい。まず前半部分。

【日経の記事】

松屋銀座店(東京・中央)の7階、週末に20~30代の女性が集まる売り場がある。生活家電メーカー、バルミューダ(東京都武蔵野市)の常設店舗。お目当てはスチーム加熱でトーストがふわっと焼ける「感動のトースター」だ。

 価格はおよそ2万5千円。「少し高いけれど、毎朝の食卓が幸せになりそう」。焼きたてを試食した独身女性(30)は購入を即決した。

8万円以上する炊飯器を指名買いするのも独身女性だ。愛知県の鋳物メーカー、愛知ドビーの「バーミキュラ」は家電量販店で品薄が続く。16日には単身女性から要望が多かった6万円台の3合炊きを追加発売する。初回出荷分の4千台は予約で完売した。

独身女性の消費が元気だ。単身勤労者の可処分所得のうち消費に回した割合を示す「平均消費性向」(14年)をみても男性の65.8%に対し、女性は88.8%。単身勤労者の年収別では100万円から600万円以上の全ての区分で女性の支出が男性を上回る。

なぜ独身男性より消費に意欲的なのか。ニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員は「一家を支えるなど将来に向けた責任感は男性の方が強く、女性は収入が増えればとどめておかずに消費に回すという傾向もある」と指摘する。


◎独身女性の消費はどう「変貌」?

独身女性の消費が元気だ」と言うものの、彼女たちの消費がどう「変貌」したのかは教えてくれない。例えば、「平均消費性向」は独身女性より独身男性の方が高いのが当たり前だったのに、最近になって逆転したのならば「変貌」したと納得できる。

あるいは、10年前には独身女性が高価格のトースターや炊飯器を買うことなど極めて稀だったとか、何か変化を見せてほしい。記事にはそうした情報が見当たらない。

それとも、ここまでは序章で、これから「変貌」を描くのだろうか。続きを見ていこう。

【日経の記事】

結婚後も働く女性が増えたことも消費を底上げしている。働きやすい環境が整い、出産などを理由に長期で休職する女性も減った。30代女性を中心に就業者が減る「M字カーブ現象」は解消しつつある。

総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)は1996年から減少に転じ、2017年に7600万人とこの20年で12%減った。男性の就業者が17年に3672万人と10年前に比べ2%減に対し、女性は2859万人と7.3%増えた。

人手不足を受けパートで働く中高年の女性も増え、15~64歳女性の就業比率は67.4%と過去最高だ。共働き夫婦が増えたことで、世帯主が30代男性の配偶者の月収(17年、2人以上の勤労世帯)は10年前に比べ47%増の6万1127円になった。


◎データはなし?

ここでは「結婚後も働く女性が増えたことも消費を底上げしている」とは書いている。しかし、消費底上げの程度を示すデータはないし、「結婚後も働く女性が増えたこと」が「消費を底上げしている」との因果関係が成立する根拠も示していない。
ハンググライダー発進基地(福岡県久留米市)
            ※写真と本文は無関係です

見出しでは「『M字』解消で景気底上げ」とまで言っている。だったらせめて、「M字カーブ解消」と「消費」に相関関係があるかぐらいは見せてはどうか(相関関係もあまりなさそうな気はするが…)。

そしてここでも「消費変貌」と言えるほどの話は出てこない。

続きに移ろう。

【日経の記事】

300秒マジック――。大丸松坂屋百貨店の化粧品体験販売イベントには1週あたり4千~5千人の女性が来店する。17年3月から主要10店舗で季節ごとに開き、美容部員が5分間でできるアイメークのコツなどを実演する。

ライブ感は今の消費の姿を映すキーワードだ。カープ女子にプロレス女子、本格仕様のキャンプ用品が売れる。独身、既婚を問わず体験づくりに女性はカネを費やす。

首都圏のライブ・エンターテインメントの参加率は男性が29%に対し、女性が46%。ぴあ総研が17年にまとめた調査では、全年代で女性が男性を上回った。

国内ライブ市場は16年に約3千億円と10年前の3倍以上になり、16年は2千億円と縮み続ける音楽ソフト市場に大きく差をつけた。ライブ消費の取り込みをにらみ、ぴあは100億円を投じて音楽ライブ専用施設を横浜市で建設中だ。

働く女性が増えれば家事代行や育児のサービスといった働くための消費も増える。政府も在宅勤務などの柔軟な働き方や女性登用を後押しする。これが最大の景気対策かもしれない



◎結局、大した「変貌」はなし?

記事は上記のくだりで終わりだ。結局「働く女性」あるいは「独身女性」に関する「消費変貌」は描かれないままだ。「国内ライブ市場」が伸びているといった変化は当然あるだろうが、「働く女性」や「独身女性」が突出して引っ張っているようでもない。「独身、既婚を問わず体験づくりに女性はカネを費やす」とも書いている。

結局、最後まで「消費変貌」と言うほどの話は出てこないし、「働く女性が増える→消費が増える」との因果関係にも説得力はない。なのに働く女性を増やすことが「最大の景気対策かもしれない」と結論付けられても困る。

働く女性が増えれば家事代行や育児のサービスといった働くための消費も増える」と言うが、働き始めると従来のように旅行や習い事に割ける時間がなくなるといった影響も出る。そうしたことを総合してもなお、「働く女性が増えれば消費が拡大する」と言えるのかが知りたいところだ。

30代女性を中心に就業者が減る『M字カーブ現象』は解消しつつある」と記事でも書いている。まずは、現在までにM字カーブが解消する過程で面白いように消費が伸びてきたか検証してみてはどうか。「『M字』解消で景気底上げ」と訴えるのは、その後でいい。


※今回取り上げた記事「消費変貌~(3)働く女性、支出惜しまず 『M字』解消で景気底上げ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180314&ng=DGKKZO28059630T10C18A3MM8000


※記事の評価はD(問題あり)。

0 件のコメント:

コメントを投稿