2018年3月7日水曜日

東芝「メモリー売却必要」に説得力がない日経 田中博人記者

7日の日本経済新聞朝刊 投資情報面に載った「東芝、危機前水準を回復へ 今期末の自己資本比率16%に 『メモリー売却不要』の声も」という記事の中で、筆者の田中博人記者は「メモリー売却を取りやめるほど余裕があるわけではない」と解説している。しかし、記事を読む限りでは「メモリー売却を取りやめる」方が合理的だと思える。
北九州市立国際友好記念図書館
        ※写真と本文は無関係です

まず東芝の自己資本に関しては、記事で以下のように説明している。

【日経の記事】

2月14日の公表では、増資やWH関連の債権売却、テレビ事業売却などで今期末の自己資本が4600億円のプラスになるとしていた。今回の純利益の上振れで自己資本は6600億円程度に増える。3月末の自己資本比率は16.1%と2月公表の11.2%から上向き、15年3月末の17.1%に迫る水準に回復する

さらに昨年秋に投資ファンドなどへの譲渡を決めたメモリー事業の売却益(税引き後で1兆800億円)も加えれば、自己資本は早ければ3月末には過去最高の1兆7000億円規模に改善する。すでに格付け会社が格上げに動いたほか、大手銀行も債務者区分の引き上げを検討している。

◇   ◇   ◇

3月末の自己資本比率は16.1%と2月公表の11.2%から上向き、15年3月末の17.1%に迫る水準に回復する」という。「17.1%」に関してはメモリー事業の売却と絡むが、「11.2%」であっても債務超過は解消している。少なくとも、自己資本を増やすためにメモリー事業を売却する必要はなさそうだ。

では、なぜメモリー事業の売却をやめないのか。田中記者は以下のように説明している。

【日経の記事】

急速な財務改善は思わぬ余波も招いている。「ドル箱のメモリーを売る必要はない」。香港のファンドは東芝にこんな書簡を送った。増資で東芝の新株主になったあるファンドも経営陣に売却取りやめを訴えた。

もっとも、メモリー売却を取りやめるほど余裕があるわけではない。一連の資産売却で自己資本は厚みが増すが、現金は大きく増えない。エネルギー、社会インフラなど本業の資金創出力は乏しく、フリーキャッシュフロー(純現金収支)のプラス転換は簡単でない

東芝が「メモリー売却は3月末までに終えたい」と強調するのもこのためだ。経営が安定するにはなお時間がかかりそうだ。


◎現金が足りない?

東芝は昨年12月に「6000億円の第三者割当増資の払い込みが完了した」と発表している。既にある程度は使ってしまったかもしれないが、それでもかなり「現金」を持っていそうだ。「一連の資産売却」で「現金は大きく増えない」としても、増資で得た現金はあるはずだ。
筑後川橋(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

「それでも足りない」と言える状況にあるのならば、そこを具体的に説明してほしい。3カ月前に6000億円もの増資をしているのに「現金」が足りないとは、普通では考えられない。

エネルギー、社会インフラなど本業の資金創出力は乏しく、フリーキャッシュフロー(純現金収支)のプラス転換は簡単でない」という説明も、メモリー売却が必要な理由にはならない。むしろ売らない理由と考えるべきだ。

メモリー事業は収益性が高いと言われているのだから、「エネルギー、社会インフラなど」を「本業」とするよりも「資金創出力」が高いメモリー事業を残す方が得策だ。メモリー事業にもそれなりの投資は必要だろうが「フリーキャッシュフロー(純現金収支)のプラス転換」に寄与してくれる可能性は高い。

東芝の経営内容を熟知している訳ではないので「メモリー事業の売却は中止するのが合理的」と断定はしない。ただ、田中記者の解説では「やはり売らない方がいいのでは…」という疑問が解消しなかった。

次にこの問題を取り上げる時には「メモリー売却を取りやめるほど余裕があるわけではない」と納得できる材料を提示してほしい。


※今回取り上げた記事「東芝、危機前水準を回復へ 今期末の自己資本比率16%に 『メモリー売却不要』の声も
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180307&ng=DGKKZO27699030V00C18A3DTA000


※記事の評価はC(平均的)。田中博人記者への評価は暫定D(問題あり)から暫定Cへ引き上げる。田中記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。


データの裏付け乏しい日経 田中博人記者の「スクランブル」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_9.html

0 件のコメント:

コメントを投稿