2018年3月17日土曜日

解読に苦労した日経 永井央紀記者「中国記者 白眼で侮蔑」

解読に苦労する記事が17日の日本経済新聞朝刊国際面に出ていた。「中国記者『白眼』で侮蔑 全人代会見で 『全米テレビ』の当局寄り質問に」という記事だ。全文は以下の通り。
北九州市の関門海峡ミュージアム(海峡ドラマシップ)
             ※写真と本文は無関係です

日経の記事】

【北京=永井央紀】中国で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、中国経済誌の女性記者が大きな話題となっている。中国政府高官の13日の記者会見で中国当局寄りの質問が出た際、白眼をむいて不快感を示す様子がテレビで生中継されたためだ

 質問したのは「全米テレビ」の記者。習近平(シー・ジンピン)国家主席の旗振りで拡大した国有企業の海外資産をどう守るかを中国語で尋ね、中国を「我が国」と表現した。横にいた経済誌記者が驚いた様子で質問者の記者証をのぞきこみ、侮蔑の表情を浮かべた

「全米テレビ」はホームページによると米国で主に中国語の放送を手掛けるメディアで、過去に共産党系メディアとの協力案件がある。「海外メディアを装い中国に都合の良い質問をさせる宣伝工作機関ではないか」との臆測が広がり、党機関紙の海外ニュースサイトは15日に声明を出して「無関係」を主張するなど火消しに追われている。

◇   ◇   ◇

解釈に迷うのは「中国経済誌の女性記者」がどんな形で「話題となっている」のか分からないからだ。方向としては大きく2つ考えられる。

まずは「中国経済誌の女性記者」への批判だ。「記者会見で」「白眼をむいて不快感を示す」行為は不謹慎で失礼だと言えなくもない。相手の「『全米テレビ』の記者」についても、「国有企業の海外資産をどう守るかを中国語で尋ね、中国を『我が国』と表現した」といった程度ならば、それほど問題があるとも思えない。

一方で「中国経済誌の女性記者」を称賛する方向で「話題となっている」可能性も十分にある。「共産党系メディアとの協力案件がある」ようなメディアが「中国当局寄りの質問」をすることを快く思わない人たちからすれば、「中国経済誌の女性記者」の反応は痛快だっただろう。

日経の記事を何度読んでも疑問は解消しないので、他の報道を調べてみた。すると謎が解けた。14日付のCNNの記事によると「第一財経(YICAI)の梁相宜(リャンシアンイー)記者が、隣で政府当局者に質問する記者の方を向いて視線を上下に走らせ、不愉快そうに顔をそむける様子が映っている。記者の形式的な質問は40秒以上も続き、その一部始終が生中継された」という。

ネット上では中国各地から、梁記者の率直な態度に共感を示すコメントが寄せられた」とも書いているので、CNNの記事ならば迷う余地はない。

日経の記事は17日付で問題の記者会見から3日ほど経過した時点で書いている。CNNを含め他のメディアの報道も参考にできたはずだ。なのに、今回のような分かりにくい記事に仕上げてしまうのでは、記事の作り手としての能力を疑われても仕方がない。

日経は写真の説明にも問題がある。写真には「中国経済誌の女性記者」(左)と、質問をする「記者」(右)が映っている。日経はこの写真に「質問の内容に不快感を示す記者(左)(中国国営中央テレビの映像から)」との説明文を付けている。

マイクを持っている右の女性記者は「『全米テレビ』の記者」のようだ。だとしたら、その点も説明する必要がある。

記事を書いた永井央紀記者にも責任はあるが、国際部デスクや整理部の責任も重い。「自分たちは説明不足で分かりにくい記事を読者に届けている」との自覚をしっかり持って改善に努めてほしい。


※今回取り上げた記事「中国記者『白眼』で侮蔑 全人代会見で 『全米テレビ』の当局寄り質問に
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180317&ng=DGKKZO28230580W8A310C1FF8000


※記事の評価はD(問題あり)。永井央紀記者への評価は暫定でDとする。

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