2018年3月30日金曜日

記事に欠陥あり 日経「スシロー、すし居酒屋100店体制へ」

30日の日本経済新聞朝刊企業2面に載った「スシロー、すし居酒屋100店体制へ」という記事は欠陥ありだ。盛り込むべき必須事項が抜けている。全文を見た上で具体的に指摘したい。
門司港駅(北九州市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

回転ずし「スシロー」を運営するスシローグローバルホールディングスは、すし居酒屋「杉玉」を早期に100店体制に引き上げる。郊外の大型店を中心に展開していた既存の戦略モデルは、他業態やコンビニなどとの立地獲得競争により出店余地が少なくなっている。スシローは次の成長の柱として、杉玉の多店舗展開に乗り出す。

29日に東京・神楽坂で開かれた杉玉の旗艦店発表会で明らかにした。杉玉は日本酒を売りにした大衆すし居酒屋。日本酒15種類のほか、299円均一のすしや天ぷらなどを楽しむことができる。客単価は2700円程度を想定し、住宅街のある駅周辺などに出店する。


◎今は何店舗?

記事の柱は「すし居酒屋『杉玉』を早期に100店体制に引き上げる」ことだ。しかし、現在の店舗数に触れていない。絶対に入れるべき情報を外している。触れずに記事にして気にならないとしたら、記事作りの基礎的な能力が欠けている。記事を書いた企業報道部の記者も、チェック役のデスクも「肝心な情報が抜けている」と感じなかったのだろう。そこが怖い。

100店体制に引き上げる」時期を「早期」としか示せていないのも辛い。記事の柱となる部分なので、頑張って具体的な時期を盛り込みたいところだ。

推測になるが、「杉玉の旗艦店発表会」では「早期に」としか言わなかったのだろう。だが、追加で取材すればある程度は時期が特定できそうだ。そう思って他社の報道を調べてみたら、「流通ニュース」というサイトで「スシロー/神楽坂に新業態・大衆寿司居酒屋『杉玉』、5年後100店目標」という記事を見つけた。

記事の長さも似たようなものなので、こちらも全文を見て日経の記事と比べてみよう。

【流通ニュースの記事】

スシローグローバルホールディングスの子会社で新業態の開発を担うスシロークリエイティブダイニングは3月30日、東京・神楽坂に「鮨・酒・肴 杉玉 神楽坂」をオープンする。

「鮨・酒・肴 杉玉」は、新業態の大衆寿司居酒屋で2017年8月30日、兵庫県西宮市に1号店「西宮北口店」を出店し、2018年1月11日に東京・神保町に「神保町店」を出店している。

これまでは、あまり目立たない立地で、スシローの名前をまったく出さずに業態としての競争力を検証していた。1号店、2号店の業績が好調であるため、3号店は人通りが多い立地へ出店し旗艦店と位置付けた。

2018年9月期中に、関東と関西に各1店を出店、来期には10店程度を出店する予定だ。20店までは直営店を展開する計画で、その後はフランチャイズによる出店も検討し、5年後に100店体制を目指す


◎際立つ日経の完成度の低さ

甘木公園の噴水と桜(福岡県朝倉市)
     ※写真と本文は無関係です
流通ニュースの記事は「100店」を柱に据えてはいないが、「5年後に100店体制を目指す」と「100店」に届く時期を具体的に書いている。他のメディアでも「5年後に100店」と書いているので、追加取材すれば教えてもらえる数字なのだろう。

流通ニュースの記事では、現状で何店あるか(2店舗)もきちんと書いている。この件を扱った記事を何本か読んでみたが、日経より完成度の低い記事は見つけられなかった。日本を代表する経済紙がこれでいいのか。よく考えてほしい。

ついでに2つ注文を付けておきたい。まず「29日に東京・神楽坂で開かれた杉玉の旗艦店発表会で明らかにした」というくだりの「開かれた」は受身にする必要がない。「開いた」で事足りる。受身はなるべく避けて書いた方が好ましい。

また、「天ぷらなどを楽しむことができる」という部分は「天ぷらなどを楽しめる」で十分だ。記事を簡潔に書く技術もしっかり身に付けてほしい。


※今回取り上げた記事「スシロー、すし居酒屋100店体制へ」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180330&ng=DGKKZO28774010Z20C18A3TJ2000


※記事の評価はD(問題あり)。

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