2017年1月9日月曜日

市場への理解が乏しい日経 滝田洋一編集委員「羅針盤」

経済記事の書き手として日本経済新聞の滝田洋一編集委員は問題が多いと判断している。理由は色々とあるのだが、市場への理解度が低いのもその1つだ。9日の朝刊予定面に載った「羅針盤~これが円の変動要因だ」という記事からも、滝田編集委員の問題点が浮かび上がる。
徴古館(佐賀市) ※写真と本文は無関係です

記事の全文は以下の通り。

【日経の記事】

円相場が動くたびに、政府も企業もオロオロする。菅義偉官房長官は昨年末、日本経済新聞のインタビューに「為替を注視する」と語った。

ならば円相場を決めるのはどんな要因だろうか。内閣府がリポート「今週の指標」のなかで、円相場の決定要因を分析してみせた。

結論はこうだ。円相場に対し、日米金利差の拡大は円安方向に影響を及ぼす。一方、投資家のリスク回避姿勢は円高方向に影響を及ぼす。

そんな可能性が示唆される。またボラティリティー(予想変動率)の変化に対し、投資家のリスク回避の強まりはボラティリティーの上昇に影響を及ぼすのである。

為替取引の経験者ならこうした分析に膝を打つはずだ。2016年を例にとると、リスクオフを促した要因は英国の欧州連合(EU)離脱決定と米大統領選のモヤモヤだった。

ところが16年11月の大統領選でトランプ候補が当選し、市場参加者はリスクオンの雰囲気になった。しかも日米金利差の拡大も手伝い、円安に向けた金融市場の環境が整った。かくして昨年末に向けて円安が加速した。

ならば、17年の円相場はどうなるか。米連邦準備理事会(FRB)が追加利上げを模索する一方、日銀は金融緩和解除など思いもよらない。日米金利差は拡大が見込まれるので、これは円安要因

読みにくいのは投資家がリスクオンの姿勢を堅持するかどうか。日本株が上昇する局面が続けば、為替市場の参加者もリスクを許容できる。

反対に、通商面で米中の貿易摩擦が一段と強まるようだと、金融市場はリスクオフになり、円高圧力が募る。トヨタ自動車のメキシコ新工場に対するトランプ氏のツイートでの批判は、日本企業もトランプ氏の強硬発言の例外でないことを思い知らせた。

かくして17年の円相場は、日米金利差(円安要因)と政治リスク(円高要因)の綱引きになる。日米金利差が開くなかで、円の行方を決めるのは政治リスクだろう。


◎「日米金利差は拡大」は「円安要因」?

17年の円相場」について「日米金利差は拡大が見込まれるので、これは円安要因」と単純に書いているのが引っかかった。「日米金利差拡大円安要因」というのは大筋では間違っていない。ただ、「17年の円相場」について言えば「円安要因」になるかどうかは微妙だ。

市場が「17年の米国は0.25%の利上げが3回」と見ているとしよう。この場合、ドル円相場には現時点で3回の利上げが織り込まれている。この材料で相場が動くとすれば、市場コンセンサスに変化が生じる場合だ。

0.25%が3回と見込んでいたのに、1回にとどまれば、日米金利差が拡大するとしても「円高要因」と見るべきだ。「日本は金利据え置きで米国は利上げがありそう。だから日米金利差に関しては円安要因として働く」というのは、市場への理解が足りない素人臭い解説だ。


◎「米大統領選のモヤモヤ」が「リスクオフを促した」?

滝田編集委員の解説を信じるならば、トランプ氏なのかクリントン氏なのか米国の次期大統領がはっきりしないことがリスクオフの要因になっていたが、トランプ氏の勝利が決まったのでリスクオンに転じたと言える。これは一般的な認識とはかなり食い違う。大統領選前は「トランプ氏の勝利=リスクオフ要因」と捉えられていたのに、トランプ氏が勝った後(直後を除く)には予想に反してリスクオンの展開となったはずだ。

英国の欧州連合(EU)離脱決定」が「リスクオフを促した」との説明にも問題がある。これも決定直後こそリスクオフの動きが出たものの、結局はすぐ元に戻った。つまり、英国EU離脱やトランプ氏勝利といった「政治リスク」が現実になってもリスクオフを促す展開にはならなかったと言える。


◎17年は「政治リスク」でリスクオフ?

既に述べたように、2016年はリスクオフ要因になると見られていた政治リスクが顕在化しても、実際はリスクオフにならなかった。なのに滝田編集委員は17年について「通商面で米中の貿易摩擦が一段と強まるようだと、金融市場はリスクオフになり、円高圧力が募る」と解説している。

ここは説明が欲しい。16年は政治リスクが顕在化してもリスクオフにはならなかったのに、17年は違うと滝田編集委員は見ているのだろう。それはそれでいい。だが、なぜそう分析したのかを述べずに「政治リスク(円高要因)」と言われると「では、なぜ16年は政治リスクが現実になっても円高にならなかったのか?」と聞きたくなる。


◎官房長官は「オロオロ」してる?

ついでにもう1つ。「円相場が動くたびに、政府も企業もオロオロする。菅義偉官房長官は昨年末、日本経済新聞のインタビューに『為替を注視する』と語った」と滝田編集委員は冒頭で書いている。この場合、「菅義偉官房長官」は「オロオロ」しているのだろうか。日経のインタビューに応じて「為替を注視する」と語っただけならば、「オロオロ」しているようには見えない。

官房長官の話は何のために持ってきたのか理解に苦しんだ。滝田編集委員らしいと言えばそれまでだが…。


※記事の評価はD(問題あり)。滝田洋一編集委員への評価はE(大いに問題あり)を据え置く。滝田編集委員については以下の投稿も参照してほしい。


日経 滝田洋一編集委員 「核心」に見える問題点(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_4.html

日経 滝田洋一編集委員 「核心」に見える問題点(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_24.html

日経 滝田洋一編集委員 「核心」に見える問題点(3)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/08/blog-post_5.html

引退考えるべき時期? 日経 滝田洋一編集委員 「核心」(1)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_32.html

引退考えるべき時期? 日経 滝田洋一編集委員 「核心」(2)
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_40.html

市場をまともに見てない? 日経 滝田洋一編集委員「羅針盤」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_69.html

日経 滝田洋一編集委員「リーマンの教訓 今こそ」の問題点
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_16.html

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