2017年1月28日土曜日

バランス型は「可変型が優位」? 日経 堀大介記者に問う

日本経済新聞がまた「バランス型投資信託」を前向きに取り上げていた。28日の朝刊マネー&インベストメント面の「解決!お金ゼミ~初心者の投信選び(4)バランス型、株・債券に分散 値動き安定 長期投資向き」という記事だ。ここでは詳しく説明しないが、コスト面でETFなどに劣るバランス型は投資対象として最初から除外していい。これは投資初心者にも当てはまる。なのに「初心者の投信選び」でバランス型を「値動き安定 長期投資向き」と持ち上げるとは…。
阿蘇山(熊本県阿蘇市) ※写真と本文は無関係です

記事を担当したと思われる堀大介記者は、投資に関する知識が不足しているか、業界の回し者かのどちらかだ。

今回の記事ではバランス型を「資産配分固定型」と「資産配分可変型」に分け、「可変型」に誘導するような構成になっていた。楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏には「配分可変型 優位目立つ」という関連コラムの中で「英国の欧州連合(EU)離脱や米トランプ大統領選出など1つの国で起きたことが即座に世界の市場に影響を及ぼすようになり、機動的な対応ができる可変型が優位に立つ例が目立ちます」と語らせている。

しかし、記事に付いているグラフを見ると、どうも怪しい。グラフでは日経平均の「下げ相場(2016年1~3月)」と「上げ相場(2016年10~12月)で「バランス型(資産配分可変型)」「バランス型(資産配分固定型)」「国内株式型」の基準価格の騰落率を比べている。

問題は可変型と固定型の差だ。可変型は「上げ相場4.63%、下げ相場マイナス1.96%」なので差し引き2.67%。一方、固定型は「上げ相場7.11%、下げ相場マイナス3.02%」で差し引き4.09%となる。このデータだけから判断すると、「配分可変型 優位目立つ」の逆で「固定型」が優位に見える。

「可変型の一部のファンドが成績を押し下げており、それらを除くと可変型が優位」といった反論はできるかもしれない。もしそうならば、そこは説明すべきだ。記事に出てくる材料からは固定型が有利に見える。しかも、「(資産内容を見直す手間がかかるので)可変型の信託報酬は固定型に比べ高い場合が多いようです」と記事では説明している。運用成績で優位性が見られずコストも高い「可変型」を「優位目立つ」と紹介するのは罪深い。

ついでに言うと、記事に付けた「バランス型(資産配分可変型)投信の上昇率上位」という表も気になる。この表には「楽天証券経済研究所のデータを基に作成。上昇率上位は同社独自評価を反映」という注記が付いている。これは怖い。「同社独自評価を反映」した「上昇率上位」をどう受け止めればいいのか。

例えば、純資産で一定額以下の投信を除外したりするのは問題ない。注記でその点を明示してくれればいい。だが「同社独自評価を反映」としか説明がない以上、この「上昇率上位」を投資の参考にするのは避けるべきだ。「楽天証券にとって都合のいい投信に絞ったランキング」か何かだと見ておくしかない。

今回は楽天証券経済研究所の篠田尚子氏に全面的に頼って記事を作っているようだが、篠田氏に頼るのが正しいのかも再検討すべきだろう。篠田氏に知識がないとは思わない。だが、楽天証券に有利になるように情報を流すインセンティブは持っているだろう。それが投資初心者の利益につながるかというと、多くの場合は逆だ。


※記事の評価はD(問題あり)。堀大介記者への評価も暫定でDとする。

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