2017年1月26日木曜日

「米中衝突」に無理あり 週刊ダイヤモンド特集「新地政学」

「危険!読むな」とでも言うべきだろうか。週刊ダイヤモンド1月28日号の特集「劇変世界を解く 新地政学」は危なっかしい内容だった。担当は片田江康男記者、鈴木崇久記者、原英次郎編集委員、山口圭介副編集長、大根田康介記者の5人で、顔ぶれも頼りない。この特集には根拠の乏しい決め付けが散見される。まずは、その1つを見ていこう。
夜明ダム(福岡県うきは市・大分県日田市)
             ※写真と本文は無関係です

【ダイヤモンドの記事】

時限爆弾が爆発すれば、米中戦争という最悪のケースに至る。ホワイトハウス入りするピーター・ナヴァロ氏の著書『米中もし戦わば』は、そんな可能性を示唆している。

中略)さらにナヴァロ氏は、歴史を振り返り、米中戦争が起きる確率が「非常に高い」と結論づけたが、現実を見れば、状況はさらに厳しいことが分かる。米国と中国という「非常に暴力的な、核武装した軍事超大国」が、アジア海域でにらみ合っているからだ。

中国は米軍を一掃すべく、下図のように、1990年代以降は「第一列島線」「第二列島線」という対米防衛ラインを設定して海洋進出を図る。特に第一列島線は、米中関係悪化の「引き金」(ナヴァロ氏)がそこかしこにある。

「引き金」とは主に、北朝鮮、尖閣諸島、台湾、南シナ海の問題を指す。切迫しているという点で、時限爆弾と表現してもいいだろう。特に核開発の手を緩めない北朝鮮は、ナヴァロ氏に言わせれば「問題児」だ。仮に金正恩体制が崩壊すれば、米国は核兵器を確保すべく北朝鮮に軍を派遣し、当然中国も同様に軍を出す。そこで衝突が起こるのは「火を見るより明らか」だからだ

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これは「米国視点~米中戦争が起きる確率は『非常に高い』 時限爆弾は四つある」という記事の一部だ。この中の「仮に金正恩体制が崩壊すれば、米国は核兵器を確保すべく北朝鮮に軍を派遣し、当然中国も同様に軍を出す」との説明が引っかかった。筆者は「金正恩体制の崩壊」→「米軍の北朝鮮派遣」という流れを確信しているようだが、同意できない。

軍がクーデターを起こして金正恩とその一族を国外追放する形で「体制が崩壊」する場合を考えてみよう。全権を掌握した軍は「3カ月以内に選挙を実施して民政に移行する」と宣言した上で暫定政府を樹立すると仮定する。

この状況で「米国は核兵器を確保すべく北朝鮮に軍を派遣」するだろうか。可能性はゼロではないが、実行に移せばあからさまな侵略行為だ。国際社会の支持は得られそうもない。北朝鮮軍は激しく抵抗するだろうし、核兵器の使用に踏み切る事態も想定される。常識的に考えれば、米国は軍の派遣などせず、北朝鮮の民主化プロセスを見守る可能性が高い。

金正恩体制の崩壊に乗じて米国が「核兵器を確保すべく北朝鮮に軍を派遣」した場合、米中衝突は十分に起こり得るが、記事の説明はそこに至る前提に無理がある。体制崩壊後の北朝鮮が無政府状態になれば話は別だ。ただ、そうなるとは限らないし、その可能性が極めて高いわけでもないだろう。

ついでに、もう1つ指摘したい。この記事のタイトルは「米中戦争が起きる確率は『非常に高い』 時限爆弾は四つある」だ。この4つの「時限爆弾」とは「北朝鮮、尖閣諸島、台湾、南シナ海の問題を指す」らしい。「切迫しているという点で、時限爆弾と表現してもいいだろう」と記事では書いている。

だが、次のページの記事を見ると、タイトルは「中国視点~尖閣諸島は眼中なし 中国共産党にとって最大の問題は台湾だ」となっている。中国から見て「尖閣諸島は眼中なし」ならば、「米中戦争」を起こす「時限爆弾」に「尖閣諸島」を含める必要はなさそうな気がするが…。


※この特集には他にも気になる点がある。それらについては別の投稿で述べる。

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