2022年9月5日月曜日

ツッコミどころが多い日経ビジネス薬文江記者の「広がれ“イクメン休業”」

日経ビジネス9月6日号に薬文江記者が書いた「広がれ“イクメン休業” 男女格差是正の試金石」という記事は色々とツッコミどころが多かった。具体的に指摘してみたい。

錦帯橋

【日経ビジネスの記事】

厚生労働省によると、男性正社員のうち育休取得を希望したものの制度を利用できなかった割合は4割に達し、利用したのは2割にとどまる。日本企業に広く男性育休への理解を浸透させるのは容易ではない。

大きな壁となっているのが、「男は仕事、女は家庭」と性別で役割を決める社会通念だ。性別役割意識といわれ、日本は特にその傾向が強い。内閣府の「少子化社会に関する国際意識調査報告書」によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考え方に反対するスウェーデン人の割合は95.3%に達したのに対し、日本人は56.9%だった。NPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表は「日本の男性育休制度は(期間や給付金の面で)世界一の水準だが、男女分業意識が根強いことが普及を妨げている」と指摘する。


◎なぜスウェーデンとだけ比較?

性別役割意識といわれ、日本は特にその傾向が強い」と書いているが、なぜか「スウェーデン」としか比較していない。これでは「日本は特にその傾向が強い」かどうか判断できない。

続きを見ていこう。


【日経ビジネスの記事】

内閣府が別の調査で日本人の性別役割意識を年代別に集計したところ、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」との質問に対して「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計が60代男性で63.5%を占めた。20代と30代の男性の比率はそれより下がるが、それでも40%を超える。

この「男は仕事をして家計を支えるべきだ」というのは、「男らしさ」に関する無意識の思い込み(バイアス)といえる。こうしたバイアスを持つ人が多いと、社会で性別役割分担が固定されバイアスに沿った画一的な生き方を強いられる。「男性学」やジェンダー論専門の伊藤公雄・京都産業大学教授は「ジェンダー平等に向け社会や家庭が急速に変化する中、無意識に持つ古い男性像との乖離(かいり)が大きくなり『生きづらさ』を感じる男性は多い」と解説する。


◎なぜ「無意識」?

『男性は仕事をして家計を支えるべきだ』との質問に対して『そう思う』『どちらかといえばそう思う』」と答えた人が多いことを問題視しているのに、なぜこういう考え方を「無意識の思い込み」と見なすのか。「無意識の思い込み」ならば「そう思わない」と答えるのが自然だろう。明確に「そう思う」人がなぜ「無意識」となってしまうのか。

さらに言えば「バイアス」とも言い難い。「男は仕事をして家計を支えるべきだ」というのは事実認識ではないからだ。1つの価値観であり認知が歪んでいる訳でもない。

薬記者の方に「バイアス」があるのではと感じる記述は他にもある。


【日経ビジネスの記事】

男女格差是正の先にあるのは、豊かな社会の実現だ。世界経済フォーラムは、国の豊かさを示す1人当たり国民総所得(GNI)と男女格差の相関関係をリポートで示している。それによると、北欧や英国、ドイツ、米国などGNIが高い国は共通して、男女格差が小さい傾向がある


◎相関ある?

記事に付けたグラフを見ても相関関係は感じない。あるとしてもわずかだろう。さらに言えば、相関関係があるからと言って因果関係があるとは限らない。なのに「男女格差是正の先にあるのは、豊かな社会の実現だ」と言い切ってしまっていいのか。

そして最大の問題が以下の記述だ。


【日経ビジネスの記事】

ジェンダー平等は女性の社会参画と同時に、男性に積極的な家事・育児への関わりを求めている。共働き世帯の育児環境を整えることで、出生率の改善と労働人口の増加が見込める。企業はより質の高い労働力を確保する選択肢が広がり、経済が活性化する好循環が生まれる。

また、社会の変化がもたらす多様な経験や価値観はイノベーションも後押しする。性別に縛られない柔軟な生き方にこそ、30年に及ぶ経済停滞の突破口がある


◎そんな根拠ある?

共働き世帯の育児環境を整えることで、出生率の改善と労働人口の増加が見込める」と薬記者は言うが何か根拠があるのか。日本では「共働き世帯の育児環境」を改善してきたが少子化には歯止めがかかっていない。

育休を取る男性が増えるのは悪くないが「出生率の改善」にはつながりそうもない。

社会の変化がもたらす多様な経験や価値観はイノベーションも後押しする」とも書いていて、これも根拠は示していない。薬記者の願望と見るべきだろう。

性別に縛られない柔軟な生き方にこそ、30年に及ぶ経済停滞の突破口がある」との結論にも同意できない。高度成長期には「性別に縛られない柔軟な生き方」があったのか。「性別に縛られない柔軟な生き方」は良いとしても、そこに「経済停滞の突破口がある」とは思えない。


※今回取り上げた記事「広がれ“イクメン休業” 男女格差是正の試金石」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00117/00220/


※記事の評価はD(問題あり)。薬文江記者への評価も暫定でDとする。

1 件のコメント:

  1. 流石ですね。日経ビジネスのサラリーマンの皆さん、日本語を学び直した方が良いですね。恥ずかしくて、記者とは名乗れないですよね。

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