2022年4月3日日曜日

金融引き締めに転じていないのは「世界で日銀だけ」と断言する小幡績慶大准教授の誤解

世界の中央銀行」は日銀を除いて「金融引き締め」に「舵を切っ」ていると慶応大学の小幡績准教授は信じているようだ。学生にも、そう教えているのだろうか。違うと思えたので以下の内容で問い合わせを送っている。

長洲港

【東洋経済への問い合わせ】

慶應義塾大学大学院准教授 小幡績様  東洋経済オンライン 担当者様

3月31日付で東洋経済オンラインに小幡様が書いた「日銀は庶民が苦しむ円安政策をすぐ変更すべきだ~今や円安は日本経済にとって明らかにマイナス」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは「とにもかくにもインフレを抑えることが先決で、世界の中央銀行は金融引き締めに一気に舵を切ったのである。この流れに完全に乗り遅れているのは、世界で日本銀行だけだ」との記述です。

小幡様の説明を信じれば「世界の中央銀行」は日銀を除いて「金融引き締め」に「舵を切っ」ているはずです。本当にそうでしょうか。ここでは中国とトルコを取り上げます。

中国は今年1月に利下げした後、2月と3月は据え置きです。高インフレが続くトルコは昨年12月に利下げした後も「金融引き締め」に転じていません。「金融引き締め」の「流れ」に中国やトルコの「中央銀行」も「完全に乗り遅れている」のではありませんか。

世界の中央銀行は金融引き締めに一気に舵を切ったのである。この流れに完全に乗り遅れているのは、世界で日本銀行だけだ」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

東洋経済新報社では読者からの間違い指摘を無視してミスを放置する対応が常態化しています。日本を代表する経済メディアとして責任ある行動を心掛けてください。


◇   ◇   ◇


問い合わせの内容は以上。


今回の記事では以下の説明も引っかかった。

【東洋経済オンラインの記事】

通常、金融政策における引き締め、利上げ政策は、景気を冷やすために行う。景気が過熱しているかどうかのバロメーターがインフレ率である。これが上昇してくれば、景気を冷やすため、需要を抑制するために、利上げを行う。

しかし、インフレはバロメーターであるだけでなく、物価が上昇すること、そのものが経済にマイナスであるため、インフレ自体が経済にとって悪なのだ。

消費者、とりわけ、低所得者層は、インフレに耐えられない。生きていけないのである。だから、政治的にも、インフレを抑えることが重要であり、アメリカと欧州でインフレを抑えることは最優先課題なのである。

インフレになる、ということは、モノの値段が上がる、ということである。ということは、一定の所得があっても、インフレが進めば可処分所得は落ちることになる。そして、これは消費者だけでなく、企業にとっても同じことであり、原材料コストの上昇により、収益が悪化することになる。


◎「インフレ自体が経済にとって悪」?

物価が上昇すること、そのものが経済にマイナスであるため、インフレ自体が経済にとって悪なのだ」と小幡氏は言う。消費者物価指数が前年比でプラスならば「インフレ」、マイナスならばデフレとの前提で考えてみよう(簡略化のため0%にはならないとする)。

この場合「経済にとって悪」とならないのはデフレの時だけとなる。あり得ないとは言わないが、ちょっと考えにくい。そもそも物価上昇率がプラス1%とマイナス1%はそんなに違うものなのか。

個人的には、物価は安定していれば多少のプラスでもマイナスでも問題ないと見ている。小幡氏は問題を単純に考えすぎているのではないか。

低所得者層は、インフレに耐えられない。生きていけない」「一定の所得があっても、インフレが進めば可処分所得は落ちる」と小幡氏は言う。「インフレ」が進んでも「所得」は変わらない前提のようだが、そうなるとは限らない。ある程度は連動して上がっていくと見るのが自然だ。

企業にとっても同じこと」だ。「原材料コストの上昇により、収益が悪化する」とは限らない。それ以上に販売価格に転嫁できる可能性もある。物事は総合的に判断すべきだ。小幡氏にそれができているとは思えない。


※今回取り上げた記事「日銀は庶民が苦しむ円安政策をすぐ変更すべきだ~今や円安は日本経済にとって明らかにマイナス

https://toyokeizai.net/articles/-/577543


※記事の評価はE(大いに問題あり)。小幡績氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。

東洋経済オンラインで「MMTは大間違い」と断言した小幡績 慶大准教授の大間違いhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/11/mmt.html

小幡績 慶大准教授の市場理解度に不安を感じる東洋経済オンラインの記事https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/03/blog-post_18.html

「確実に財政破綻は起きる」との主張に無理がある小幡績 慶大准教授の「アフターバブル」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post.html

やはり市場理解度に問題あり 小幡績 慶大准教授「アフターバブル」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/10/blog-post_4.html

週刊ダイヤモンド「激突座談会」での小幡績 慶大准教授のおかしな発言https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_25.html

東洋経済オンラインでのインフレに関する説明に矛盾がある小幡績 慶大准教授https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/06/blog-post_14.html

MMTは「財政支出の中身を気にしない」? 小幡績 慶大准教授が東洋経済オンラインで見せた誤解

https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/12/mmt.html

「インフレ抑制が重要」なのに「物価なんてどうでもいい」と言い切る小幡績 慶大准教授の矛盾

https://kagehidehiko.blogspot.com/2022/02/blog-post_20.html

0 件のコメント:

コメントを投稿