2022年4月2日土曜日

やはり具体論から逃げた日経社説「資源高と円安の影響に十分な目配りを」

やはり逃げの社説で済ませてしまった。

2日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「資源高と円安の影響に十分な目配りを」という社説は残念な内容だった。急速な円安を受けて「日銀は円安誘導策をやめよ」と日経には訴えてほしかった。「自分たちはそう考えない」というのなら、それはそれでいい。「円安は悪くない」「日銀はひるまず円安誘導を」と訴えるのもありだ。しかし、今回の社説はどちらでもない。全文を見た上で、さらに考えたい。

【日経の社説】

三池港灯台
日銀が1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は7四半期ぶりに悪化した。新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う悪影響が広がるなか、ロシアのウクライナ侵攻で資源価格の上昇に拍車がかかり企業心理を冷え込ませた。

足元では円安も資源高を加速させている。景気の着実な回復に向けて、政府・日銀には十分な目配りを求めたい

大企業製造業のDIはプラス14と2021年12月の前回調査から3ポイント悪化した。原材料高が響いた紙・パルプや窯業・土石製品、食料品で景況感の悪化が目立つ。

新型コロナの変異型「オミクロン型」の感染や半導体の不足で生産が滞った自動車、電気機械の景況感も悪化した。

大企業非製造業の業況判断DIもプラス9と1ポイント低下した。年初からの感染第6波に伴う行動制限で対個人サービスや宿泊・飲食サービスで業況が悪化した。

心配なのは3カ月後の見通しを示す先行き判断DIで、大企業製造業・非製造業とも景況感の一段の悪化が見込まれる点だ。東京や大阪など18都道府県に発動された「まん延防止等重点措置」は3月22日に解除されたが、感染は再び上向きつつある。ウクライナ情勢の行方も不透明で、資源価格の一段高を懸念する企業も多い。

販売価格と仕入れ価格の判断DIからは、原材料費の上昇を価格転嫁しきれず採算悪化に見舞われている企業の姿が浮かび上がる。これに追い打ちをかけるのが足元で急速に進んだ円安だ。

企業が想定する22年度の想定為替レートは、1ドル=111円93銭だ。だが米連邦準備理事会(FRB)などがインフレに対応して利上げを急ぐなか日銀は低金利を保つ姿勢で、金利差が広がるとの見方から円相場は6年半ぶりに一時125円台まで下落した。

黒田東彦総裁は、円安は総じて日本経済にプラスと言うが、内需型産業への逆風は強まる。金融政策面での対応は難しいが、企業の資金繰りなどを注視し、必要と判断すれば手を打つべきだ

岸田文雄首相は中小企業や困窮者への支援を含む物価高対策のとりまとめを指示した。的を絞った効果的な支援を求めたい。国の長期債務残高は約1000兆円だ。ばらまきによる財政悪化の懸念で円安が加速しては元も子もない。


◎結局、お任せ?

足元では円安も資源高を加速させている。景気の着実な回復に向けて、政府・日銀には十分な目配りを求めたい」と言うものの「円安」と「資源高」にどう対応すべきなのか具体論は見当たらない。

日銀は低金利を保つ姿勢で、金利差が広がるとの見方から円相場は6年半ぶりに一時125円台まで下落した」とも書いているが、強引に長期金利を押さえ付ける今のやり方が適切なのかの判断も日経は示さない。「金融政策面での対応は難しいが、企業の資金繰りなどを注視し、必要と判断すれば手を打つべきだ」で済ませている。

金融政策面での対応は難しい」から日経として判断を示すことから逃げたのか。「必要と判断すれば手を打つべき」なのは当たり前だ。どういう状況になったら、どういう手を打つべきなのか。それを示せないで何のための経済紙なのか。何のための社説なのか。何のための論説委員なのか。その存在意義を問い直してほしい。

政府・日銀」は「十分な目配り」をして「必要と判断すれば手を打つべき」といったレベルのお願いならば誰でもできる。この程度のお願いが自分たちのできる限界と言うのならば社説は廃止でいい。


※今回取り上げた社説「資源高と円安の影響に十分な目配りを」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220402&ng=DGKKZO59653580S2A400C2EA1000


※社説の評価はE(大いに問題あり)

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