2017年10月4日水曜日

ビットコイン解説に見える日経ヴェリタス小栗太編集長の「限界」

日経ヴェリタスの小栗太編集長が3日の日本経済新聞夕刊マーケット・投資2面に「マネー底流潮流~『仮装』ビットコインの限界」という記事を書いている。 ビットコインは「通貨の仮面をかぶった『仮装』通貨の領域を抜けられない」と小栗編集長は解説するが、なぜ「仮装」に当たるのかは教えてくれない。
豪雨被害を受けた福岡県朝倉市 ※写真と本文は無関係です

最後の段落以外の記事内容を見てみよう。

【日経の記事】

「本物ではない。いつか終わる」(JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者、9月12日)

「投機の道具であり、明らかに通貨ではない」(欧州中央銀行のコンスタンシオ副総裁、9月22日)

相場の乱高下が続く仮想通貨ビットコインに対し、欧米の金融関係者から厳しい批判が相次いでいる。金融の未来を変えるかもしれない新星の登場に既存の金融関係者が脅威を感じた裏返しとの見方もあるが、批判の本質は通貨の仮面をかぶった「仮装」通貨の領域を抜けられないことにあるのではないか

冒頭の2人の批判では17世紀にオランダで起きたチューリップ・バブルが引き合いに出された。欧州に持ち込まれた新種の珍しい花に熱狂した人々が球根の値段を過剰につり上げた出来事だ。

「ビットコイン=新種の珍しい花」という例えは物珍しさが薄れた途端に値段が急落するとの連想を生む。問題はビットコインがチューリップの球根のように物珍しさから人気が沸騰しているだけなのかという点だ。

ビットコインには価値を裏付けるものがある。複数のコンピューターで情報を共有管理するブロックチェーン(分散型台帳)と呼ぶ仕組みだ。利点としては送金コストの引き下げや決済代金の即時入金などが期待できる。

実際、ビットコインは送金手数料が高い新興国への代替送金手段として注目された。だが数日で相場が1000ドル以上も振れる現状では手数料の利点など瞬時に吹き消されてしまう。決済手段としてもビットコインを使えるお店が出始めた段階。適正価格を測る尺度もないまま、投機的な取引ばかりが先行した

問題点はほかにもある。取引通貨の極端な偏りだ。現在は日本円が半分程度を占めるなど、通貨の偏りが激しい。日本人の場合は外国為替証拠金(FX)取引から移るケースも多く、投機色を強める一因になっている。


◎「投機的」だと「仮装」通貨?

ビットコインについて長々と説明しているものの、何を以って「通貨の仮面をかぶった『仮装』通貨」だと言っているのか不明だ。強いて挙げれば「投機的な取引ばかりが先行した」ことだろう。だが、投機の対象になるからと言って「通貨の仮面をかぶった『仮装』通貨」にはならない。
豪雨被害を受けた福岡県東峰村
      ※写真と本文は無関係です

記事でも言及しているFXを見ても分かる通り、ドルもユーロも「投機的な取引」の対象だ。しかし、これらの通貨でどれだけ「投機的な取引」が活発になったとしても、「通貨の仮面をかぶった『仮装』通貨」とは呼ばないだろう。では、小栗編集長はなぜビットコインを「『仮装』通貨」だと判断したのか。あとは「取引通貨の極端な偏り」ぐらいしか材料がないが、これでは根拠になりそうもない。

ついでに言うと「ビットコインには価値を裏付けるものがある。複数のコンピューターで情報を共有管理するブロックチェーン(分散型台帳)と呼ぶ仕組みだ」との説明も引っかかった。「ブロックチェーン(分散型台帳)と呼ぶ仕組み」が「価値を裏付けるもの」とは思えない。

金本位制の下での通貨ならば「通貨は金で価値を裏付けられている」と言える。だが、現状ではドルにも円にもこうした裏付けはない。「皆が信用しているから通貨として使われているだけ」とも言える。一方で仮想通貨のビットコインには「価値を裏付けるものがある」という。それが「ブロックチェーン(分散型台帳)と呼ぶ仕組み」らしい。ビットコインを誰も受け取ってくれなくなった時、「ブロックチェーン(分散型台帳)と呼ぶ仕組み」が生き残っていれば「価値」は残っていると言えるのか。

話を元に戻して、最終段落を見ていこう。ここでは「『仮装』通貨から脱する」方法を紹介している。

【日経の記事】

投機的な取引を回避し、ブロックチェーンを生かすには「仮装」通貨から脱するのも一案だ。例えば三菱UFJフィナンシャル・グループが検討する「MUFGコイン」。平野信行社長は「ビットコインが抱える課題を克服し、使えるものを生み出す」として「1コイン=1円」での固定を想定する。ビットコインも取引通貨の約半分は日本円。日本から新たな仮想通貨が誕生してもおかしくない。



◎結局、「MUFGコイン」の宣伝?

最後の段落を読むと「結局、MUFGコインの宣伝がしたかっただけ?」と感じてしまう。「『1コイン=1円』での固定」ならば、新たな通貨でなくてもいい。仮に「ブロックチェーンを生かす」と「送金手数料」を安くできるとしよう。それはそれで歓迎だが、利用者としては日本円のままで「送金手数料」を下げてもらう方が話が早い。

MUFGコイン」はもっとすごい可能性を秘めていると小栗編集長は考えているのかもしれない。だとしたら、そこを説明してくれないと困る。今回のような書き方だと、小栗編集長が「三菱UFJフィナンシャル・グループ」の回し者に見える。

今回の記事で見えてきたのは「『仮装』ビットコインの限界」ではなく、経済記事の書き手としての小栗編集長の「限界」だと思える。


※今回取り上げた記事「マネー底流潮流~『仮装』ビットコインの限界

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171003&ng=DGKKZO21820360T01C17A0ENK000


※記事の評価はD(問題あり)。日経ヴェリタスの小栗太編集長の評価はE(大いに問題あり)を据え置く。小栗編集長については以下の投稿も参照してほしい。

処方箋を示してる? 日経1面「人口病に克つ」への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_97.html

日経 小栗太氏 E評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_18.html

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