2017年10月17日火曜日

東洋経済 小長洋子記者「異常気象の真因を探る」の問題点

週刊東洋経済10月21日号に小長洋子記者が書いた「ニュース最前線05 集中豪雨や巨大台風 異常気象の真因を探る」という記事の問題点をさらに指摘していく。
耳納連山とヒガンバナ(福岡県久留米市)
    ※写真と本文は無関係です

【東洋経済の記事】

本格シーズンを迎える台風。発生頻度が高まり、大型化している印象があるが、実はそうでもない。「台風に関しては、上陸時の勢力はむしろ昔のほうが強い」と気象庁予報部アジア太平洋気象防災センターの石原洋予報官は言う。

8月4日に日本に上陸した台風5号は、7月21日に太平洋で発生してから秋田県沖で温帯低気圧に変わるまで18.75日と史上3番目の長寿命台風だった。が、最長寿は1986年の14号、2位は72年の7号と、30年以上も前だ。



◎話のつながりが…

台風について「発生頻度が高まり、大型化している印象があるが、実はそうでもない」と書いた後で「上陸時の勢力はむしろ昔のほうが強い」とのコメントを入れている。しかし、このコメントは「発生頻度が高まり、大型化している印象」を否定している訳ではない。台風の「勢力」は大きさと強さで表せるが、「強い」との言い方から判断して「強さは昔の方が上」と言っているのだろう。これは「発生頻度」や「大型化」とは別の話だ。

上陸時の勢力はむしろ昔のほうが強い」とのコメントを受けて、次はこの件を論じるのかなと思っていると「長寿命台風」の話に移ってしまう。「発生頻度」「大型化」「強さ」とはこれも別物だ。やたらと話のつながりが悪い。

さらに見ていこう。

【東洋経済の記事】

次に集中豪雨はどうか。7月5〜6日の九州北部豪雨では、熊本県朝倉市でほぼ12時間のうちに500ミリを超える、観測史上最大の大雨となった。

集中豪雨を引き起こすのは「線状降水帯」だ。

通常、水蒸気を含んだ暖かい気流は上昇して上空の冷たい空気とぶつかり積乱雲を形成、水蒸気が水滴となり雨を降らせる。線状降水帯では、降った雨が地上近くの空気を冷やし、そこに暖かい気流が流入し、連続して積乱雲を作り出す(図上)。積乱雲は山などの斜面で押し上げられて起こると考えられがちだが、「大気の状態によるためどこででも起こりうる。台風を除く集中豪雨の7割程度が線状降水帯の形成によるもので、温暖化の影響とはいえない」(津口裕茂・気象研究所研究官)という。

「長期的に見れば温暖化は確実に起きているといえるが、個々の気象現象にどれだけ影響しているか、はっきりとはわからない」と気象庁地球環境・海洋部異常気象情報センターの新保明彦予報官は説明する。洋上の水蒸気量など観測の難しいものも多く、メカニズムの解明には時間がかかりそうだ。


◎「集中豪雨」は増えてる?

まず、最近になって「集中豪雨」が増えているのかどうかが分からない。「九州北部豪雨」の話だけでは何とも言えない。「温暖化の影響とはいえない」というコメントは「(集中豪雨が増えているのは)温暖化の影響とはいえない」と解釈したくなるが、それでいいのかどうか微妙だ。
須賀神社(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です

とりあえずここでは「(集中豪雨が増えているのは)温暖化の影響とはいえない」という意味だとしよう。そうすると、次の「長期的に見れば温暖化は確実に起きているといえるが、個々の気象現象にどれだけ影響しているか、はっきりとはわからない」というコメントと矛盾する。

集中豪雨に関して「津口裕茂・気象研究所研究官」は「温暖化の影響とはいえない」と言い切っているのに、「気象庁地球環境・海洋部異常気象情報センターの新保明彦予報官」は「個々の気象現象にどれだけ影響しているか、はっきりとはわからない」と述べている。どちらを信じればいいのか。集中豪雨に関してだけは「温暖化の影響とはいえない」とはっきり分かっているのか。

内容の脱線も目に余る。記事の終盤で小長記者は以下のように書いている。

【東洋経済の記事】

それでも近年の気象予測の精度向上はめざましい。

理化学研究所の三好建正チームリーダーを中心としたグループは、ゲリラ豪雨に関する予測システムを開発、7月から実証試験を始めた。3次元の観測技術を活用し、10分後までの降雨を80%以上の確度で予測する(図下)。60キロメートル手前までの雲の中にどれだけの雨粒があるか、雨粒の成長過程まで観測し、予測の確度向上につなげた。

台風進路予測、予報円(中心が70%の確率で進む方向)は、80年代には24時間後で直径200キロメートルだったが、15年には72キロメートルまで精緻化された。中心気圧や最大風速など台風の強度についても気象庁は、15年7月に運用開始となった気象衛星ひまわり8号・9号などにより、18年度末までに5日先(現在は3日先)まで予報できるようにする。

気象庁は線状降水帯予測も強化する。九州北部豪雨では気流の発生が洋上だったこともあり、あれほどの集中豪雨を予測できなかった。現在、観測装置や数値モデルを開発中で「精度の高いものを2年以内に完成させる」(津口研究官)。

今年は河川流域での雨量観測を精緻化した。対象も全国4000河川から2万河川に拡大。土砂災害の防止や洪水対策につなげる。

17年度の気象庁予算のうち、33億円(前期5億円)が台風・集中豪雨などの防災情報強化に計上された。気象災害は春から秋に集中する傾向があるが、豪雪や竜巻など冬季災害もある。気象情報への関心を高めることが備えの一歩になる


◎「異常気象の真因を探る」のは諦めた?

この記事のテーマは「集中豪雨や巨大台風 異常気象の真因を探る」だったはずだ。なのに「(温暖化が)個々の気象現象にどれだけ影響しているか、はっきりとはわからない」というコメントを使い、「メカニズムの解明には時間がかかりそうだ」などと書いているだけで「真因」にはほとんど迫っていない。「真因」に辿り着けなくても構わないが、仮説ぐらいは示してほしかった。しかし、小長記者は「真因」探しを早々に諦めて話を脱線してしまう。
日本経済大学など(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

脱線後は「気象予測の精度向上」の話が延々と続き「気象情報への関心を高めることが備えの一歩になる」と締めてしまう。ここまで脱線させるならば、「真因」探しをきっちりやってからにしてほしい。「真因」探しを「よく分からない」といった程度で済ませるのならば、最後まで「真因」に迫る姿勢を見せるべきだ。


※今回取り上げた記事「ニュース最前線05 集中豪雨や巨大台風 異常気象の真因を探る


※記事の評価はE(大いに問題あり)。「熊本県朝倉市」に関して東洋経済編集部に間違い指摘をしており、回答がなく訂正記事も出ない場合は小長洋子記者への評価をF(根本的な欠陥あり)とする。間違い指摘の詳細については以下の投稿を参照してほしい。


東洋経済は「熊本県朝倉市」の誤りを訂正できるか
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/10/blog-post_16.html

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